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[腕をいきなり掴まれて、恐怖に足が竦む。
驚きに目を見開いて振り返ると、そこには見慣れた村人の姿。]
写真屋、さん……?
写真屋さんも、来ちゃったの……?
[掴まれた腕から伝わってくる温もりを、喜べばよいのか悲しめば良いのか分からずに目を瞬く。]
たぶん、まだ死んでないと思う。
[見知った大人が笑うのに、少し固かった頬が緩む。]
神隠しから、帰ってきた人はいるから。
ここを出ることが出来れば、きっと。
[ぽんと頭を撫でられると、嬉しそうに笑い返した。]
写真屋さんは、ここで誰か……ネギヤさんとか、他の人に会いました?
みんな心配してるから、おばあちゃんになるまでは嫌だな。
[笑う写真屋に同じように笑って返す。
その声には、相手ほどの力はなかったかもしれない。]
永嶋さん……引き戻したかったんだけど、駄目だったか。
[自分が捕まえた筈の手首を思い出し、手のひらを見た。
続く見知らぬ名前と、その詳細を聞いているうちに、何かを思い出すように、目が細くなる。]
黒髪の……。
[言いかけた言葉は、また増えたかもと言う光野の言葉に押し止められた。]
写真屋……って呼び方失礼ですね。
えっと、光野さん?
誰か他にもここにいるのか、探しに行きません?
あと、バクさんにも会ってみたいし。
誰か見つかったり、何かあったりして…あたしを呼びたくなったら……えっと、これで。
[言いながら、近くの雑貨屋を覗きこみロケット花火を取り出した。]
何もなくても日が落ちる頃になったら集会場に集合で。
[言って、光野が同意してもしなくても、辺りを探しに駆け出していく。
こちら側に来た村人を見つけたなら自分が知っている限りのことを話そうと。]
[行く途中、幾人もの村人とすれ違う。
三樹と、結局名前を聞けなかった白い服の女の体をすり抜けた。
すり抜けると言うことは、向こう側にいると言うこと。
気づいてくれないのは寂しいし、不安だけれど。]
良かった。
[立ち止まり振り返ると、小さく*笑った。]
[その彼女が、近所の主婦と同級生の白銀と言う奇妙な取り合わせに近付くのを不思議に思い、思わずそちらに寄る。
今では随分遠くに感じる彼らの話に耳を*済ませた*。]
[姿の見えない黒髪の少年を探すように、視線を空へとさまよわせた。
やがて、同級生と退治した女が歩き出せば、黙ってその後につき、彼女の話を聴く(>>44、>>45)。
蛍川に着き、女を詰り去って行く白銀の背(>>57)までを見送って、首を振り嘆く女にそっと寄った。
慰めようと伸ばした指が、女に触れることはなかったけれど。]
縁があってもなくても、あたしは手を伸ばしたけどなぁ。
[同級生の消えていった方に目をやって、困った顔で首を傾ける。]
縁があったおかげで、こちら側にいく永嶋さんが見えたなら、見えて良かったよ。
[後悔しているのは、繋いだ手で、現実に引き戻す力がなかったこと。]
[蛍と名乗った娘を慰めるように、河原の葦が揺れる。
ニュータウン化計画が進めば、この娘は消えてしまうのだろうか。]
でも、村の過疎が進んで、このまま人がいなくなっていったら、蛍川の伝説を覚えている人もいなくなるんだよね。
[誰も来ない河原に舞う蛍も、きっと美しいと思うけれど。
眉根をよせ、うーんと唸ると、歩き始めた女の後を追うように神社へと向かう。]
かみさま、こちら。
手の鳴るほうへ。
[適当な節をつけ手を鳴らすと、まだ会えていない黒髪の少年を思った。
彼は、自分が知っていた神様だろうか。
自分を覚えているだろうか。
幼い頃のおぼろな記憶を便りに、神社を探す。]
神様やあい。
[ぱん、ぱんと手を鳴らしても、返る声は無い。
ため息をついて、境内の木陰に座りこんだ。]
呼んでおいて、来たらほったらかしなんて、無責任なんだから。
[相手は人とは違う理を持つ存在。
責任を問うたところで意味は無いと分かっていたけれど、人としては文句の一つも言いたくなる。]
ま、文句を言っても仕方ない。
あたしに出来る範囲で、帰り道を探すか。
光野さん、誰かに会えたかなぁ。
[結局、神隠しにあっただろう人には誰も会えなかった。
こちら側にいる人なら救えるかも知れないけれど、自分の手が届かない場所に居る人はどうすることも出来ない。]
もしかしたら、会えるかもって思っていたのにな。
[遠い昔に、消えてしまった人を思って少し笑ったとき、声(>>+38)がして振り向いた。]
永嶋さん?
[居ることは知っていたけど、彼が自分を見かけ、声をかけていたこと(>>+32)には気づいていなかったから、目を瞬く。]
[相手の姿を認めると、自然とその手首に目がいった。
蛍川の女が言っていた言葉が脳裏に蘇る。
彼女の言葉が本当かはわからないけれど、自分なら、一緒に落ちるより自分が踏みとどまって引き上げたいなと思った。]
永嶋さんがこっちに居て良かった。
あっちの世界に戻る方法を探そうと思うんだけど、熱中症は、大丈夫ですか?
[どことなく浮かない顔の男に、そう訪ねた。]
[写真屋が呼ぶ、担任教師の名前に初めてそちらに意識を向ける。
担任教師と蛍川の娘のやりとりの全てを理解できたわけではないけれど、彼女が自分達の為に何かしようとしてくれる気持ちが嬉しかった。
問いを重ねる光野に、困った顔で笑う。]
光野さんまでそんなこと言う。
なんでみんな、あたしの知らないこと知ってるんだろ。
神の使いとか、蛍川の伝説とか、色々言われたけどあたしにはあんまりよくわからないんです。
あたしが知ってるのは、こっちの世界はずっと昔から、いつも傍にあって、誰かを呼んでるってこと。
そうみたいですよ。
何だかよくわからないけど、ザクロ先生のやることは、信用しちゃいそうになる。
だから、こっちからも何か出来たらなって思います。
[シャッターを切る光野にそう言って笑う。]
こちら側の人達は、光野さんのレンズに映ります?
写真、どんな風になるんだろ。
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