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時計…どうしよ
[左右を見渡しても、顔見知りの看護師などはいなく、あとで先生に聞いて見よう、とその場を後にした。
一人で出来ることは、とても少ない。
一旦病室に戻った少女は、点滴のパックを取り替えてもらってからもう一度廊下に出た。
今日のパジャマは樹みたいな茶色。柔らかい生地が乾燥した肌と擦れてかさりと音をたてた]
ラウンジ
[こん、と咳をひとつ。ずれた眼鏡を右手で直した。たどり着いたのはラウンジ。扉を開けて、いつもの椅子へ歩み寄る。
からからと点滴装置を引いて、血色の悪い顔色に表情はなく。
ぼたんがいれば、声をかけるつもり。
いなければ…たまには、その椅子に座ってみようか]
朝・314号室
んー…
[なんだろう。何かがおかしい。
調子は悪くない。昨日は久しぶりに父と弟にも会えたし(父は母以上に忙しいひとなのだ)、ゴトウや謎のお婆さん(確かボタンさん、と呼ばれていた)と話したことも、楽しかった。
が、何かが足りない。そんな気がする。]
なんだろ、気のせいかな
[もしかしたら実は調子がよくないのかもしれない。診察の時に、主治医に話してみよう。]
[千夏乃は気づかない。
記憶から、アルバムの写真から、
鏡の中の自分自身から、
「 」
が消えてなくなっていることに。]
[数値では解らぬ病気の進行もある、寧ろ、鎌田はそれの方が多い年頃だろう。
困惑の表情を横目に、文字いっぱいのバレーボールを暫し、見つめる。
これがここに存在するだけで、詳細を得ずとも鎌田の望む未来が解るような気がして、微か双眸を細め眩しそうに鎌田を見つめる。]
バレーボール、だね。
激しい運動だから、……復帰は難しいかもしれない、けれど。
部活で出来た人との繋がり、大切にした方がいい。
大事だと思っているからこそ、こうしてこれを届けてくれたのだろうし、ね。
[復帰を望んでいるであろう彼女に対し、非情な一言だっただろう。
けれど可能性を完全に立たれた時、絶望するのならそれまでだ、とも思った。
他の楽しみを見つけて欲しい、とも感じ、]
絵を描いたり、とか。どうかな。
バレーボール以外の何かが、見つかるかもしれないよ。
[脳裏に描いたのはあの、色鮮やかな抽象画だった。
それだけを告げ、看護師を残して部屋を後にする。
突然の復帰不可能宣言に対し、看護師がきっと、彼女に親身になってフォローしてくれる、だろう。]
ラウンジ
[胸に人形抱えた田中老人は、ラウンジの窓から木々と、その隙間の海を眺めいていた。彼女の定位置ではなく、窓際に佇んで。
近づく音に面を上げそちらを見やった。皺に覆いつくされんばかりの顔面には笑みは――意図的な柔らかさは、添えられておらず、ただ目鼻がくっついたといったような顔つきをしていた。]
――あらァ……奈緒ちゃん……
……よく眠れたのかい
今日ァ、この前逢った時より、顔色が……
[椅子を示しつつ、その顔色の血色の悪さに触れる。言い切ることは、けれど、出来なかった。]
[誰しもが、『何か欠けている』ものが存在する、又は正体が掴めず困惑する中、己はなにひとつ感じていなかった。
死者が最後に願わずとも、笑える、微笑むことの出来ぬ欠けた精神状態だったからかもしれない。
一度センターへ戻り回診の続きへと戻る。途中、5階のあの一角で歩みが停止した。
けれど、今はもう――、爪先は3階へ、一糸の戸惑いなく進んでいく。
対峙したのは303号室の前、予定より少し押してしまったか。太陽が天辺へ昇る頃、その病室を訪れた。]
後藤くん、入るよ。
[昨夜一度、危険な状態にあったと看護師より説明を受けた。脳裏へと置き、その扉を開こうとし]
よく……うーん…まあまあかな
[夜中に吐き気を覚えて目がさめたことは言うつもりはない。入院してから増えた薬の副作用だろうと、見当はついている。
ぼたんのくしゃりと寄った顔は感情が読み取りにくく、けれど下を向いて椅子に座った少女にはそもそも見えていなかった]
おばあちゃん、私ね…明日
………んと、検査があって
おばあちゃんの顔が見たいなあ、って思って
[痛みを隠す表情はなく、俯きがちに顔を背けるのみ]
[椅子に座った少女に向かって、一歩二歩と老婆は近寄る。
隣の椅子に座っても、老婆の視界にはなにも、少女の表情は見えなかった。少しだけ、身を乗り出す。胸に添えた人形は今はもう膝上に横たわり、じっと、見上げていた。セルロイドの表面に描かれた平面的な瞳で。]
おンや……明日なのかい。
[小さな黒目が揺れた。萎びた指を、少女の頭に触れるよう伸ばし、けれど触れる前に落ちる。]
検査、――……
うゥん、こんな婆ちゃんの顔見に来てくれるなんてェ
嬉しい限りだよう。
婆ちゃんの分の元気ォ、奈緒ちゃんにあげっから。
………ありがと
[顔は見せないようにして、ぼたんにそっと抱きついた。老人の匂いがしたけれど、家族との触れ合いは少なくとも、それは病院の匂いを忘れさせる懐かしい匂いだった]
元気に…な った
元気、返すね
[少しだけ力を込めてから腕を離した。点滴の管が椅子にあたり音を立てる。
顔をあげた少女の表情は、少しだけ口元が歪んでいたけれど、泣き顔にはぎりぎりなっていないはずだ**]
あらあらあらあら
今元気返しちゃうなんて
明日の検査終わってからで、いいンだよう。
[柔らかな樹の色が視界に広がった。抱きとめる老人は、言葉とは裏腹に声音を柔らかにして――けれど口端はまっすぐのまま。柔らの感触を惜しむようにしながらも老人は身をはなし、奈緒の顔を見、そして止まった。]
[血の気の薄い彼女の顔は、脳裏にこびりついたあの、眼下に広がる、鮮やかな色を内包しているはずであった。生きるものなら必ず、どれほど肌が白くとも、その下には血潮があると認識していた。
けれど、田中老人には、そうは思えなかった。単なる――単なる、予感だ。それに過ぎない。
老婆は指を震わせながら、奈緒の腕に伸ばした。叶うなら衣服を掴もうとし、出来るなら奈緒の存在がそこにあることを確かめようとし。]
――……奈緒ちゃん――
明日ァ、ただの検査、なんだよねェ
本当、それだけ……だよねェ…………
検査ならすぐ終わるかんね、危ないこともないさね。ね。
[口端が下がっていく。老婆の声音は、急いで流れ落ちていくかのように連続して]
ごめん、ねえ。ごめんねえ。
婆ちゃん、…………あたしァ不安にさせちゃいけねェってのに
でも、ごめんよう。なんだか……なんだか……
―― ………。
……ごめんよォ**
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