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[森の中、湖の縁、そして雪原の影。己と意を同じくする狼達は、ただ静かに黙し、生贄の娘を運ぶ列を眺めている。
その瞳は確かに輝いてはいたが、何かの色を映すことはない。今の己の瞳と同じように]
嘆く……
嘆きながら、村の娘にその牙を突き立てるのか。
私は――我々は。在るがままが在るのなら、それで良いと思っている。お前のように、感慨など抱いてはいないさ。
だが、結果が同じならば…過程については、好きなように手を出してしまいたい。その欲求だけは、あるのだ。
[薬を塗りかえる、包帯を取りかえる、
その他諸々。
やるべきことは山ほどある。
薬草を混ぜた餌を与え、当座の仕事は終わった]
さて、狼にも無反応って以外は
異常はなかったみたいだけど……。
治りが早くても、今はあんまり喜ばしくないのかも
しれないねえ。
[やれやれと呟いて。
トナカイたちが心配ないことを確認してから
再び外へと向かう]
…そう、か。
お前は、「飾らない」な――…
[口元に手を当て、思案のかたちを取る。
さくり、雪のうえに立てた杖の音を聞き
首を傾ければ耳のプレートが音を重ねた]
…――こうして誰かと話す機会を持とうと思うのも…
――、妙な事だ…
[常に群れの内々へと入ろうとしなかった男は
ぽつり 呟いてラウリへと顔を向ける]
[しゅんしゅんと薬缶は蒸気を吹き上げる。
書物に湿気は大敵なれど、乾燥しきった部屋は人間にとって毒である。
だから薬缶だけという譲歩をしていた。
暫し静かに茶をすすっている。]
――…?
[ことり、茶の入ったカップをテーブルに戻したときに、小屋の外に人の気配を感じれば、扉へと視線を流した。]
あれは…
[キィキィキィキィ…―――二本の跡を残しながら進む先に、遠く列なす明かりの揺らめきを見る。列が何を意味するものか悟るのに暇はいらず、前髪の奥で眉を顰め口元を引き結んだ]
………どうして…―――
[キィキィキィ…―――誰の何に対してか、掠れた声が車椅子の音に重なる。車輪を操る手が震え、道行の途中で車椅子は止まった]
――ウルスラ先生。戻ってたのか。
[ビャルネの小屋を訪ねる扉前…獣医たるウルスラと
行き会い声をかける。軽く足踏みして待ち歩を揃え]
お疲れさまだ。
晴れるは気でなく赤の空ばかりだが…
ただ、ひとを感じてまわっているよ。
…先生は、トナカイたちを?
[炎を引き連れた列が夜の闇を進んでいく。使者の男は、ついていくか否か迷うような素振りを見せたが、伝達の必要は薄いと見てか、尚場に留まる事にした。
それでも、テントからは出て、その前に佇み]
……、
[白く息を吐きながら、炎が遠ざかっていくのを見た]
[キィキィキィキィ…―――目的地たる長老のテントが見える頃には、列は遠のいていた。表に不吉なカーテンとも似る紅いアルマウェルの姿を見て、言葉はかけず注意を向けられれば目礼だけ置き近くまで寄り、遠ざかる列へと顔を向ける]
…いかないんですか?
…何か、見えるのか…――?
[他に気を取られたらしき言葉に
顔を向けるが男に見えるものは、何もなく]
…何が、見える――?
[歩み去る背へと、低く問うた]
生贄を、運ぶ列が。
あれは、湖の方だな……
[背後からの問いかけに、短く答える。
足を止めることはなく、しかしゆっくりと]
[キィキィという音と共に現れたレイヨに視線を向ける。その瞳は、憂いの色を――あくまで常のように――孕んでいたか。ゆるりと一度首を横に振り]
……行ったとて、出来る事はない。
あの列ならば、伝達する必要もないだろう。
あるとして……終えられた後だ。
[何が、とは言わず。静かな、しかしよく通る声で答え]
[トゥーリッキに声をかけられ、
そちらに視線を送る]
ああ、トナカイも大事な村の民であり、
財産でもあるわけからね。
トナカイたちもそうだが、
私を信頼して預けてくれた人たちも
裏切るわけにもいかないのさ。
そういうトゥーリッキはどうしてたんだい?
例の事件で何か調べているのかい?
…興味も、抗えぬ本能というわけだ。
戸惑っても、厭わずいられればよいな。
[対たる者が得る解は、己にも厭わぬもの。
すこし瞼を下ろして、付近のおおかみの眼を借り
しばらく彼の姿を眺め遣る間を置くと、口にした。]
この地の暮らしにそぐわずとも――
その帽子は、お前に馴染んでいるぞ。
…――ドロテア…
[湖の方。
短い答えにひとつ、小さく礼を言い
彼の歩む方向へと顔を向ける。
焔の灯りを見る事は出来ないが
ただ
ざわめきを
風の動きを 感じようと]
―自宅―
[小屋の外から話し声が聞こえてきて、
ふむ、と僅かに考えてからよいせ、と立ち上がり。]
ちょいと外をみてこようかのぅ。
お主は暫しそこで暖まってるとよいじゃろうて。
[雪まみれだったヘイノに気遣うように声をかけて。
壁にかけていた杖を手に取り。
じゃらり、鳴らしながら扉へと手をかけて小屋の外へと出る。]
…それから、その頬の火傷も、な。
[灼けた樹脂で狙いうちした、些細なそれ。
音無き笑みは揶揄とも悪戯ともつかず燻らせ]
―自宅前―
[トゥーリッキとウルスラの姿を見れば眸を細め。]
かようなところで何立ち話をしておるんじゃ。
……お主らも凍えたいのかのぅ……
[物好きばかりだというように呟いた。]
[部屋は静か。ただ水の蒸発する音だけが聞こえる。
ゆったりと返されるビャネルの声に、
いつもの尖った声纏う"仮面"は自然と降ろされる。]
言われてみると確かに一理あるかも。
認められたい、ねえ。
でもだからと言って誇示欲がないとは…、
どうしてか私は外せないのよねえ。
[そして一口熱い茶を啜ると]
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