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つっても、ドコ行きゃいいんだか……
[10年前此処にいなかった自分に、行く宛はまるでない。頭を掻いて。
イヤホンを引っ張り出し、片方だけ耳に突っ込んだ]
あれ。
[入れた覚えのない女声のバラードが流れ出してきた。眉を顰める。
プレイヤーの方を確認するも、タイトルは表示されない]
え、……てかちょっと待、って……
[更に弄り、100曲以上入っていた筈のデータが何処にも見当たらないことを知る]
うっわ何コレ。タイムスリップの影響ってヤツ?
入れ直すの面倒くせー……
[僅かに肩を落とし]
けどコレ、どっかで聞いたよーな。
何だっけ?
[10年前に発表された曲。
一部の評価は高かったもののマイナー寄りだったそのタイトルも、それが流れてくる理由も分からないまま。
ただ何となく電源は切らずに、そのまま歩みを進めた]
あれっ。
[声を漏らしたのはチカノとほぼ同時か。
胸元で手を振って挨拶ひとつ。]
祐さん、おひさし。
ついさっきも見かけてたけど。
[声掛けなかったんだー、と笑って、傍らの少女にも会釈をする。]
菊子ちゃんも。お早い再会になっちゃったね。
― →海辺の道―
[何となく足が海の方へ向いたのは、異変が起きる前の瑞原との会話があったからかもしれない]
あ。人……?
[イヤホンからのBGMが3週目に突入した頃、進む先に幾人かの人影を見つけた。
その中に知る姿もあったような気がして、目を凝らす]
─ 海辺の道 ─
…その。
せっかくのお休み、なのに、
[具体的ではないにしろノスタルジーを感じる風景>>91。
多分忙しい中での貴重な休日だったろうに、のんびりするどころじゃない現状は気の毒になって。
なんと言えばいいか解らず言葉が詰まったところで、海辺から上がってきた人>>88に気付いた。]
あ。
は、はじめましてっ
[祐ちゃんと呼ぶ人>>94に、祐樹さんの彼女かな、と視線を向け慌てて頭を下げ。
続いてかけられた声>>99に顔をあげ、瞬く。]
え、あ、六花さん?
は、はい、さっきぶりです。
[知り合ったばかりとはいえ、見知った人に会えたことにほっとして表情が和らいだ。]
オヤ…?
[ふいに、職人は首を傾げ、上着のポケットから一つの時計を取り出した。それはとても古い、金の懐中時計。職人が父の父のそのまた父から譲り受けたもの]
ハテ?オカシイナ。
[職人は、不思議そうな面持ちで、時計を耳に押し当てる。「チク、タク」と、歌に歌われるようなオトが聞こえるはずのその時計から、今は違う「オト」が聞こえていた]
久し振り、こっちに帰ってきてたんだ。
[久々に見た顔と、彼が手にしているものが目に入れば、自然と目は細まる。]
みんな、芸術家さんばっかりね。
[海をスケッチに来たのだろう、そう言われてみればこの懐かしい景色には、昔海でスケッチをしていた彼の姿が何処か重なるかもしれない。]
はじめまして、古川チカノです。
ロッカちゃんとも知り合いなんだ。
[初めて会う女子高生に、小さく頭を下げてからふわりと笑んだ。]
─ 海辺の道 ─
[学生のころを思い返して遠い目をする祐樹の姿に、やっぱ兄貴達に似てると思った。
口にも出して伝えたことを、ちょっと嬉しい>>105と言われた時には少し頬が赤くなったり。
六花と知り合いかと首を傾げられたのに気づくと、こくり頷き。]
あ、その。
さっき祐樹さんにお会いする前に六花さんから葉書をいただいて。
祐樹さんも六花さんとお知り合いだったんですね。
[簡単に説明して、今度はこちらも問いかけた。
チカノから名乗られると、ふんわり優しげな雰囲気にほわりと頬が赤くなり。
慌てて頭を下げて名乗りかえした。]
あ、わ、あたし、鬼龍院菊子です。
よろしくお願いします。
[>>92時計屋さんのテンポは時計が正確に時を刻むように変わらなくて、なんだか会うといつもほっとします。]
元気ですよー。
コレステロール高くなっちゃってーなんて気にしてましたけど。
[あっけらかんとしたものです、と近況報告。
>>90男が経営しているというギャラリーは以前訪れたことのある場所だった。
買ったのは自分ではないけれど、風音荘にも一点飾ってあったはずだ。]
私だけじゃなくて良かったぁ。
夢かぁ。夢ならさめたらおわりですもんねぇ。
[家のある場所とは校区が違い、知り合うといったら風音荘を訪れたときぐらいで。
それもそう多くはない。
母親が仕事で遅くなる時はよく祖母のいる風音荘で過ごしていたものだった。
大学は他県へとでて、地元で就職はしたものの戻ってからは以前ほど頻繁に祖母の元を訪れることもなくなっていた。]
ね、例えば今青海亭に行ったりしたら、過去のチカノちゃんに会えちゃったりするのかな。そういうものでもないのかな。
[この頃、自分は何処にいただろう。
何をしていただろう。
視線が自然、背にした灯台へと向くが、歩みを進めるにつれやがて逸れた。]
行くよ。行く行く。
うんと、直ぐには無理だったら――
個展終わったらでも、打ち上げがてらに。
[残念そうな顔を見れば、慌ててふるりと首を振る。
食欲と一人暮らしのお喋り欲とを同時に満たしてくれる青海亭は貴重な癒しスポットだ。
この会話は祐樹と菊子に出会ったことで途切れてしまったが。]
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