情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
「ロッカさんには、そうしてくれる人がいる
それは、とても羨ましい事だよ」
[ユウキさんの言葉に、わたしは少しだけ、悲しくなりました
傷のにいさまも、今ではひろくんも、ぎゅーってしてくれます
でも、一番してほしかった、かみさまはもういないから。]
ユウキさんは、たばこ、吸いますか?
[病院の中へ戻りながら、わたしはそう訊ねました]
[日記帳の一番うしろの頁を切り離し、
そこに短い手紙を書いて
ベッドの上に。
「 郵便屋さんへ。
手紙は、私を探して届けてください。
そう遠くへは行けないから。
お願いね。 」
そして、時間をかけて車椅子に移り。
雪がちらつく窓際を離れ、部屋を出て。
ロビーの陽だまりへ行こうと。*]
煙草?
[病院に戻る途中、問われた言葉に首を傾げる。
何か、意図のある質問なのだろうか?
といって、偽る意味も特にない。
若者は、素直に答える事にした。]
ああ
院内は基本禁煙だし、家にいる時に咥える程度だけれどね
患者さんには、煙草を嫌う人もいるから
本当は秘密なんだ、内緒にしておいてね
ロビーの窓際
[雪は静かに降り続いている。
灰青の雲に覆われた空からの陽射しは
とても弱くて頼りなかった。
それでも私は窓際を選んだ。
誰かのお見舞いに訪れたのだろう
同年代の女性の頬に乗ったチークや、
若い看護師の健康的な足を眺めて。
ぼんやりと。
車椅子の車輪を撫でながら。
少し、俯く。]
じゃあ、これ、よければ
[わたしは、さっき買ったばかりのマルボロを、ユウキさんに差し出しました]
Man always remember love because of romance only.
人は、本当の愛を見つけるために、恋をするそうです。
ユウキさんにも、すてきな人が見つかりますように。
[この文章の頭文字をとって、M-a-r-l-b-o-r-o.
これが、マルボロの名前に込められた意味だそうです
ぜろくんが教えてくれたのでした
優しいユウキさんにも、ぎゅーってしてくれるような人ができますように。
わたしは、この人のこともかかえていきたいと思いました]
ん…―――
[差し出された、さっき買ったばかりの煙草。
二つ買った事に、何か意味があったのではなかったのだろうか。
貰ってしまって、良いのだろうか。
だが、断るのも無粋と言うものだろう。
若者は、素直に受け取る事にした。]
ありがとう、頂くよ
ロッカさんは物知りだ
覚えておく事にするよ
[自分の銘柄とは違うけれど。
それでも、彼女の願いを受け取る事にして。]
ぜろくんが、教えてくれたんです
[ぜろくん、前にたばこを買う手伝いをしてくれた男の子
わたしが言ったのは、ぜろくんの受け売りなのです]
それじゃあ、ユウキさん、また。
[わたしはぺこりと頭をさげました
屋上にいって、煙草を吸おうと思ったからです
マルボロの方が、わたしは味がすきですが、もともと買うつもりだったのはハイライトです
そっちがあるなら、構うことはありません]
そうかい、ぜろくんが
[誰かは知らないが、笑顔で頷いて。
彼女の振る手に、こちらも手を振った。]
ああ、また
何かあったら、ナースに言っておくれ
私を探す時は、そっちの方が早いから
[そう言って、彼女を見送った。
さて、これから何をしようか。
彼女の姿が見えなくなってから、私はまた歩き出す。
珈琲を、何処かで飲みたい。]
[いくらか歩いた後、結局ロビーにやってきた。
理由があるとはいえ早く着てしまった分、次の予定まで大きく時間がある。
ああ、売店でサンドイッチでも買えばよかった。
朝食がまだだった。]
お洒落な気がする普通の朝食を取り損ねた
[小さくぼやくと、珈琲の缶を開けた。
微糖はまだ少し熱かったけれど、外に出て冷えた体を温めるには十分だ。]
[新聞でも読もうか。
いやいや、ロビーで珈琲飲みながら新聞って、医者のとる行動として絵にならないだろう。
心の中でそんな事を想いながら、往来する患者達や医師、看護師達の姿を眺めていた。
変わらない、いつも通りの病院。
薬の匂いがして、落ち着く場所とは程遠く。
笑い声がする場所もあれば、鳴き声の聞こえる場所もある。
命が生まれるかと思えば、命が失われる。
そんな矛盾する場所。]
ある意味面白い場所だな
[そう思うと、ただ往来を眺めているだけでも多少気がまぎれる気がした。]
[弱々しい陽射しを跳ね返す、白。
白衣を纏った若い医師の姿が見えた。
少し離れた位置から
医師へと向ける目は傍観の色。
私が過ごす世界とは違う世界に居る人を
硝子越しに見つめるような。]
[そうして眺めていると、どこからか視線を感じ。
白衣は目立つか、と思って視線の方を見る。
車椅子の女性が、こちらを眺めている様子で。
何かあるのかと思い、自分の姿を確認した。
いや大丈夫、たぶん何もない。
寝癖でもあるのか?
寝起きですぐ出てきたからな。]
何か、変かい?
[自分ではわからなかったので、その女性に話を聞こうと思った。
立ち上がり、少しだけ近寄って。
威圧感を与えないように、笑顔で。]
―屋上―
[ひらひらと舞い落ちる雪はどこまでも白くて綺麗です
わたしはその中で、ハイライトを一本、咥えました
それから、かみさまが使っていた銀のジッポで、そっと火をつけます
すうと吸い込めば、わたしの中にずっしりと重たい煙が入ってきます
この感覚が、今はたまらなく愛おしいと思います]
[咥えたたばこを口からはなして、ふぅと息を吐きます
ゆらゆら、ゆらゆらと空にのぼる煙が、空から訪れる雪と対照的でとても素敵です
こんな雪のなかでたばこを吸うかみさまは、とても素敵だったなぁ
思い出すだけで、しあわせな気分になります
けれど、かみさまがここにいないと思うと、悲しくもなるのです
ポケットにしのばせた石が、ちょっぴり重たくなった気がしました]
…外の匂いがするなって。思って。
[不躾に投げつけていた視線はそのままに
すこしだけ首を横に振って見せる。
病院でよく見かける患者とは違い、
看護師や医者からは外の匂いがする。
この建物の外に、
自分が生きる世界を持っている匂い。
私はそれが少し苦手。
羨ましいから。]
外の匂い?
[彼女は、首を振っている。
とりあえず外見的に可笑しい所は無いらしい事には、安心しておこう。
寝癖姿で患者の前に立つと、不信感を与えてしまうから。
彼女は、車椅子に乗っているから。
外の匂いがすると言うのは、外に出たいと言う事なのだろうか。
それはそうか、この歳で足を患ってしまっては。]
君は、外に出たいかい?
[若者は、少し気になった。
外に出たいだろう、歩きたいだろう、なんていうのは結局他人の感想であって、本人の意思を聞いたわけではない。
医師として、患者の気持ちを聞いてみたいと思ったのだと思う。]
…。
…。
…、
[言葉を失くしてしまった。
外へ行きたい。歩きたい。走りたい。
素敵な靴を履いて未来へ行きたい。
それが叶わないと解っているから
とても惨めな気持ちになってしまう。
医師を見つめる視線を落として。
彼の足を見る。]
…出たいと言ったら、
その足を私にくれる?
ああ、いや、失礼
[落ちた視線と、続いた言葉に。
自分が随分と、無神経だったように感じて。
反射的に、謝ってしまった。]
そうだな、この足はあげられない
私の足が君に適合するとは思えないから
まず、サイズが違う
…―――
ああ、いや、そういう事ではないな
[今必要なのは、医学的な話ではなくて。]
君が出たいと言うなら
その手助けをするのが医師だと思う
歩けるようにしてやるとは、言えないが
経過をみて、外に連れ出すくらいなら出来るさ
…そういう事では無いよ。先生。
少しの散歩の時間を与えて貰えても、
私はその先へは行けないの。
散歩は嬉しいけど。
[少し、世界に触れたら、
きっともっと先へ行きたくなって。
でもそれは
また誰かの手を煩わせる事になって。
そういう事の連続で繋がる散歩道で、
私は笑っていられる自信は無い。]
…いいの。此処は良い所だから。
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了