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三階廊下
[取り敢えずじゃあなんか取りに行くか、と思い自室に戻っている最中に、何回か自分も見てもらったことがある記憶のある…確か結城先生と、もう一人。
前に居た時は見なかった顔で、きちんと話したことは無かった少女の姿を捉えた。]
おはようございます。あと…初めまして。
[前半は結城先生に、後半は彼女に向けて。]
食堂
[足を引きずり、持ち上げては引きずり、老婆の歩みは遅い。
その場についた時には食べ終えた面々が食堂を離れていく頃合だった。
小さな眼を左右に動かし、窓の向こうで動いた色彩と、似ているものはないかと探す。
その途中知った影があれば皺を深くして微笑みかけることだろう。]
こちら、失礼しますよォ
[老婆の娘と近い年齢――のようにも、老婆には思えたが、彼女は長いこと娘にも孫にもあっていなかった。いくつほどであったかも、遠い記憶の中、笑い声のこだまする家族風景で途切れてしまっているから、彼女の中には何一つ娘の現在を想像できるものは無く。幾度か声を交わしたことのある相手の、蓮向かいに腰を下ろす。]
ああやっと着いた。
一日、一日、なんだか食堂が遠くなっていく気がしますよ
[皺に紛れてしまうように眼を細くさせて、朝の挨拶を向けた**]
おはようございます。…もしかして、中学生ですか?
よかった。近くの部屋、ちっちゃい子ばっかりで。中学生になっても小児科に通ってるのってわたしだけなのかな、って思ってた。
[通りがかった少年に、ぱっと顔をほころばせ。]
[廊下で立ち話をしていた矢先、横切る少年へと意識が映る。
小さな頃から幾度か見たことのある顔だ。軽く手を上げ挨拶を送る。]
おはよう、後藤君。
……ああ、『初めまして』なんだね。
[…と、そこで沢渡の様子を見守る。
嬉しそうな様子に気づいて双方を見つめた。]
立ち話もなんだし、談話室に行こうか。
何か飲むかい、二人とも。
あ、わたし、白湯のみます。
お茶も持ってたりするんですけど、お茶よりお水のほうが、好きです。
[バッグの中には、ちゃんとお気に入りのマグカップも入っている。
談話室ではいつも、給湯器の湯をさまして飲んでいた。紅茶は渋いし、緑茶は苦いし、まして、コーヒーなど。
ココアやジュースのような甘いもの嫌いではないのだが、そこはまあ、思春期の少女のことだ。いろいろと気になる年頃なのである。]
先生がコーヒーなら同じで。ブラックでいいんで。
違うのだったら…お茶、かなぁ。
[といいつつちょっと早歩きで自分の部屋に向かう]
[自販機で適当に見繕おうと思ったのだけれど、少女から告げられた以外な言葉に一瞬目を丸くしてしまったのは、気が抜けていたからだろう。
飲料制限を受けている可能性も有る。尤も、思春期特有の思考でジュース類を避けているとまで読み取れるほど、此方も成熟した医師ではなかったのが残念なところで]
……、なるほどね、了解。
後藤君は――、…ブラック飲めるんだ。オトナだねえ。
[珈琲にするつもりだった己。沢渡の病状は詳しくは無いが、後藤は確か飲み物に制限は無かった記憶があった。
部屋へと去っていく後藤に手を振り]
ん、待ってるよ。
[談話室に到着すると沢渡からカップを受け取り、飲み物を用意し始める]
303号室
[二人と会話してから自分の部屋に戻り、荷物を持つ。
普段から準備してあったので持つのは早いのだった]
…誰かと一緒に、って言うのは初めてだな。
[教えていることはあったけれど、此処まで年の近い人といっしょなのは初めてで。
少し、楽しみには思っていた。]
[沢渡は席に着いた頃か。其々の飲み物を用意する。己と後藤の珈琲は自販機カップのものだ。砂糖もミルクも入っていない。
それを手に、談話室の席へと戻り]
え、……ネガティブフレーバーって、なに…?
[きょとんとした眼を後藤へ向ける]
高い珈琲は、なんだろ……、酸味が強いのが多い?
……くらいしか、知らないや。
[其々の前にお望みのカップを置き終えると、あはは、と笑った。
彼らが勉強を始めるにしろ、雑談を始めるにしろ、己は頬杖の姿勢でそれを*眺めているのだろう*]
ありがとうございます。
[結城医師からカップを受け取って、椅子に掛けた。
いつもの窓辺のテーブル。相変わらずの曇り空だが、昼に近くなり日が高くなった気配はある。海の群青も、わずかばかり彩度を増しているようだ。
千夏乃は布のバッグから教科書とノートを取り出して、テーブルの上に並べ、山ほどのカラーペンと鉛筆が入った大きなペンケースをその上に乗せた。それから、タータンチェックのブランケットを膝にかける。これで準備は完璧だ。]
わたしは、カフェオレやミルクティーなら、飲めるんですけど。
でもいつも、ついミルクを入れすぎちゃう。
[コーヒーの香りは好きだが、味はまだ好きになれないらしい。
いつか、自分もブラックのコーヒーを飲めるようになる日がくるのだろうか。そんなことを思いながら、カラフルなペンで数式やメモが書き込まれた教科書のページを*めくった*。]
[お婆さんが手を振ってくれたので、満足してベッドに戻る。
まさかあのお婆さんがこちらまで来るとは思っていない。]
今日のご飯はなんだろーなー
[隔離された病室なので一人だけご飯は別物なのだ。
食堂に行きたいと思っても行けないし、
外なんてもってのほかだ。
誰かが来る時は恥ずかしいのでニットの帽子を被っている。
これなら今の悲惨な頭を隠せる。
ご飯が来たので、手を合わせて、食べる事にする。]
さてと…日課の一服でもしにいこうかね…
[一二三は愛用の煙草入れをポケットに押し込み、いつもの屋上へと向かう事にした。
本来ならラウンジの喫煙室を使うように言われているのだが、何とも監視されているようで嫌だ…との理由から一二三は利用したことがなかった。屋上でひっそりと、潮風にさらされながらの一服が何よりの御馳走だった]
(丁度屋上からは中庭が見えるしね…。あの歌声が誰のものか、耳を澄ますのも悪くはないさ)
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