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───ゼンジさん。
[先に、彼に知らせようかとひどく迷った。
10thが守ろうとしたのは2ndか4th。
彼なのかも知れないと、危惧したから。けれど、]
無事済んだようで、良かった。
[もう、それを口にすることはない。]
どういう話だ?
[突然のソラの問いに、デンゴの答え。
その遣り取りへと目を向ける。
その時、クルミの持つ日記が光った。]
──…分かった。
俺はクルミが事実を知ったなら、
話をしてみようと、思っている。
彼女が、俺を”チート日記”の所有者と知っても、
未だ仲間と認めてくれるか否か。
確認してみようかと思っている。
もしもダメなら、その時は───…
[言葉を切る。苦い。]
…──”仲間”を守るつもりだ。
…いや。俺はきっと、博奕打ちだ。
そうでなければきっと、もっと確実に、
望みを手にする道を見つけているんだろう。
だから……、…。
[その先は音にならず]
…ははっ、
[かみさま。その単語に笑ってしまった。
そうか。勝って神になれば、そんなことも可能だろうか。]
───…まだかみさまじゃ、ないもんな。
[別になりたくもない。
そう言ったくせに、埒もないことを思う。
もしもそんな力があったなら、と。]
…、ん。そうか。
後悔は──…したくない、からさ。
[口にした言葉は、
どこか一度クルミから聞いた言葉に少し似ていた。]
デンゴ、君は──…いや。
[ソラはいい。でもきっと子供に見せるものではない。
そう口にしかけて、言葉を飲み込む。
彼も日記所有者だ。見る権利はあるだろう。
だから来るというなら拒むことはしないまま、]
───……、
[階段を登る途中、クルミが見せてきたメモに、僅か目を細める。
画面が他に見えないよう、彼女との距離を少し詰めた。
彼女が画面を消して日記を仕舞うまでの動作を確認して、
少し足取りの重くなった彼女をするりと抜き去る。]
…あとで。
[その一瞬、耳朶にごく小さな声で了承の意を囁き返した。]
……。
[5Fには10thの死体が横たわる。
知らなければ知らないままに終われたはずの相手。
手向ける言葉は持たぬまま、
後悔に似た表情でその死を見下ろして*いた*]
[現場に辿りつく頃、右手首の端末が振動した。
グリタの様子を確認し、それから端末に目を向ける。
そこに表示された文字に目を見開いた。]
”2ndは7thの日記を破壊した”
なに…?
[思わず声が零れる。]
そう…、か。ならいいが。
[ソラの感情の内面までは読みきれない。
ただ敵対したのかと思っていた。
だから彼女の反応は、正直意外だ。
けれど自身の手で決着をつけたかったのかも知れない。
そうも思った。そうだろうと思った。]
…ここか。
[屋上に至り、
ソラの示すところで同じく10thの身体を下ろした。
帽子を被らぬ男に、結局彼は帽子を取り戻し損ねたのだと知る。
叩きつけるかの声は、今も耳の奥に残っている。]
[見上げた頭上の空の色。
ここに来て漸く、外の空を見上げた。
澄んだ空気に明るい場所、けれどここには死体が2つある。
10thとソラの様子から目を離し、
何となく、例の0thはどちらだろうかと辺りを見渡した。
探しに行くほどの気も、ないのだけれど。]
…ん、ああ。
分かった、気をつけろよ。
[ソラに返して、もう一度、今の状況へと意識を戻す。
一度ゼンジの様子へも目を向けて、クルミへと顔を向けた。]
クルミ。ちょっといいか?
[下で。と、軽く誘いを示す。
同意が得られれば、残る面子に目礼を向けてやはり階段を降りた。]
[階段を一階ぶんだけ降りて、フードコートへ向かう。
初めて彼女たちと会った場所だ。
ついさっきのような、随分前のような気もする。
あの時は賑やかに明るかった店内は、今はひっそりと暗い。]
何か飲もうか。
[まだ腹は減っていない。
けれど随分、喉が乾いた気がしていた。
水をコップに2人分手に入れて、真ん中ほどの席に着く。
人が来れば、すぐに目に付くだろう場所]
それで……、
そうだよ。
…───俺が、鬼役だ。
[けれど結局は顔を上げて口にし、
緊張にこわばる顔で、じっとクルミの目を見返した。]
[驚きのないクルミの様子に、これもやはりと思う。
ほんの僅か、苦笑じみて眉が下がった。
けれど笑みにはならず、続く問いに首を横に振る。]
いいや、それは違う。
俺にも完全には分かっていないけれど…違う。
あの人たちは多分…、すれ違った、んだろうと思う。
…クルミはさ。もう、分かっているんだろ?
だから俺に聞いてきたんじゃないのか。
[何を。と言わぬまま、曖昧な問いを向けた。]
ああ、ゼンジさんも鬼役だ。
[あっさりと肯定を返す。
彼女に知れている可能性は、既に知っていた。
クルミがゆるく首を横に振る。それへ首を傾げた。]
大事なこと…?
じゃあ、クルミは何を知りたいんだ?
神様、か…。
[困惑に眉を下げる。以前も聞かれたことだ。
そして未だに分からないことだ。]
それ、クルミはもう決まっているのか?
生き残るためには、それがないといけないと思ってる?
[だから逆に聞いた。問い詰める強さはない。
迷うように、視線がコップの上を彷徨う。]
……思ってるよ。どうして?
[クルミが顔を伏せる。
柔らかそうな髪が額に掛かって、彼女の表情を隠す。
でも声が僅かに震えている。
手はもう握れなかった。テーブルの距離が遠い。]
[テーブルの距離に甘えたのは、怖かったからでも、ある。
神の日記をチート日記と呼んだ彼女。
その反応が、どうしても怖かったから。…けど、]
……、あのさ、
[かたりと椅子を鳴らして立ち上がる。
2歩ほど歩いて傍らに行き、少し迷って彼女の頭に手を置いた。
抵抗がないのなら、少しだけ胸元に抱き寄せるようにして]
それ、…俺の台詞だろ?
鬼役だってバラしたら、クルミも…ソラも、
どこかに行ってしまうんじゃないかと思っていた。
けど俺の気持ちは、前と変わってはいない。
俺はさ…、鬼とか鬼じゃないとか関係なしに、
大切に思える人と生き延びたい。
自分の手の中に拾えるものだけ、拾っていたい。
[それは8thに語ったと同じく]
…っ、────…、
[クルミの言葉に、手が震えた。
彼女が俯いてくれていて良かった。
不意に目頭が熱くなって、言葉が途切れる。
ただ少しだけ、抱き寄せるだけでなく、
彼女の髪に頬を寄せるように顔を伏せた。
背に触れてくれる手の感触を感じながら、そうしていた。]
… ありがとう。
…、決めた。
俺は必ず、クルミとソラを守る。
仲間が何と言ったとしても、絶対に守るよ。
その為に、その他の人を排除することも──…
……俺はもう、躊躇わない。
…ゼンジさん、デンゴ。
3rd…クルミと話をしたよ。
彼女に俺が鬼役だと話した。
彼女は既に、ゼンジさんが鬼役だとも知っている。
彼女は…彼女とソラは、
俺が鬼役でも仲間だと、守ると言ってくれた。
俺はその想いに応えたい。
……。俺はあなたたちを裏切らない。
今も変わらず、ゼンジさんとデンゴは守るつもりだ。
けれどもし、ふたりがクルミとソラに害を加えるなら。
2人を残せないと言われるなら。
俺は、全力で抗うと思う。
そのために別の誰かを狙うこともすると思う。
───これが、俺の出した結論だ。
…クルミらしいな。
[最初から彼女は、そうだった。
そこに惹かれた。知ってからは更に一層。]
ん…──分かった。
クルミは強いからなあ…頼む。
[ただ物理的なものだけじゃなく、彼女は強い。
腕の中の温もりを離して目が合えば、
泣き笑いのクルミの顔が眩しくて、どきりとした。
急に目のやり場に困って、思わず視線が泳ぎかけるが、]
──…ああ。
頑張って、一緒に生き残ろうぜ。
[笑顔に踏みとどまり、照れたような顔で大切な”仲間”へ、
スポーツの前にするように、打ち合わせる手を差し出した。]
痛そうだから、全力で逃げるよ。
言ったろ?足にはちょっと、自信あるんだ。
[冗談に冗談を返して、同じく笑う。
人を殺すことが良いはずがないと、言ったのは本当。
10thの叩きつけるような声も、今も耳に残っている。
けれど、もう迷わない。迷わないと───決めた。
小気味良くなった手の向こう、クルミの笑顔に、うん。と、頷く。]
ああ。2ndか12thだと思っている。
ただ、どちらにしても俺かクルミの動きは筒抜けになるから──…
ソラにも話しておかないと、いけないな。
彼女の気持ちは嬉しいけど、俺がきちんと話をしないと。
[やるべきことを数え上げる。
移動しようとして、一度、大きな欠伸をしてしまった。]
うん、頼む。
無理に隠したりはしなくてもいいけどな。
クルミが困ったら、困る。
[眠気を誤魔化すのに、水を一気飲みした。
大真面目に返し、案ずる言葉には、うんと頷く。]
そうするよ。ありがとう。
クルミは…、……大丈夫か?
[あまり一人にはしたくないと、
言葉ではなく表情で心配を告げて見遣った。]
えっ、
[ゼンジの返答は、予想をしていなかった。
だから一瞬、意図を測りかねて言葉に詰まる。
諭すようにも響く、その言葉に]
…──立ち戻る?
本当に守りたい、ものに… …?
[ゼンジの言葉には、暫し考え込んでしまった。
ぐるぐると思考が回転する。
何か。何かを見落としているのか。それとも]
…。…守りたいものを増やしすぎている。
… と、…?
[悩んだ末に返したのは、こんな問いかけだった。]
[クルミの笑顔に、自然と笑みが浮かぶ。
コップを片付けて振り返る。
彼女の真似をして軽く伸びをしてみれば、
じんわり眠気が痺れのように駆け巡った。]
じゃ、探しに行こうか。
少し眠れるところ。
[促して休める場所を求め、
クルミとソラを探した要領で日記を使う。
結局は3Fのキャンプテント、
ソラたちの近くに、知らず仮の宿を求めることに*なった*]
[キャンプテントにクルミを誘うのは、実のところ、かなり緊張した。
鬼役と告白したよりも緊張をしたかも知れない。
テントならば入り口を閉めてしまえば、見つかりにくい。
元々が寝場所だから、そこらの売り場から物を失敬すれば、
寝心地も床や椅子よりは悪くないのだ、が。]
…、ここでもいいかな。
[彼女を中に誘う表情は、10thにでも見られれば笑われたか。
それほどに、ぎこちないものになっていた。]
クルミともソラとも、偶然出会っただけだ。
ゼンジさんとデンゴと、偶然日記を持ったのと、まるで同じく。
そして言葉を交わした。
互いに知った。
そして、俺はその手を取りたいと思った。
…何が違う?
[それは、ひどく我がままで欲張りな希望。
鬼は3人、共に残れる人も3人。
仲間たちと、それに大切に思える人と。
6人で残ることを、考えている。
他のことは考えていない。
自分自身が残ることと、勝利条件を満たすこと。
それは今は一体となって、ヨシアキの中にある。
だから問いが分からない。
…崩れる未来など、見ていないのだから。]
だから違うって……。
[振り返ってもう一度言う。少し眉を寄せた。
1Fで会った時とセイジの様子が違う。]
どうしたんだ?
[足を止めた。]
……、なあ。俺が言ったことに、今も変わりはない。
俺はセイジと、もっと話がしたい。
利害ではなくて、違う話がしたいと思っている。
もっと互いに知り合うために。
…知り合いたいと、思っている。けれど、
[言葉を切って彼を見遣る。]
俺は11th…ソラをも守りたい。
だからセイジが彼女を害するなら、俺は邪魔をする。
相手が誰であろうとも、だ。
[はっきりと、そこは宣言をした。]
…。俺はさ。
最初はゼンジさんとデンゴ、
二人を味方と考えられるのかを、正直迷った。
裏切られるかも知れないとも考えていた。
ソラとクルミにしても、それは同じだ。
だから2ndに対してクルミが囮になると言った時、
それもいいと俺は思った。
彼女が危険に晒されてもいいと、あの時俺は確かに考えた。
多分どっちも、まだ本当の仲間と思えてはいなかった。
良く知らない相手を、心から仲間とは思えなかった。
けど…、
生き延びるためというのなら、ゼンジさんとデンゴと組むことと、
ソラとクルミと組むことと、やっぱり同じことだと俺は思う。
生き延びるためだ。
その為に、俺はあなたたちや彼女らと協力している。
けれど──…与えられた中で選択をしているのは、俺の意思だ。
俺自身の意思だ。
……だから…、
…違わない。
[静かに、確かめるように言い切る。]
なあ、デンゴ?
逆に聞くが、お前はどうだ?
俺たちは生き残るためだけの理由で手を組んでいるのか。
俺は、お前と仲間じゃないのか。
俺は日記という理由から、こうして仲間になったけど、
───デンゴ。
俺はお前のこと、好きだよ。
頼りにもしている。
…これじゃ、駄目かな?
[軽く語尾を上げ、小さな仲間へと問いかけた*]
…そうだな。
───…そう、するよ。
[もう一度、視線をちらりと彼の立ち去った上へと向け、
そうして足を4Fのフロアへと向け踏み出した。]
[結局は未だ、迷ってばかりだ。
より多くを、少しでも多くを掴もうとする。
ひどく我侭な傲慢。
一見すれば人のため、でも最終的には自分のため。
日記を頼りに行けば、程なく彼らの場所へは辿りつく。
無事なソラの様子には安堵の息をつき、]
…──フユキ、だっけ。暢気に見物か?
[場から少し離れ、成り行きを見ていたと思しき5thの背へと、
笑みの気配の乗らぬ声を、*投げかけた*]
[2ndと12thを追うソラを、追うことはしない。
彼らと出会って、未来日記は更新された。
今ここでソラの死を見る未来は予知をされていない。
代わりに、自らの意思を反映して更新されたのは、]
…見物。だけじゃつまらないと思うが。
[目前の5th殺害を告げる未来だった。*]
…俺にはやはり、
誰の世界を残すべきかの判断は出来そうにない。
残すべきではなく、残したいかどうかだけだ。
そしてそれは、生かしたいかどうかだけ。
生きた後に、己の世界をどう思うのか。
どうしたいのか。
それは、それぞれの選択だと思うから。
俺は取りたいと思う手を取る。
2ndを守る…?何故、
[咄嗟に疑問が口をつく。
2ndの行動を記す日記に、ゼンジとの接触は多くなかった。
彼の行動に首を傾げる。]
彼女の行動に真実を見つけたのか…?
[良く分からずに聞いてみる。
そして続く言葉に、更に眉を顰めた。]
2ndがクルミを標的にしているとは、まだ見えていない。
…が、狙うならむしろ俺じゃないのか?
2ndはどうやら12thと共に動いている。
12thの日記がどういったものかは知らないが、
どうやら12thは俺が鬼役だと把握している。
ということは、そこまで知れる日記なんだろう。
セイジさんがクルミを狙うなら、
俺はマシロを狙う…が。
マシロが俺を狙うなら、あなたも俺を狙いますか?
あなたから聞いた12thの性格。
そのままなら、彼は鬼役の排除を目指すんだろう。
と、なれば……、
[先は音にならず、首を横に振る。]
…──何を、選びますか。
[クルミの狙いを未だ知らず、
敵意乗らぬ声でセイジへと問いを投げかけた。]
ゼンジさん、デンゴ。
俺はこれから、5thを殺す。
[既にゼンジの日記には、
フユキに襲いかかった事実が記されているであろう。
彼を殺すのは、己の未来に記述された事実。
未だ未来日記は、その記述を変えてはいない。]
…、これはサバイバル・ゲームだ。
ならばそのゲームに、
────…傍観者は要らない。
[短い理由を添えて、未来の選択を*告げた*]
……、…ああ。
[返す言葉もない。
というより、言葉を返しても空しいだけだろう。
重い沈黙に返ったのは、やはり重たい沈黙*だった*]
[一度振るった錐は払われた。
再び振るい、同時に低く蹴りを放って5thを牽制する。
少し遠く、ソラの苦悶の悲鳴が響く。
同時に耳朶に、目前の未来を告げる日記が響いた。]
───クルミ!
[ネギヤの背後に一度だけ声を投げ、
彼を振り返ってポケットからスプレー缶を出す。
”敵”へかける予定だったそれを、スプレーすることはなく、
12thの柔らかそうな腹部目掛けて鋭く*突き出した*]
俺は…諦めない。
[彼はどこか、自分と似ている。
戦いに物慣れない青年であるのだろう。
会話すれば、或いは親しくなれる青年だろう。
けれどそれらを切り捨て、対峙した。
何も出来ないなら───しないなら。
これは彼に向けた言葉ではない。
刃が返るのは、自分自身。]
[ヨシアキの未来日記は、
未だソラの死を記述していなかった。
彼女の姿は、今ここにないから。
見えていないから、記述もされていない。
薄暗い店内、雑多な物のおかげでネギヤらの姿は良く見えない。
だから正面の5thへと視線を据えた。
体当たりで押さえつけようと試みるも叶わず、
突き飛ばされてワゴンにぶつかる。]
────がしゃん!!
[抗議するような物音が、高く響いた。
首筋を強打して、その痛みに顔を歪める。
ぜい。と、息を吐いた。
走ったからだけだけでなく、常よりも息が荒い。]
…そうだな。待つわけがないか。
いや、待たなくてもいいといえばいい。
[ゆらりと立ち上がった。
脇腹に力を込める。まだ倒れるわけにはいかない。]
分かってるんだろ?
もうすぐ、”時間”だ。
[既に店内の明かりは落ちている。
客の姿は見えなくなり、そして神の日記に力は──満ちる。]
5th、あんたが勝てるのは今この時だけだ。
生き延びたいなら、今この場で俺を殺しに来い。
…それとも、遺言を残して逝くか。
[錐を構えたまま、低く問いかける。
そうしておきながら間合いを詰め、彼へ向け錐を一閃した。]
───何故?
[一度錐を振るい、また距離を取るように飛び下がる。
彼が口を開くのに、少し間合いを取るようにした。]
……ああ、俺が鬼だ。
[もう、役。とは名乗らない。]
何故といっても、生きたいのに理由なんてないか。
[聞いておきながら、短く苦笑した。]
…なあ、5th。
俺も生きたいと思っている。
多分、ここにいる奴はみんな思っているだろう。
けれどそれは叶わない。だから──…
残す望みがあるならば、言え。
[傲慢だと知りながら口にした。
今までならば口にしないことを、口にした。
きつく錐を握り締めて、目前の男へと問う。
刺された腹が、そこに心臓のあるが如く痛む。]
…ああ。同感だ。
こんな形で出会いたくなかったな。
けど───…
話していたら、余計に辛くなったんじゃないか。
いや…、分からないな。
[ひゅ!と闇に鑿が振るわれる。
頬を裂かれて、鋭い痛みが走った。
構わずに錐を振るい返す。
どちらも素人の、真剣勝負だ。]
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