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アンちゃんが神隠し?え?行方不明?それ本当?
[自宅で祭りの仕度をしていたら、急に母親に声をかけられた]
『そういえば…』
[今朝届いた手紙。その中に書かれていた、幾人かの名前と、綺麗な赤で線を引かれたアンの名前]
ちょっと出てくる。学校の方で詳しい話聞けるかもしれないし。リウちゃんたちも心配だし。
[母親に声をかけて、下ろしたての下駄に足を通した。鼻緒の色は綺麗な赤]
『と〜どろっきわたる〜お〜たけびは〜』
[居間のテレビから流れてくる曲を背に、からんころんと音を立てて家を飛び出して行った**]
[慣れた手つきで帯をしめる]
まったくもう、なんで着物屋の息子だからって今時和装なんですか。
[文句を言うのは立派な座敷の鏡の前。口元は困ったような柔らかい笑み]
よし、と。
それじゃあ、行って参ります。
[手には人名連ねた手紙を持って]
はい、はい。
また子供扱いを。寄り道ってアンさんのところとお祭りと……全く心配性なんだから。
[まあしょうがないか、と頭をかいて。(06)年前に川でおぼれてそれ以来は]
――けれどこれ、いったい誰が送ってきたんだか。
[つぶやいたのは、神社の脇。
少しだけ唇をとがらせて下駄を蹴上げた*]
はい、一丁上がり。
夏祭りにはこれ位華やかの方が映えますぜ、姉さん。
[紅筆をおき、来客と共に鏡を覗き込む。
蒸し暑い空気に蝉の鳴き声が追い討ちを掛ける。]
――は? 神隠し? このご時世に?
いや、幾ら此処が田舎だからって、
この高度成長期の真っ只中に有り得んでしょう。
さ、支度は出来たんだから出掛けてらっしゃい。
[軽口で流して客の背中を見送る。
白粉の匂いが残る手で郵便受けを開けると、
奇妙な手紙が視界へと飛び込んできた。]
― 村の中 →ンガ宅 ―
『おーにごっこすーるひーと
こーのゆーびとーまれ』
[子供たちが遊んでいる声が聞こてもフンと眉を寄せ睨むだけ]
ガキは暢気で羨ましい
まあ、良い
鬼か 鬼なァ この手紙
「次は誰にしようかな」
[手紙の文句を思い出すと、口元は笑った。そのまま友人宅へと向かう*]
おいンガムラ!居るだろうな?
お前ン所にも手紙届いて無いか?
かあさん、これは何ですか。
[わなわなと震える手には、[ワルサーPPK9ミリ]占いと書かれたのぼり]
あんな知らない方が大勢いるところで占いなんて…、ん、手紙?あたしに?
[封を開けると、数人の名前が書かれた紙切れが一枚]
ねえ、これ何の名簿だと思う?
[母に知らないと首を振られ、肩をすくめるとポケットに手紙を突っ込んだ]
きっと、今年のお祭りの関係かなんかよね。
いいわ。直接村長さんにあたりに聞いてみる。
ねえ、本当にこれやらなきゃ駄目なの。
[段ボールに詰め込まれた、おもちゃの拳銃を前にため息をつくとスカートを整えて]
わたしも浴衣着て楽しみたいわー。
[母に家を追い立てられながら、くつをひっかけると祭りの準備のために会場へ**]
姉さんの次は色男の登場ですか。
アンタさんも化粧して差し上げましょうか?
[冗談を口の端に乗せるも。
件の手紙に関しては、僅かに眉を顰めた。]
という事は、フユキの所にも、ですか*
あら、お祭りですか?行ってらっしゃい。
[家の前の道を、艶やかに装った女が通る。手紙から目を上げ、挨拶をして見送った]
綺麗…ンガムラさんの仕事かしら。
[自分のみすぼらしい服装に視線を落とす。それからまた、手紙へ]
いなくなったアンさんの、名前に…。
[ふるり、首を振る。それから一度家に入ると、戸締まりをして出かけた]
[それが下駄による音だと気づくこともなく振り向いて、木陰に佇む少女に声をかけた]
あれ、アンちゃん熱下がった?
……靴、片方どうしちゃったの?
[次の瞬間、アンの姿がすっと消えてなくなり、遠くに見える和服の少年にやっと気づく]
――っ
[*腰が抜けた*]
あ…いた。オトハさん!
[やがて、大きな箱を抱えた後ろ姿を見つけて、声をかける]
あの…アンさんの神隠しの噂、聞いてますか?
そ、それで、占いで…探せないかと、思って。
私には…占うことは、許されていません、から。
[目をそらし、力なく呟く**]
[アンの家とその近辺は騒然としていた]
アンが行方不明…神隠しにあった?
…あいつの靴の片っぽだけが、発見されたっ て…?
[そこで人垣を作っていた村人たちからの伝聞は、片割れと主を失った靴の話も]
あ、フユキさん。
聞いた?アンが神隠しにあったってよ…
[人垣を離れれば、フユキの姿に]
ひょっとしてこれ。
あいつを隠した神様の、犯行声明文かな。
[自分の元に届いた事も言い添え、広げた手紙を振ってみせた]
何だろうと攫ったんなら許せねぇ。
…アンを、連れ戻してやる。
[僅かに怒気をはらんだ*]
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