……。
[夕陽に反射すると、ガラスの兎はきらきらと輝いていた。
ゆっくりと、ミニスカートの裾を気にしながら、そこに座り込む]
イマリはここで待ってるね。
もう……疲れちゃった。
[手も振らず、×印に向かうベックを見送った]
“爺やも一緒でよければ、連れて行ってくれ”
[落とし穴にはまった状態で、電池があやうい携帯端末でメールを打つ。
>>9>>10 イマリの言っていた、食べ放題とやらへの返事だ]
そういえば、おなかすいたな。
[そう呟いてみたものの、食欲はたぶんないのだろう。
すぐ近く、廃校の校庭から飛び立ったであろうヘリの音が聞こえてくる]
[奢ってくれるかというイマリのメール >>17 には返信しないでおいた。
上空を通りかかるヘリへとCDをチカチカさせ、救助されたのはそれからすぐのこと。
金にものを言わせて、3年B組の机にたくさんの[ノリ]を並べさせたのは、さらにちょっと後のことである]
─それから─
[ヘリコプターの音が聞こえ、黒服の男たちに囲まれてる。
一方的に説明を幾つか受ける。
半分も理解できない。
ただ、その中に、他県への転校と、一生涯の生活の保障が含まれると知る。
(あの制服はもう着ないんだ。
もう、着たくないけど──着とけばよかったな)
白いミニスカナースでこの状況は、現実感が薄い]
はい。
私は、早く休みたい、です。
[このまま移動するが問題ないかという問いに、一瞬間を置いて、頷いた。
促されるままに携帯端末を預け、ゆっくりと目を閉じる。
(もう、かいちょーとは会えないのかな)
(会わない方が、忘れられるのかな)
(忘れていいのかな?)
(忘れられるかな)
先の事は分からない。
けれど、生きていればどうにかなるだろう**]
―― 某県書店 ――
カードで。
[現金は持ち歩かない男、ベック。
レジに渡したのは、表紙に「この秋注目のスイーツビュッフェ」という文字が躍る女性向け情報誌だった]