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[二年の教室で図書館から借り出した本を読んでいた。伝承に関する書籍。数冊目の本を読み終えて雑に重ねた]
……何かできるのか?これ。
[合理的解釈など今回は全く意味はない。伝承を受け入れるなら、それこそどうしようもない。なら考える意味がない。
否、一つだけ。何故か頭に焼き付いている。――顔のない手紙。]
*/
[机の中はほとんどがからっぽで、探す手間はかからない。
というか、見つからない]
[かみさまが見せた夢かも知れない、夜のことを思い出す]
たとえ子ども扱いでも、嬉しかったんだ。
[吐き出してみた。
誰もいないのなら、いとも簡単に言葉は零れる]
でも、
/*
[辛うじて見つけた1枚のチラシを手に、3年教室を後にする。
日程しか書いてないそれが手がかりになるとも思えなかったが]
[さてどうしようか、と思った所で、人影を見つけた]
――コウイチ君?
[教室の入口から声をかけた]
[無個性な文字が問う。「人であって人でないもの。それは何?」
人を喰って成り代わる妖怪のことを聞いたことがある。自分はどうだろう?気づかないうちに“そういうこと”もあるのか?成る程。完璧な擬態かもしれなかった]
――震えるよ。本気で。
[呟いて、そこで知った声が聞こえた。
何時もの気だるい口調で返事する]
耕一だよ。どうしたんだ?
昨日、夢じゃないよね?
[手にしているチラシを一瞥し、近づいて差し出す]
アンと、あの先輩、これに参加してたって言ってた。
終業式の晩、ってしか書いてないけど。
こっくりさんでもやったのかな。
*/
あまりに堂々と、授業を聞いてない風の後姿が
誰も近寄らせたくなさそうな空気が
授業中、気になって仕方が無かったんだ。
ふしぎな好奇心。
/*
[チラシを差し出され、受け取って眺める]
狐狗狸ね。確かに大抵は狐だよな。こういうの。
でも。なんだ。上手く伝わる気しねえけど。
……まだ何かするつもりなのか?
『まだ』?
え、っと。私が……?
[からっぽになった両手を組んで、指先にぎゅっと力をこめる。
コウイチの表情を伺おうとするが、よく見えなかった]
そうだよ。来海はこれ以上何をしてやりたい?
なんつうか。なんだろな。責めてるとかじゃなくて。
[心配だよ、と。そう呟いた。チラシを茫洋と見つめたまま]
もし、どこかに連れていかれてるなら、そこから戻れるようにしてあげたい。
でも、どうしたらいいのかわかんない。
[俯きかけたまま、コウイチを見据えて]
怒ってるの?
そだな。それは、俺もそうしてやりてえ。
[視線に応えるように来海の目を見つめ返し]
何があっても俺がお前に怒ることはないよ。
心配だからあんまり一人ですんなってことだよ。
何かするなら、俺も付き合うよ。俺がいる限りは一緒にやるよ。
そして喉がない始末。
ペース配分できてません。がはは。
まあ、手紙の結果聞けなくなるくらい、かな?
とりあえず票だけ決めよう。
コハルとタカハル。どっちだろう。
……わかんない。
あ。今おもったけどクルミが守護かもなんだね。
いる限り。
[その言葉は、自分が知らず祈っていた事柄を表層に浮き立たせる]
いなくならないで。
[自分の指先の怠慢な動きを目で追う。
コウイチのシャツの袖を、つい、と引っ張った]
[袖を引っ張る来海の手をとって、きゅうと握る。
少しだけ迷って、やはり根拠もなく約束した。
この状況で、それ以外できそうになかった]
大丈夫だよ。
[せめて自分が身代わりになれたら。思いながら決して言わない]
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