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[頭がないから、涙を零していた事は知らない。
頭がないから、脳を食べる事もない。]
……―――――…、
[生贄としての衣装。其れは一般人が身につける物よりは上等な仕様だろう。喩え教祖が偽りの教えを掲げていたとしても、狂信の徒達が、神の生贄に相応しいよう装わせたに相違ない。
そんな事は知らず、手触りの滑らかを指先に感じながら、少女の衣装を破き、唇を開いた。]
[皮膚を突き破り、殆どついていない脂肪の層を破り、その下の繊維ごと噛み千切る。]
いた、だき、ます。
[それから、思い出したように、
ベルンハードの食事前の挨拶を真似する。
両手を屍体の両側に付き、ぴちゃり、ぐちゃり、と音を響かせながら、食餌を。**]
[研究施設での暗澹たる刻が、血の色で塗られてゆく。
四つん這いになり喰らう姿は、情報屋に捉えられているかまで、男が知る事はない。*]
― 時間は暫し戻る ―
…っ、
[拒絶の言葉と感情の侭に振り回される腕により、
呆気なく、男の身体は跳ね飛ばされた。]
ごめ、ん。
[打撲傷を庇うように半身を起こし、項垂れる。
辺りに腐臭と新たな血臭が漂い始め、
男の爪先に祭壇上から流れてきた血が触れた。]
― →>>46そして現在へ ―
[鼻先を突っ込むようにして、肝を齧る。両手で、腸を掻き出し、まだ暖かさの残る血を啜り舐め、肉を引き千切るようにして齧る。膨らみ始めた薄い乳房を噛み千切る。]
[くちゃりくちゃり]
[咀嚼し、喰べる。ベルンハードのように、続けて喰い続ける事は出来ない。それでも、傍目にはガツガツと食べているように見えたかもしれない。]
[口元から滴る血だけを拭い、振り返る。
人差し指がピンと伸ばされる。]
俺は、一人。
[ベルンハードに、そっと告げる。]
[大量の消化を基本とした人体構造はしていなかった。]
これ、から……。
[軽業師レーメフトとの接触で活性化された意識は既に曖昧となり、楽園を探す、といった事が薄っすらと意識の表層に浮かび上がってくる。「喰べる」と「狩る」「両方」という音も浮かび上がるが、]
待って。
[移動の音が聞こえて、声をかけた。]
楽園にかえる?
[既に歩き出したベルンハードは止まらないだろう。]
[実験体の実験結果を反映した「完成品」は楽園に居る>>1:73と、きいた事があるだけ。]
[柔らかな果実に齧り付くように心臓を齧りながら、ベルンハードの匂いを辿って歩む。]
とても甘い、……。
[有翼人の事はそう称して。
生贄の少女を喰べたので、有翼人を喰べれるとは思いきれなかった。まだ祭壇上の床部分に転がっている者に後ろ髪を引かれる思いを飲み込むように、心臓を平らげた。]
[少女の死によって、少女に感じていた「可哀相」というものは消え融けて、疑問が音となる。]
何故……、選んだのだろう。
[少女の涙に触れていれば、何か感じ取れたのかもしれない。だがその機会は永遠に喪われた。]
……―――…
[足が止まる。先ゆくベルンハードとの距離が開いた。]
分からない……、少なくとも匂いは甘く感じた。
直ぐ、戻る。
[ベルンハードの背に声かけ、脇道に逸れようとした。]
[脇道に逸れ、暫しうろうろと匂いの方向へ向かう。
何処に在るのかは分からない。少しずつ、近づき、]
――――――――…っ……
[何かに躓いて、転んだ。
その拍子に、其れも、砂塵の上を転がる。]
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