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まーいっか。
お祭り行ってくるねー。
[祖父の昔話が一段落したところで外へと駆け出す]
大丈夫、そろそろ村にも慣れてきたし!
[心配する祖父には大声でそう返す]
[あなたはこのまま、こちらに住まう?]
[真白狐からのその問いかけに]
オイラはニンゲンやりたいんだぜ!
上手く送れたけど、これでこっちにいられるようになったのかな?
[送ったその時は、まだ実感はなく]
[今はまだ首をかしげるだけ]
[自らの意思で尻尾を出すことができないのに気付いたのは
かみかくしを起こしたその翌日。]
[その代わり、とでもいうのか。
幼い覡が持っている狐の面は、昨日までなかった強い強い神通力を宿していた。
この悪戯子狐が自ら使うことなどできない程のそれは、大妖様の力を思い起こさせるものがあった。]
[面を持ってしばらく目をぱちくりしていると、どこからか聞きなれた響き。]
[>>*3小さなつぶやきのその響きに]
[>>11少し違って伝わる風の響きに]
見られちまったのかあ。それじゃいろいろが難しくなりそうだなー。
見られていたなら
見られていない時代でニンゲンをいっぱいするんだ。。
ゆくもかえるも、おもうままなら。
オイラはそっちに行こうかな、たくさん遊べるもん。
時代の知識とかは、きっとうまいぐあいに大妖様が合わせてくれるさ。
たくさん送ったからな。
[にひひ、と笑うと神通力を宿す狐の面を被って]
…いっこだけ残念なのは
行ったら、エビコさんの豚汁と焼きおむすびが食えなくなっちまうことかなあ
[面を被ったその表情は、その下に隠れたまま]
そんじゃ、オイラは行くよ。あっちでまた遊ぼうぜ!
[そうしてニンゲンをしたい少年は、神通力と共に神社の鳥居を駆け抜けて―――]
[ひとりの悪戯少年がいつの間にか時代に溶けるようにごく自然に姿を消した]
[それが、1967年8月『15日』以降に起こった出来事]
2015年
[父はこの村で消えて帰って来なかった
時折戻る人が居るとは聞く
帰ってきたのかも知れないが
時が経ちすぎては誰にもわからない
母は幼い俺まできつねぐもに連れ去られるのではないかと怯え村を出た
成長する度に段々父に似てくると
母は寂し気に笑いながら随分前に亡くなった
両親が同じ場所へ行ったか
再び出逢えたかを知りようもなく]
[村に一軒しかないビジネスホテルの一室
早朝のまだ開けない時に携帯電話が鳴った
もぞもぞと枕元に手を伸ばし
表示された番号を見ると作家先生だ
夕べ祭りから戻るとじーさんの奴め
すっかり戸締りをして寝てやがった
狸寝入りかも知れんが蹴破って入る訳にも行かず金魚を池に放し
仕方なく手ぶらで戻るしかなかった
いきなり環境を変えるのは金魚に良くない事は知っているが袋のまま残せば多分死んでしまうだろうからやむなしの措置だ
再び神社に戻り晩飯代わりに屋台のメニューとビールを食いカレーで満腹になった
燻す煙臭さをシャワーで流すと一人ベッドに入る
ふと思い出すのは神社で見た真っ白コートの女性を誰かは知らない]
ネギー、ネギー、ネギたっぷりのカレーライスはいらんかねー。
[どちらがメインかわからぬ売り文句で、境内を練り歩く。
ふと、ぴたりと足を止めて振り返り、数秒後に首をひねった]
どこで聞いたんだったか。
[何の変哲もない鈴の音が、なぜだか懐かしく感じられたのだった]
ネギー、ネギー、カレーたっぷりのネギいらんかねー。
ああ、エビコさん。
まあな、もしや万一に備えて持ってるのさ。
[声をかけてきた女性の手にある皿の中身をチラリと見て]
…………ネギ少な目の豚汁とネギ抜きカレーを後で食べにいくよ。
─ 2015年8月14日 ─
へへっ、どーしよっかな!祭りの日だもん、いろいろ食いたいんだぜ!
[>>29 食い過ぎちゃいかんぞ、とかけられる声には生意気な返事をして駆け抜ける悪戯少年。]
[悪戯少年は祭りの中に溶け込んでいた。数年前からもう、ここにいる]
[辿り着いた時代に溶け込むように存在し、知識や常識を覚えた対価であるのか狐の面からはあの強い神通力はもう感じ取る事はできなかった。
そんな神通力がなくなった狐の面に願掛けをする、ひもクジ屋の屋台前。]
『モンスターウォッチ』と『ポケット妖怪』の最新作!!最新ゲーム機出ろ、出ろーー!
[化け物だのなんだのをバトルさせるゲームがブームになってそれで遊べる時代だ]
『そんじゃ、オイラは行くよ。あっちでまた遊ぼうぜ!』
[思い返すのは、いつか聞いた声]
[真白狐はそれに笑って]
[短く『またねぇ』とだけ返していた]
……あいっ変わらず、元気ねぇ。
[零れるのは呆れたような呟きと。
くす、と楽しげな笑み、ひとつ。
ちりん、と鳴る鈴の音が。
祭りの風に、とけて、消える]
『チャリリン』
[古ぼけた賽銭箱に小銭を数枚投げ込んで、柏手を。]
──何事もございませんように
誰も「呼ばれた」りしませんように──
[呟いた自分の言葉に、おや?と心中首を傾げた。
かつてのこの村の診療所の主に聞いた話の断片が口をついて出た事に、自分自身気付いていなかったのだ。]
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