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……やつあたり。そうか。
し易いと言うのなら、仕方がない事だな。
[トゥーリッキに返す言葉は、やはり淡々と]
……
[ただ、次に及んだ話には、僅かに目を細め、常から険しくも見える眉を、少しだけ顰めるようにした。声を発しはしないまま、テントの前を離れる。紅いオーロラが舞う下を、紅いコートの裾を翻しながら、歩いていき――
いずれ伝える任に赴く。確かめられた惨状を、男の記憶に刻まれたそれの事を**]
[キィキィキィキィ…―――明かりを持たず祭壇へ向かう途中、いきとかえりの足跡が交差する中。不吉な紅いカーテンが映し出すのは、踏む事を避けて通られた人のかたち。
獰猛な、残酷な、容赦のない、獣の晩餐が行われた祭壇から遠くないところで、見開いた眼差しは大地に抱かれた娘のかたちを見つめた。眼鏡の奥で、瞳が、揺れる]
…………っ
[供犠の娘が息絶えたのはここではなく、狼が取り囲み、踏み荒らし、食らい尽くした娘はない。眼鏡をはずさずも滲む視界―――冷え切った頬を伝う雫はやけに熱くて、項垂れるように俯いた]
………一言…、くらい…―――
[ぽつ、ぽつ―――温い雨を降らせど、押し殺した震える呟きの続きはない。キィ…―――車椅子は音を立てるも祭壇へは向かわず、住まう小屋へと引き返す跡だけが*残る*]
…彼女の命で長らえた命…―だな…――
[止まった狼の遠吠えはそういう事なのだろう、と、想う。
唇を一度舐めるのは、彼女の「存在」を思い出す為]
…ところで、知って居たら…ひとつ聞きたいが。
取り巻く「狼」に話しをすると、「操る者」にも聞こえるのだろうか…?
[答えがあっても無くても。
近い位置、カウコを視るを叶わぬ男は顔だけ向けて、問いを置き。
暫くの時の後、その場を後にする――*]
[カウコと分かれた後、自分の場所へと戻ります。毛皮を引いた椅子に座り、
伏せ目をさらに伏せ、遠くに聞こえる声に耳を向け]
……。あぁ…。
「お勤め」ご苦労様です……。
[口元で呟く言葉は風に乗ることもなく]
……。どうすれば、いいのでしょうね。
何をすれば、いいのでしょうね。
………うるせーよ、
…余計な御世話だ。
[自責は何も生まない。
言葉は常と変わらずきついまま。]
――そうだな、あいつが呉れた時間だ。
あいつを無力にしないために……探さなきゃならん。
[狼使いを、とは続けずもわかるだろう。]
―村の中―
[じゃらり、杖を鳴らしながら。
村の中を白く染める雪を踏みしめて歩く。]
……アルマウェルか……
[赤い服をまとう使者の男と途中行き会えば、
男がその目で確認した惨状を告げられるとゆるく瞳を閉じる。]
――ドロテアがくれた時間、有意義に使わねば、のぅ……
[ぽつり、と呟き。
使者の男に視線を向けて、表情を確かめるように注視した。]
あら。ビャルネ様?
[テントの外から聞こえる音。その音を立てる人はこの一年知る限りは一人だけ。先の話ではまともな言葉を返せたかしら、と不安にも想うところ]
ドロテア様の件もあれば浮き足立つことでしょうけれどね。
ご老体もご無理をなさらなければよろしいけれど?
―村の中―
[近くにあったテントからイェンニが顔を出すときに、
アルマウェルは近くに居ただろうか。
それともすでに立ち去っていただろうか。
どちらにしても、声を掛けられればじゃらりと杖を鳴らしながら、イェンニのほうへと向き直る。]
……浮き足だつのは仕方無いがのぅ。
やるべきことをやるだけじゃ……
[ご老体、といわれて僅かに苦笑を浮かべる。
口調は確かにジジ臭いという指摘を受けたことはあるけれど、まだ爺といわれるほどの年ではないと思いながらも、口に出すことはない。]
[少し、驚いた顔。こんな近くに居ると想わなかったのも、あって。アルマウェルにも優しげな表情で会釈を一つ]
冷えますわ。中にお入りになりません?
お恥ずかしいものですが、何か暖かいものでもお出ししましてよ。
ドロテア様はその「やるべきこと」をなされたのですわね。お疲れ様でしたこと。
私、ビャルネ様から是非「私たちの」やるべきこと」をご教示頂きたかったの。
[如何?と小首かしげ]
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