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極寒の極夜。
石造りの小屋が点在する村の中に、一陣の風が吹く。
小屋群から離れた、面々が集まるテントの周りにも。
やがて長老は、皆へ口上を伝えた使者アルマウェルを
労うように僅か顎を引いてみせると…重い口を開く。
『 狼をあやつる者は、ふたり。
必ず滅ぼさねばならぬ。
そして未熟ながら――
汝らの中には、まじないをする者らが居る。
その者らは、村へわざわい為す狼使いどもを
探し出すのに大きな…おおきな力となろう。 』
長老は続けて言う。
彼らをまじないで看破する者が、ふたり。
看破するには、
ひとりは生ける者を、ひとりは死せる者をみる。
さらには、狼使いどもの暴虐を
僅かに阻む者がひとり居るのだと。
『 汝らの誰にも、可能性は在る。
だがドロテアには――
我が孫娘には、それらの徴が全くない。 』
ドロテアの身代わりについて言及した求道家を、
長老は静かに見遣る。その裾は孫娘に握られて。
『 無力がゆえに、…代わりは居らぬのだ。 』
供犠たる孫娘の手を握り返せぬ儘、声を絞った。
アルマウェルを通じて、或いはテントの中で
聞かされていた言葉はもう一度繰り返される。
『 時間稼ぎも、僅かだ。探せ。汝らの中に居る。 』
敵も、味方も。
今ひとり潜む、揺れる者の存在は本人のほかには
未だ誰も、長老でさえも知らぬままに時が*刻まれ*
[手のひらで壊れ物を扱うような少女の面持ちと否定に]
莫迦ね。この世に不必要なものなんて無いのよ。
きっとあの世にもね。
だから貰っておきなさい。覚えておきなさい。
あなた自身のためにね。
[慰めの感情は出来るだけ入らないように。
そっと肩を叩いた。]
/*
占い師弾かれ人狼ですか。
これは死ねる。久々に死ねる。
テンション上がる。
ラウリ宜しくです。
…てっきりあなたが狂信者フラグを
立てまくってると思ってました…
[肩を叩く際、ほんの少しだけ身を寄せた隙、
少女の耳に囁いた言葉は、長老の声の後か。]
ドロテアは無力じゃないから。
それを証明するために、私も――…
あなたを無駄にはしないから。
[それは誓いに似た、*言霊*]
/*
狂信者騙り来るかなぁ?
来たら楽しいね、なんて言ってみる。RP村なのに。
でもってこの国にはダイイングメッセージが!!
ぬを! 使ってみてぇ!!
そこまで分かっていながら……
[長老の言葉を聴き終え、言いかけて、やめる。
代わりに、視線はかの贄の娘へと注がれた。しかし、その唇が言葉を発することは無い]
我々の中に、ふたり――
[何か遠いものを見るような眼差しで、集った人間を改めて見つめるのだった**]
[車椅子の青年の、やわらかな声を肯定する態で
双眸を細めたとき――村の中をその風は吹いた。
その頃には、いまひとり疑いをかけられた者…
イェンニも長老のテントへと姿を見せていたろう。
長老が自ら告げる言葉を、暫し傾聴するひととき。]
大きな、力。それが。
未熟なまじない、か…
[ヘイノの視線から大蛇を庇った手が、すこし浮く]
――居るさ。
――お前が在るようにだ。
[外に集う狼の遠吠えは、呼ぶ者と
応える者の声を隠すように、紛れさせるように――]
…………
[無力がゆえに…―――長老の言葉と共に向けられる視線を受け、眼鏡の奥で僅かに見開いた瞳が揺れた。物言いたげに開いた口が幽かに震えて、結局は何も紡がずに引き結ぶ。
車椅子に座す求道者はただ、供犠の娘を見た。彼女は―――幽かな弧を描いたように見えた口元、面持ちは写し取れず歪んでいくから項垂れるように俯いた]
だから…
こんなに大勢いたんですね。
だから…―――
[荒げる事のない言葉は続かず途切れて、膝掛けを握り締める。ラウリの言葉に俯き垂れた前髪が揺れ、ゆるりと顔をあげ自身もまた改めて、集う者たちを見た]
狼をあやつる者は、二人。
必ず滅ぼさねば……
[長老が告げる内容を黙って聞き、その一部を呟くように口にする。
それ以上はなぞらなかったが、男の頭の中には、漏らさず記憶されていた。男に使者の任が与えられた理由は、一つには、その記憶の正確さ故にだった]
……
[視線は集まった面々を順に捉えていき――途中、誰かと目が合う事もあったかもしれないが――ドロテアの上に留まって]
[長老が重い口を開くのに一度瞬き。
告げられる言葉に耳を傾け、その内容にじゃらり、と抱えなおした杖が鳴る。]
二人、ねぇ……ふぅむ……まじないか……
[長老が告げたまじないの言葉に深く考えるようにゆるりと瞳を伏せて暫し沈黙してる**]
…
[蛇使いの眼には、お守りと称して渡された菓子に
被りを振ったドロテアの仕草が「不必要」を告げた
のではなく、――自分が皆をひととき守るから、と
そう告げたように見えた。
しかし、ヘイノを野暮呼ばわりもする気になれず]
預かりものか。
…きさまの分も、残るといいな。
[そう、素っ気なく言葉を添えた。]
[集められた面々の、互いを見る眼が変わるのを感じる。
村を、互いを守るための、まなざし――]
…好い村だ。
あたしは、だいすきだよ。
必ず滅ぼさねばならぬ。
にんげんに。…文明に滅ぼされる*前に*
[告げられる、長老の言葉。
男は見えぬ手を自分の掌に落とした。
開いたその上に、今乗るのは空気だけ]
…敵……――
――、味方、
[ふたり。
そして、ふたり。
開いた手の指を、にほん、曲げる]
……望まれたりか。
[呟きはごく微かに。視線はすぐに逸らして、再び炎へと向けられる。炎に照らされる真紅のコートは、赤と黒の火の粉が混じり合っているように映し出され]
……。
[話しかけられるか何かするまでは、そのまま口を噤んでいるだろうか*]
ああ、繰り言のような問いをかける、
そんな時間は過去のものとなったのだな。
[互いが、互いを見る眼が変わる。
痛ましくとも、嘆かわしくとも、先を繋ぐため。
漸くこの地に根づいた流浪の蛇遣いは、焔の裡を
覗くように俯いていた顎をようやく持ち上げる。]
討つべき輩は、ふたり。
抗する力は、さんにん。
…それ以外の者は…
それと知られず盾になる、ということだろうかな。
あたしも暫し、考えるときをいただこう。
…白髪頭。
合議のしきたりが必要なら、教えてくれ。
[見交わす面々を自らは見ぬよう、天を仰いだ。
見れば見知る人々の姿に、惑わされそうになる。
皆の気配を、戸惑いを、決意を感じながら――
常から見ぬマティアスは、もっとより多くを
感じているのだろうかと、束の間意識に*上らせた*]
…――狼を、連れて来て、
危害を加えそうにない者…とか
[ぽつり、俯いたまま零したのは
つたないなりの方法の導入だが]
…――いや、何でも無い
[言いかけた言葉を ごつりとした首の中を通し
臓腑へと落としこみ、蛇遣いへと顔を向ける]
…――、
[それから其処に並ぶ面々へと見えぬ視線の顔を向け流す。
緊迫した空気は風というほどの流れは持たず
ただ、ピリピリと 男の肌を傷めつける]
…知られず盾…か…
死した後判る者にだけ、知れる…――
[言葉は、ぽつりぽつりと低く。
断片的に零し俯くと、4と9の並ぶ数字が揺れた*]
いつ。
[視線を漂わせると、アルマウェルと一瞬目が合った気がしたが、すぐに俯き焔の辺りを見つめる]
もう?
[女は、長老の顔を見ることが出来ないまま問う。
胸に抱くような形になっていた菓子の包み。
それを握る手に力が入った**]
[外の騒がしい空気に瞼は揺れます。
脳裏隙間から見える赤いオーロラは、記憶が持つ色とかけ離れ。不吉といわれようと、それを美しいと思う瞳はここにあり]
吉兆があれば凶兆もございましょうね。
何を不思議がることありましょう。
[目には赤、耳には人ならざる獣の鳴き声。目覚めた胸裏ににじむものは常と変らず。大義そうに体を起こすと、向かうべき処へ足は迷わず。テントに集う者たちに遅参を詫び、一通りの語りを耳にすると]
私には…あるべきものが浮かぶだけですのに。それなら動物達は私たちがいるから
いつも凶事にさらされておりますね。
[静かに目を閉じる。交わされる会話に言葉をはさむこともなく]
いいえ。不吉を望むものではございませんもの。私はまだこちらに入れて頂いたばかりの新参者。長老様が望まれるように。私は御意に従います。
[この村に住み着いたのは少なくとも比較的遅い時期。このような重い会議で強く意見を述ぶる程の立場でもないでしょう。周囲の不安を否定するかの如くは疑問を持つ者もいたことでしょうが、ふぅ、と一息]
ドロテア様。何の業無きといえども御身はお健やかなこと。供犠はよい結果を導ければよろしいですわね。お力になれずに申し訳ありませんが。
[しゃらん。髪飾りが音を立てる。小さく頭を下げ、僅かに開いた伏し目がちな目を周囲に向けまた静かに*]
どうぞ。お続けになって。
なるほど、……、わかった。
[供儀がドロテアである理由も、
そしてドロテアに狼使いの可能性がないことも。
変えぬ表情は憐れみも慰めも娘には送らない。]
狼使いは二人。
抗う力が三人。 ……か。
死せる者を視る、というのは――
[生者を視る者で判断つかぬ折には――その先が自ずと脳裏に浮かんだか、言葉はその続きを紡ぐことはなく。]
[男は生まれた時から此処にいる。
幼い頃からそれほど朗らかに笑うような人間ではなかったけれど、今は一層。
想いの欠片はけれど誰かに語られることもなく。
その顔つきは日の浅い者には好意的には映らぬだろうと思えど曲げることもない。]
――"ドロテア"を、増やしてはならない。
[落した言葉は呟きに*似て*]
――ふたり、ね。
[贄となろう乙女から身を離し、長の言葉を反芻する。
呟いた数に意味を重ね言葉を噤む。
ふと、冷気が擽る。
遅れ着たイェンニの連れて来た真新しいものに触れ、
鼻を啜る。張り詰めた意図が無数に巡る。
正直この空気が苦手だと思った。]
まったく、しょうもないことばっかり
言ってるんじゃないよ。
緊急事態なんだからさ。
[呆れた口調でヘイノに肘で強めに突く。
そんな折、不意に長老の口から出た
ドロテアが選ばれた理由]
しるしが、ない。
[だから。
思わず出そうになった言葉を飲み込む。
呟くドロテアに視線をやり]
あんたは……優しい子だね。
[すっと手を伸ばし、頭を*撫でた*]
第二のドロテアを増やしては、いけない。
[情報屋の言葉端を拾い上げ、
自らに言い聞かせるように呟く重さに、
今は誰も気付くことは無く。
そっと目を瞑り、氷に閉ざされた雪の音を聴く。
手渡した白い淡雪のような砂糖菓子は、
無残に奪われる命の、生きた証を舌に残す記憶として。
せめて安らかな終わりを導くための祈りとして*]
/*
ドロテア少女とか書いてたorz
いや、だって生贄ったら生娘だし、
孫娘だし、昔だし…ゴニョゴニョ
ヘイノから見たら少女なんだよ。うん。
でもヘイノ、まだ30代…orz
/*
甘い香り=呪術に関係ある設定。
すっかりあの場の思い付きです。
でもって菓子のにおいは弾かれたときの予防線。
ドロテアにお菓子を手渡したのも、蛇遣いさんに
突っ込まれたからだったり。
きっとミカちゃんとはお隣同士なんだよ。
というか居候していそうだ。
/*
集まりに遅れた理由=お仕事=占ってたとかねじ付け。
でも突き止められなかったのは未熟だから。
力があったらドロテア助けられたかもなのにね。
と、ここでおっさん成長ストーリーが。
ホントは見回りしてたとかだったんだけどね。
ほら、夜警だし。
ってそれだと夜しか働かないんだ、ヘイノ。
[無力が故の贄となるべき娘に一度視線を向けるものの、掛けられる言葉など浮かびはしない。
ただ、静かに視線をそらす。
それぞれがまじないについて口に出す中、無意識に強く杖を握る。]
――そうだのぅ……
このような儀など、数年来なかったことじゃて……ちぃと調べてみんとわからんが……
ドロテアは――禊が終われば……
[それが明日の朝なのか、明後日の朝なのか。
どちらとも言葉にはせぬまま。]
このままここにおっても、狼使いが名乗り出るわけではなかろう……
わしは一度戻らせてもらおうかのぅ。
[重い空気に一度吐息をこぼし。
よいせ、と身を起こして、じゃらりと杖を鳴らしながらテントの外へと向かった。*]
[遅れてきたイェンニに目礼を置き眼鏡を手に思案に沈むも、彼女のどの言葉にか顔を向ける。声をかけるでもなく、束の間は滲んだ視界が彼女を捉えていた]
………
…説得に応じては貰えないのでしょうか。
[苦渋の決断を下した長老に対してか、供犠の娘に対してか、あるいは狼を操るらしき者たちへ対してか。狼の遠吠えは集まる誰の言葉を待たずも応えているようで、向かう先すら曖昧な声は小さい。
カウコの言葉が一度は途切れようとも、続きを想像する事は難しくない。菓子の包みを抱く供犠の娘の声、カウコやヘイノのドロテアを増やしてはならなぬと言う声―――音も息もない溜息が零れてしまうのに唇を噛んだ]
長老のお話は伺いました。
でも僕にはまだわからないです。
[ビシャルが場を辞そうと動くのに、滲む視界はまた集められた者たちを見回した。マティアスのように視界の無い訳でもなく、トゥーリッキのように見ぬ事を選ぶでもなく]
…今でなくとも構いません。
皆さんのお話を伺いたいです。
[供犠の娘が身を呈して護ってくれる時を想えば、今すぐにでも聴きたくもあり、語られるのを待つ間すらも惜しむ口振り。事情を知るであろう者も知らぬ者も含めてとは、決して強くはない口調であれ言外にも滲んだ]
…
ああ。戻って――
調べられることがあるなら、頼む。
あんたが狼使いでも、記述は違えないだろうと…
そうあってほしいと想ってみよう。詮無いがな。
[凍える風吹き抜けたあとの外へと赴くビャルネへ、
蛇遣いは告げる。希望へは、小さな賭を積む如く。]
あんたの"わからない"を埋めるためではないが、
では少し話してみるかね――歩まぬレイヨ。
[火の傍から離れるのを億劫そうに、腰を上げる。
車椅子へ掛けたままのレイヨへといくつか歩を寄せ]
こうして集まる大勢の前でお聴きせずも…
[滲む視界は強く意見を述べず控える態のイェンをちらとなぞるも、彼女に限らず大勢の前で零される意見と個人的な会話は誰しも多少の差異はあるだろう。一度、言葉を切り間を置くように、眼鏡をかけなおした]
個人的にもお話できればと思います。
気が向かれたら小屋へ来て貰えると嬉しいです。
大したおもてなしは出来ませんけど…
/*
…こまめに人名間違いをするレイヨに
芸の細かささえ感じるのは何故だろう…愛か。
そしてこのピンポイントなお誘いは
狂信者だったりしますか…?
皆さんにとって、足を運んでまで…
僕が話すに足るか定かではありませんが…―――
[トゥーリッキの声に言葉を切り、立ち上がり寄せてくれる歩の分だけ視線はあがる。キィ…―――座す車椅子ごと向き直ると、眼差しと共に礼を述べるように軋んだ音を立てた]
僕は吼え続けるおおかみより人がこわいです。
見据えるべきを誤るかも知れない己も含めて。
小屋か… あんたの。
思えばあたしは――あんたがこの村で、
どんな責を担っているのか、
いかに暮らしを立てているのか、知らないな。
[齧られた眼鏡の蔓は、耳裏を刺さぬのだろうかと
束の間追った。硝子越しのレイヨの瞳と交わし…]
気が向かねば火の傍で座っているよ。
――お招きに預かろう、有難く。
…ひとは、こわいな。
為すことも齎すこともあまりにおそろしい。
[蛇遣いは青年の車椅子を殊更押すことはしない。
ただ彼が通る間、入口の幕を持ち上げていただけ。
そして、その幕で皆の視界から遮られる間際に、]
…
聴くのも、説得するのも己のみではないよ。
[語尾を持ち上げず、レイヨの膝元へ軽く触れた。]
―テントの外―
[赤いオーロラはまだその姿を見せている。
その光に眸を細めながら、じゃらり、じゃらり、杖を鳴らして雪を踏みしめる。
長老のテントからほんの僅かに離れた場所に、男が住む小屋はあった。]
……さあて、どうなることやらのぅ……
[喉の奥で笑うような声をこぼしながら、小屋に入る手前で、村の中を見渡すように、
ところどころかがり火で照らされた村を眺めた。]
……――夜、が続く今。
ひとり、で、ひとりと、隔絶された場で会うのは…
[ぽつり ぽつりと零す低い声は
名こそ出さぬがレイヨへと向けてのものであると、
見えぬ視線向ける方向で示す]
あんたが狼遣いなら…「罠」だし
…そうでないなら…――「贄」と近しい…
[そして、彼の彼であるが故に、そう言われるであろう事も想像せぬ訳でもないだろうと、言外に想いを添える。
其れは、レイヨを測る材料ともなろうと]
…――、
[言葉選ぶが得手では無いとばかりに口を紡ぎ。
テントから出るひとの気配を感じるままに、火へと顔を向けた]
僕は僕の出来る事をしているだけです。
決して多くはありませんけどね。
[車椅子に座そうと土地や草木に対する幾らかの知識はあり、細々とした暮らしは立っている。招き見て貰えばと多くは語らず、残る者たちに目礼を置き場を辞す事を示した。
キィキィキィキィ…―――トゥーリッキが持ち上げてくれるカーテンに冷気が流れ込むも、マティアスの声に車椅子は止まる。向ける眼鏡の奥の眼差しが和らぐのを、彼が見る事はないけれど]
粗茶くらいはお出しします。
温もりは和らげてくれますから。
[何を和らげるかも曖昧な言葉は、マティアスと同時に招きに応じてくれたトゥーリッキにも向けるもの。キィキィキィキィ…―――持ち上げられたカーテンを潜る前には、礼を籠めた瞬きを添えた。
膝掛けの上から触れる手に項垂れるような仕草で浅く頷き、肩越しに振り返ったおりていくカーテンの奥に一瞬だけ供犠の娘を見た。村のはずれ付近の住まいたる小屋は老朽化が進み廃墟に近いが、車椅子に座す求道者は修繕を施す事も誰かに依頼する事もないが、招く事を臆する様子もない]
案じてくれるなら…
[去り際、マティアスの辿々しい懸念に振り返る。]
――黙って見送って、盗み聞きするくらいの
機転はきかせてくれないと困るな、"49"。
我々のどちらもが…危険を冒す意味がない。
[少しだけ、唇の端が下方へ曲がる気配は
見ぬ彼には拗ねめく声の響きで伝わるだろう。]
それとも、お前。…勝手に
疑い合えばいいとでも考えているかね?
[己は動かぬも測る、と告げる代わりに投げかけた。]
/*
…そしてビャルネ。こっちだったかな。
単独行動一番乗りだったのは、お誘い下さってたのですかね?
まああれだ、ラウリもいるし。
なるようになる。
…ならば、あたしと同じだ。
出来ないことまでしたがる、なんてことは
無論あんたにはないのだろうが。
[レイヨが、そして己も、マティアスへと答えて
やがて、些細な会話と道行の続きは再開される。]
この地で、ひとも群れて暮らすのだと――
担うべき責があるのだと教えて貰いながら、
数年間、…つたないながら過ごしてきたな。
[夏のベリー摘みや銀鎖編み、裏返した毛皮を縫う
防寒着仕立て――蛇遣いはまだ熟練には至らない。
今でなくとも、時は惜しむと添える唇がつぶやく。]
…茶なら、何でもうれしいさ。
あの、皆が好んで飲む、
血粉を湯で練った珈琲もどきだけは堪忍だ。
[表情が和らがぬのは詮無いが曖昧を容れ頷く。
ドロテアの想いが、いまひとしずくの時を産む。
言及はせずとも蛇遣いは答え、また応えるべく。
テントに残る者たちへは向かう余韻のみ残して、
雪の重みに耐えられるか否かの、青年の小屋へ]
…まずひとつ、尋ねてみるのだが…レイヨ。
まじないをする者には、助言が必要だと思うか?
出来ぬ事とて…想いはしますけどね。
弁えられているなら幸いです。
寒い中ご足労をありがとうございます。
[トゥーリッキとマティアスの会話に口を挟まずも耳を傾け、再開される続きに広がる夜の冷たさに眼差しを細める。遠吠えは止まず人の気配も温もりも減る屋外ではテントより大きく、進む道のりに招いた人でなく寒さを気遣う眼差しは蛇の気配を探る]
…僕も貴方も群れのひとりですね。
[キィキィキィキィ…―――やがて崩れかけた小屋の前で車椅子の音が止まり、到着を示すように顔を向ける。立て付けの悪い扉を開いて招き入れれば、慣れた所作で言葉の通りに短い夏の間に知る者も少ない森の隅で摘んだ茶を淹れはじめた。
トゥーリッキに木彫りのカップを差し出して、自らも茶を啜る。お連れさんのお名前を伺ってもいいですか?―――湯気に曇る眼鏡越しに最初にかけたのはそんな言葉]
[見ずもトゥーリッキの鼻先が立てる音は聴いていたから、招いておきながらも口も開かずに。室内には茶の他にも幾らかの草木の根や葉や土の幽かな香り、すり潰しかけの木の根と機材が乗る机は脚が一本だけ短く、カップを置くとカタリと鳴った]
仮に…貴方がまじないをできたら助言を欲しますか?
時と場合と、人によるとは思います。
[道々に問われた言葉へと答えたのは、悴む指先が解れて先に曖昧に零したものが幾ばくかでも和らいだと感じてから。思索の先にある言葉を訥々と零しながら、曇る眼鏡を外して膝掛けで拭う]
仮に僕がまじないをできるなら…
何と助言を頂けるんでしょうね。
[ウルスラの見事な肘打ちに顔を顰めつつも、
散り散りになる場に、長居することも無く。]
じゃぁ、爺…もとい長老、
何かあったらアルマウェル伝いに呼んで頂戴。
私が出られなくともミカちゃんが対応するわ。
[名残惜しそうに火元から立ち上がると、
一瞬だけ不可解な素振りを行った後、テントを後にする。]
[住まいに着くなり火を起こす手許には数冊の本。
砂糖菓子の守りを持たせた隣人にも忘れずの報告。
薄暗い季節。昼夜も訪わない狭間に明かりで*探すものは――*]
[花束]について? [ボウガン]の本?
[ドラゴンレーダー]のしくみ…?
ちょっと! ニルスったら!
貸した本、ちゃんと返しなさいよ!
センセーも言ってたけど緊急事態なのよ!
ったく…いっっっつもいい加減なんだから。
まぁ、今回は"中身"を使わないからいいけどね。
[テントから出ていく面々を、ゆっくりと見送る。
しばらく火に当たっていたが、やがて己もと帽子を被り直して]
…既に贄が用意されているのに、まだ手を出すのか。
いや、しかし…そうでなければ、暴虐の限りは尽くせないか?
[ドロテアに聞こえないように――しかし口に出してしまった以上その言葉はテントの中に響いてしまうのだが――低く眼帯の男に向けて囁く。やれやれと首を振り、その場から立ち上がった]
娘だけでは時間稼ぎにしかならないとは、恐ろしいものよ。
冬の狼は、どこまで貪欲に成り得ると言うのか――
[ドロテアを一瞥し、テントを後に]
―― レイヨの小屋 ――
否… お招き感謝だ。
そう、群れのひとり。同じ群れだといいと思う。
[何もかも凍りつく季節に嗅ぐ、あおくまるい香り。蛇遣いは、レイヨが煎れる茶の蒸気を吸い込む。
毛皮の下では和らいだのは…寒さに縮む大蛇の胴で]
相棒は、相棒だよ。
名乗らないから、名前は知らんのだ。
[大蛇の名を問う眼鏡の曇る青年に、さして冗談でもなさそうに言う。少し思案して、顎を引いて見遣る]
あんたにとって、こいつが何と定まるなら
――そう呼んでみるといいのではないかね。
―テントの外―
[凶兆の徴は、優雅に、そして堂々とその姿を天に泳がせている。
自宅のある――所謂村の外れと呼ばれる場所にのんびりと足を進めながら、オーロラを眺めていた]
美しいと思っては、…まずい、か。
[帽子の唾に軽く触れ、ひとつ白い息を吐く。
耳の奥には狼達の遠吠えが容赦なく響き続けている]
[渡されたカップを、両手に包む。血が温まる。]
…助言は、ほしい。あたしなら。
まじないは自らを強くしない。たぶんな。
[冷たい洟でなく温い茶を啜るに、音は立てない。
湯気越しに見ているのは、青年の裸眼、そのいろ。]
…む。そうだな。あたしには、あんたが。
まじないをするようには…実は、今は見えん。
まじない師というよりは、学究の徒に見える。
なので、もし予想に反して"出来る"のなら――
その調子で密かにことを進めてくれ… だろう。
……文明に滅ぼされる前に、か。
確かに文明の炎がやってくれば、少なくとも――我々は終わるだろうな。
大砲はいとも容易く狼の群れを吹き飛ばす。
[取り囲む群れを率いるモノのひとりは、からからと面白そうに笑った]
同じ滅びならば、より美しく凄惨な滅びを。
ふむ――…何と、呼ぶべきであろうか?
[それぞれに外へ出ていく者達を、無言のままに見送る。男は、当分はテントの中に残っているつもりで]
……まじない。
求めんがための……
潜められて。僥倖たるかな。
[ぽつりと、再び呟く。ふと、長老に一瞥をくれられた。その視線は、お前は出来るのか、とでも問うように]
……
[僅かに目を伏せる様は、否定とも肯定ともつかず。
ただ、炎が小さく爆ぜる音を立てていた**]
見立て通り"出来ない"のなら――
[ゆらり、首元で眠る大蛇の膚が波をうつ。
言いかけた言葉は止めたか、そこで元より終いか。]
……否、それは問われてはいないな。
[笑みはつくるにも気が進まぬ態で、息を吐く。
歪んだ卓を鳴らさぬように、静かに器を*置いた*。]
[炎を見詰めたまま、トゥーリッキの言葉を聞き。
男の顔に珍しく浮かんだのは、苦笑に似た形の表情(かお)。
拗ねめく響きに、顔を向ける事はせぬままに]
…――そう、だな…
そう言う真似を思い付かぬから、
俺は、――
[続くべき言葉を飲み込むのは男の癖。
炎へと顔を向けたまま、気配がテントから消えるを感じつつ]
[幾人かの気配が、またテントから消えるを感じる。
男は右手を膝の上 左手を脇の杖の上
ふと、長老の声に顔を上げた]
…俺、は――
――出て行くべきなら、そうするが、
今は…――
[まだ此処に居る、と。
腰を上げようとしない男に不思議そうな視線を向けるドロテアへと顔を向け
頷く事もせず、また炎へと顔を戻した]
炎も波も、すぐそこさ。
すっかり、取り囲まれている。
保護区域、などと称しつつも
そのうち見世物小屋と変わらなくなる。
[狼の声は高く低く――相手の声音も届かせる。
蛇ばかりでなく意を通じる遣い手は、淡い憂いを
極光のくれないに包む如く揺らめかせ応じる。]
在るがままに。
名は――要に応じて好きに呼ばわるといいよ。
うつくしく、凄惨な滅び…か。
ああ。衝動の行き先も来し方も、酷く狂おしい。
[少し間を置いて――ふと添えたのは相手への、]
…お前の笑い声は、骨鈴の音に似ているな。
[――――いつか呼ばわりに通じる、その欠片。]
女獣医のしろい手を、拒む供犠の娘。
長老は痛ましげな面持ちを灰色の髭の奥へと潜める。
皺に覆われた手は、ドロテアの背へ軽くだけ触れる。
『 …つらくなるだけ かもしれん。 』
『 だが いま一夜 名残りを――… 』
捧げられる女に惜しむものがあるなら、好きにと。
半ば老爺の願いの如く、その触ははかなく*伝える*
―自宅―
[小さな小屋には不似合いなほどの本の数。
読めるものなどこの村には一握り程度。
それでも、読めるもの達が本を借りに来ることもあるし、読めないもの達が文字を教えてもらいにもくる。
本以外は簡素とも言える室内の中。
二間しかない小屋の中、おくへと向かい。
人の目には余り触れさせない本を手にする。]
……さぁあて、どうしようかのぅ……
[ぱらり、机の上で開いた本の一文。
それを指先でなぞり、片手に持った杖をじゃらりと揺らす。]
[
トン
じゃらり
トン
じゃらり]
――ふぅむ……まあ、話をききにいくかのぅ。
供儀の娘を助けるすべはないようじゃしな……
[ぱたり、閉じた本はまた元通りに仕舞いこみ。]
―― レイヨの小屋 ――
[求道家と幾らかの言葉を交わした蛇遣いは、
温もりを気遣われてか二度ばかり煎れ足された茶を
飲み干して――謝意を表すとやがて立ち上がる。]
得られたものが、あるといい。
…なに、あたしは勝手に得ているとも。
[辞する挨拶とか、右腕をレイヨの肩へと伸ばす。
僅か身を寄せる仕草は、北では日常的な軽い抱擁。
そして離れ際――指先は、青年の緩い巻毛を一筋。
ぷつり 得るのは彼の淡いストロベリーブロンド。]
――こんなふうに。
[レイヨとトゥーリッキが席を立つには視線をやる。
マティアスの言と其れに返すトゥーリッキのやり取りはどちらに対してか物思うまま声は出さず。]
――まじないの力。
矢面に立たせるわけにもいかんが、情報は得たい。
というのは実に難しい。
[誰にともなく落とすのは率直な独り言。
思案しつつ炎を見つめる目は時折テント内の人間の顔と、長老、ドロテアへと移り、また元に戻る。]
[少しして立ち上がると、それでもすぐにテントを出る風でもなく、ドロテアに暫し視線を止めるもかける言葉もない。
哀れみも何も示さないのが自分なりの礼儀。
ただ一言]
――無駄死にはしないつもりだ。
[多くを語らず言い置いて、ふらりとテントの外。]
―小屋の外―
[じゃらり、杖を鳴らしながら小屋から出てくる。
冷えた空気にその身を震わせ。
白い息を吐き出しながらゆるりと眸を細めた。]
…――
[ゆっくりと雪を踏みしめながら、しんと冷えた空気に空を見上げ。]
死にたくはないのぅ……
[ポツリ、呟いた。]
―テント外―
[外に出ると、ふ、と白い息。
冷えた外気が触れる瞬間は僅かに肩をすくませる。]
狼も寒いんかね。
[落とす言葉は場にそぐわぬ些か呑気なもの。
さくりと足を踏み出せば、ビャルネの姿が見えようか。]
――何か"いい物"は見つかった?
[かける言葉は端的に。]
―テントの外―
[掛けられる声にゆるり、振り向く動作とともに杖がなる。]
ふぅむ。
見つかったとも言えるし、見つかってないとも言える……微妙なとこだのぅ。
まだはっきりとは言えんのじゃが……
[考えをめぐらせるように視線を村の中へと向けながら、静かにカウコへと言葉を返す。]
……それもそうだね。
悪かったね、変な真似して。
[供儀となる娘の頑なさには軽く謝罪を述べる。
そしてそのまま、テントを出た]
[テントの外には、自分と同じ容疑者である
情報屋と書士の姿。
事件の話だろうかと、2人に声をかけた]
おや、何の話をしてるんだい?
何か探し物でもあるのかい。
[今探さねばならないものと言えば――
アレに違いないのだろうけど]
/*
よーやく終わったあああ
ちょっと冷静になったよ!
なんかもう無事でよかったとしか
言えない現状だけど頑張ろう頑張ろう。
[2時間もいられない人間の言うセリフか]
――その音は、何とかならないもんかな。
[杖に対しそういうことを言ったことはないから、五月蝿いという意図はないものと知れようけれど、添える説明もない。]
本当に微妙な答え――だけど、
成果がゼロではないようだから、良かったのかな。
[問題ない、と言葉は添える。
見上げれば未だ赤いオーロラ。
目を細め数拍見つめるとまた視線を戻して。]
まだ、か――ドロテアを、諦めたくはない。
形になって、差し障りがなければまた聞く。
[ゆるやかな坂を登れば、村の灯がそれなりに目に入るか。
今しがた後にしたテントのあたりから、また一つ人の影が姿を現した。何人か、固まっているようだ。そちらには一瞥をくれるに留めて――オーロラの下に広がるタイガの影を視界の端に留めながら、ゆっくりと村の中を歩いている]
対するまじないを持つものは、三人。
何も持たざる少女は、供儀か。
[何か言葉を置いてくるべきだったのだろうか。
わずかながらちくりと、後悔の感触が胸を刺した]
[ウルスラの声にゆるりと振り返り、視線を向ける]
良い情報でもないかと想って、な。
[曖昧な口調は成果らしいものが得られた風でなく。
さりとて何もなかったとも言わない。]
のんびりもしていられないが、
ハキとした指針もまだ見つからない。
――迷子だな。
骨の鈴か。興味深い例えだ。
[笑い声は遠吠えの海に沈み、淡々とした声がオーロラの幻に揺らめく。
しばし黙していたが、ふと、思い出したように]
…あの供儀の娘を、お前はどう思う?
[静かに目を伏せ声という名の音をききます
狼の遠吠えと彼等の声、何が違うのかと過ぎる自問]
…お話は…理解いたしました。宜しく事が運びますよう。 何かことあれば、また。
[静かに下げる頭と静かに鳴る髪飾り。伏し目が見開かれることはなく。常から想う事も拓かれず]
供儀 ドロテアは、ここまで読んだ。[栞]
[獣医の声が聞こえればちらりと視線をそちらにも向ける。
杖の音について言われればゆるく首をかしげ。]
ふむ……まあ、――わかりやすくてよいだろうて。
[からりと笑いながら、どういう意図であろうと杖を手放す気はないよう。
じゃらり、と杖を持ち替えて、ウルスラとカウコを見やる。]
はっきりと言える様になったら――教えてもよいじゃろて……
まぁだ、不用意に口にはできんからのぅ……
[ドロテアについては一度口をつぐみ。]
あの子には可哀想じゃが……
――助けるには、まにあわんなぁ……
[重い口を開いた言葉は、白い息とともに*重く響く*]
[カウコの返事にはなるほどね、と頷いて]
いい情報……ね。
確かに「探せ」とは言われたけど
手掛かりなんて結局どこにもないし、
一人ひとりに尋ねてみたところで
無意味なのも分かりきってるしねえ。
こっちとしちゃまじない師に頼りたいところだけど
それさえ誰かも分からないんじゃ
どうしようもないさね。
―― 橇置き場 ――
[――坂の上には、木の橇が並んでいる。
ゆるやかな傾斜は、初速をつけるに適したそれ。
人探しの態で戻り来た蛇遣いは、帽子の男を見る。]
…また、外へ出たのか。
[長くテントの前へ佇んでいた、かの時を思う。
ほうとしろく漏れる吐息は、早や鬢の毛を凍らせて]
唄とでも聴くかね。幻燈とでも見遣るか。
[遠吠えと、極光。――今は嫌でも注意引くもの。]
[ビャルネの曖昧な物言いにも
気にする様子は見せず]
ああ、確かにホイホイと喋るのも
よくないんだろうね…今の状況じゃ。
[眼の前にいるのは味方かもしれないが
敵かもしれない。
慎重に動かねば、村は狼を操る者に
乗っ取られてしまうだろう]
言えるようになったら、
そのときはお願いしたいところだね。
― 小屋 ―
…僕は………
疑わしき者を排斥するより、少しでも…
信じる者の助けになりたいです。
[日差しの下で育った茶を飲んでから零す、同じ群れに属するか判じる事のない言葉は、トゥーリッキを疑う音を含めない。白蛇の名に対する言及には眼鏡をかけず滲んだ眼差しがお連れさんを暫く見て、機会があればと和らいだ声が添え置いた]
………
違うのに似ているのは面白いですね。
[からりと笑うに肩竦め、けれど手放せなどとは言わない。]
不用意に口にされたら、信憑性も半減。
情報は、そのモノだけじゃないし。
[誰を信じるとも誰を疑うとも定めず。
ドロテアに関して返る言葉には怒りも焦燥もなく]
…興味深いかね。
ひとつ、つくってみるのもいい。
[橇が並ぶ丘の上で、顔を合わせる。
身体の前へ毛皮をかき寄せ、俗な会釈をひとつ。]
据え膳。
[答えはごくごく、みじかい。付け足すに―――]
群れに喰わせるのは、惜しいな。
[ウルスラにはそうだな、と一言返してから]
尋ねてすんなり答えられるようでは困る。
が、黙って"いなく"なられても困る。
……まじない師が誰にどう素性を明かすのかは自由だが
明かす先を間違えられては光はない。
尤も、生者を見る者ならば結果から信を決めるだろうが。
[残り2つは事前に相手を信用する術はない。]
[助言について述べるトゥーリッキの言葉に耳を傾け、言葉の途切れるのを待ってから温められた呼気と共に零した感想。面持ちは少しだけ和らいで眼鏡をかけ直すけれど、揶揄する素振りがある訳もなくて]
僕は貴方が出来る方と仰れば同じ事を言います。
誰にも告げず在ればいいと想う。
僕の場合は助言ではなく懇願に近いでしょうか。
[自重せぬ声音が語る告白、手を伸ばし飲み干す茶は溜息と共に。問わぬ事を語られぬトゥーリッキの口元ではなく、鮮明な視界が見ていたのは―――…]
変わりませんよ、僕は。
[吐いた息はやはり白くて、赤いオーロラは禍々しく。]
まじない師は信じる者を見極める必要がある。
力を持たない者は、まじない師を信用させる必要がある。
[それは狼使いとて同じことではあるけれど。]
話をするだけでも何かのきっかけにはなるだろ。
……簡単に信じることも簡単に疑うことも
出来ない状況だし、な。
暖が在るのは有り難いが、気まずい空気は私にとって毒になり得るのでね。…ドロテアにかけてやる言葉も、見つけることは出来なんだ。
[首の周囲に巻かれたそれ。蛇使いの姿であることは、遠目にも分った。小さく――先ほどもそうしたように、己を嘲る笑いを、ひとつ]
唄、か。
そうであるとしたら、それは死を崇め、滅びを招く唄だな。あの光も同様だ。
何がこの地を支配しているのか、嫌でも思い起こさせてしまう。
[己の顎にそっと指を這わせ、声は幽かに沈む]
確かに。わざわざ、長老殿が我々のために用意して下さった娘だ。あれの死をもって、天の赤を雪の上に映す――…悪くない趣向ではあるな。
[狼達の遠吠えは、程無く歓喜のそれに代わるだろう。
――喰わせるのは惜しい。片割れの言葉に、声は少し揺らぐ]
ならば、お前が喰うか。
………
[奪われたくないと願うものは、トゥーリッキの指に絡む自らの髪ではない。抱擁に応えずも拒まず離れゆく身に伸ばす手は、顎のラインから白蛇の巻く首筋をたどる]
差し上げるはきっと、奪われるには足らないから。
貴方に奪わせてしまわないといいと…
杞憂かも知れませんが、そんな事を想います。
[カウコの言に、ふ、と息が漏れる]
難しいモンだねえ。
狼遣いとの知恵比べってのは。
まじない師に狼遣いではないと宣言されても
それが絶対に正しいとも言い切れないわけだしね。
…トナカイたちも気配に気づけない以上、
狼遣いを見破る足しになるのは
やはり人間の言葉、ってことなんだろうね。
向こうだって、そうそうボロは出さないだろうけど
何かのきっかけにはなるだろうし。
たぶん…性格、悪いんです僕。
[持て成し湯を足して足止めした客人へ、僅かに含めた囁きは確信犯たる。キィキィキィキィ―――去るトゥーリッキを見送るため、扉まで車椅子で添う間に零した囁き]
温かく過ごして下さい。
[向ける先は去る人物か首もとの蛇か、曖昧に。去りゆく背の失せてからも冷気が入り込むのも厭わず、暫し保と靡く紅いカーテンを見上げて]
…空気か。
確かこの地に住まいする、
大気の精霊はイルマタルと教わったが…
空気に毒を漏られて、難儀なことだろう。
言葉も情けも、今は時を奪うよ。煩うな。
[ラウリの自嘲を慰めもせぬ薄情は、先刻と同じ。
彼の口から、"支配"なる言葉を聞くと眉を顰めて]
それでも、みじかい夏の歓びに惹かれて
あたしはこの土地に居るよ。長い冬と闇の地に。
――なあ、ラウリ。
思い起こさせられたなら、お前は…
…否。そんなことが聞きたいのではないのだ…
[尋ねかけ、寒がりの蛇遣いは彼が辿る
顎の曲線と、帽子の鍔のそれとを重ね想う。]
そんな小洒落た帽子を年中着けているお前がな。
街へ住まずにどうしてこの地へ留まり続けるのか。
おそらくは、あたしが訊かずとも
誰かが訊くのだろうがね。…うむ。
今さらに、尋ねてみたく*なったのだよ*。
[ウルスラに緩く頷いて落とす息は白く]
誰かが自分を狼使いでないと判じても
それが本物のまじない師と妄信も出来ない状況だろうし
……人はそも嘘をつく生き物だから――違和感があっても
すぐに敵と直結しないのもまた厄介。
[前途多難だ。と笑えない冗談のように呟く。
やがてふるりと体を震わせると、退席の言葉もおかず、ひらりと手だけを振り一度自分の生活する*小屋へと*]
[長老がドロテアに触れ、言葉をかける様子を、男はやはり静かに見ていた]
……早く始末をつけなければ。
ええ。私がまじないを使えたとするなら。
使えないとしても。
わかっています。苦痛を、増やさないために。
[呟きの後、続けた言葉は村長に向けてだったが。己がまじないを使えるかどうか、明言はせずに。かけた首飾りに指先で触れた]
対たる遣い手殿は、
凄惨にも、趣向を求めるらしい。
――あたしが、貰おう。
[玲瓏たる声音が、応じて確と主張する。]
思惑通り、時間稼ぎをさせてやる代わりに、
そのぶん群れは飢えるというわけだ。…お前も。
「次」が愉しみではないかね?
夏が、好きなのか。
[蛇使いが村に留まった理由。思い出し、頷く。
しかし発した返答は、同意の響きを伴わない]
冬は長い。闇は深い。死は死以外の何物でもない。
……じきに慣れるだろうさ。その『じき』まで、村とお前が生き残っていればな。
[とりとめのない言葉を並べて、ごまかすように笑った。
消えた問いには、首を傾げるが何も言わず]
まじない師が本物かどうかなんて分かる手段は
ないものねえ。
偽物だったらまだしも。
[情報屋の言葉に、自然と形のいい眉が寄る]
……ある意味一番厄介なのは、人の心。
疑い心と、信じる心だ。
あいつらは、きっとそういう部分も含めて
利用しているんだろうね。
[手を振るカウコと別れ、ひとり空を見上げる。
そこにはいまだに不吉な血色の極光が*広がっていた*]
[帽子について尋ねられれば、思い出したようにその唾を掴んだ。
さあ、どうだろうなとはぐらかすように]
中々どうして、この闇と雪原は私を離してはくれなくてね……。
街に行ってしまえば、ここまで深い闇を感じることは出来ない。忌わしいものだが、同時に失えばとてつもなく懐かしんでしまうだろう。
洒落ているものと、美しいものは、違う。
[最後に放った言葉だけは、異質な音を纏っただろうか。
影に覆われてはっきりとしない足もとに視線を落とし、ゆっくりとその場から歩きだした]
[本から剥がした鞣皮を机へと並べると、
暖はそのままに、再び外へ出る準備を。
贄の乙女が捧げられるより先に奪われる一つの贄は、
まだもう少し先のこと。
不在の旨を隣人に伝えるべく声をかけ、
使者なら言付けを、そうでない者であれば探せと伝える。]
逸れ狼を威嚇しながら歩くから、
すぐ見つかるでしょう。小さな村だし。
それに私も容疑者の一人だし。
情報集めないと仕事にならないわ。
それに――
本当なら、さっさとこっちの身元明かして、
呪術者の首根っこ掴まえて。
ガチンコ勝負したいんだけどね。
そうも言ってらんないでしょうからね。
ドロテアのこともあるし。
[溜息混じりに洩らす本音は、隣人にのみ。
一通り吐き出すと足許凍る最中、
人の気配と何かを探しに。]
そうか。
[確として響いた声に、静かに同意する。
群れの歓喜が、そして飢え。意識せずともそれが強まっているのを感じられる。
それは――己の歓喜と飢えでもあるのだから]
…素直に、愉しみに飢えておくとしよう。
より明瞭に、「死」の存在を感じておくためにも。
[テントの外で一人言]
人は人で、在る様に在ればよいのにね。きっと狼達もそうあるだけなのだもの。こう想う私はおかしいのでしょうか。
でもどうか、大事となりませんよう祈るのみですわ。ドロテア様も、お望みになられるまま──
[言葉に滲むものを読み取る人は誰も居らず。ただ足元に残る足跡だけが、軌跡を刻むのみ]
あぁ、何方か…。
[私を諫めてくださらぬか、と。どうやらまだここには馴染めぬ様]
皆と過ごす、夏がな。
[補足して、一度口を噤む。
ごまかす、はぐらかす――
然し隠さぬ素振りは確かに返答で。
異質な音ごとに、蛇遣いは眼差しにやや険しさを
混ぜて影引く男を見詰めていた。離れゆく*背も*]
そう簡単に名乗り出るものが……信用に値するかというとまた、難しいからのぅ。
[情報屋と獣医のやり取りにぽつりと言葉をこぼし。
じゃら り 杖を鳴らして、緩やかに二人を見やる。]
まあ……娘の命で購う時間を有意義に過ごさねば、の……
[小屋へと向かう情報屋の背に言葉を返し。
獣医へとちらり視線を向け――]
疑うはたやすく、信じるは難しい……昔から言われることじゃからのぅ。
おぬしも、信じるものを違えぬようにな……
[ひとつ、告げる忠告は果たして間違えるなという意味か、裏切るなという意味か。
女がどちらと聞くかは知らぬまま、その場を離れてゆるりと歩き出す。]
[さくり。雪を踏みしめ。
じゃらり、杖を鳴らしながらゆるりと向かう先。
どこと決めぬまま、オーロラの赤い光に眸を細めながら村の中を行く。
さて、視界の先には――[供儀 ドロテア]が見えるだろうか。]
[村の女集がよく集まる小屋が見える。
贄となった娘も、足を運んでいただろうその場所に、もうくることはできない娘の影を見る。]
ほんに……助けられるものならのぅ……
[悲しげな呟きをひとつ。
ゆるりと首を振ってまた、歩き出す。]
―― 森の中 ――
しまった。ひと探しがひとを遠ざけて如何するの、私。
寒い中出てきた意味が無いじゃない!
[物思いに耽り、たどり着いた先は雪積もる森の中。
音は白い世界に包み込まれて気配すら聞こえない。]
ま、いいわ。捜し物もあったし。
少しでも崩せる手がかりが見つかるといいんだけど。
[オーロラの色すら隠す木々の間で、
暫しその時間をやり過ごす*こととした*]
ああ。
飢えに悶えて、歓喜に焦がれていろ。
[歩みゆく背の主を見送る眼差しは、険しい。
けれど口元は確かに、確たる声を吐いた儘に在る。
身の裡へ、いのちを抱き取る時を想うあわい笑み。]
「未熟なまじない」とやらに*留意せねばな*。
お疲れ様です。突然の失礼にお詫びを。
このような空に、つい。
特に用などございませんのでしたけど。
皆様がドロテア様をとてもお気遣いされて、少し心配にもなりました。
私も気にかけなければなりませんかしら。
[伏し目がちな目はしっとりと帽子の男を見やりつつ]
/*
ウルスラをアルテマと打ちたくて仕方がありません、
せんせー。
まったく持って誰とも絡んでません。
ぬっちゃけ占い師で初回吊とかありそうで怖いなぁ。
(←実際委任ランダム票炸裂で吊られた人ww)
自分占い師になると早期COしたくて溜まらんのよ。
「占い師何処ダー!!」って思うから。
いや、護っていただかなくても結構ですよ。
むしろ守護は他のところを護るといいと思うよ!
/*
あ、ミカちゃんに
「呪術師を探し当てるのと同じ位に、
仲間を見つけたいと想う事は、罪かしら?」
って聞くの忘れたorz
まぁいいや、どっかで聞けるだろう。
てか←、ひとを信用しなさそうなんですけどー。
ちなみに崩せる=相手の呪術師の結界
あったらいいな。
ヘイノは未熟者なので結界は張れません、多分。
相手のことがわからないので、深入りはしない。
みんなとの約束。
贄の娘だからな。
明日、どうなっている事か……
[ドロテアの名に、瞳をわずかに伏せる。
心配になってしまった――イェンニのその言葉に、小さく眉をよせて]
気にかけるも、かけぬも。それは、自由というものだろう。…亡骸となってしまったのなら、祈るべきだとは思うが。
[じゃらり、杖をならしながら歩く先。
特徴的な帽子の男と、他に一人、いるのが見える。
ゆったりとした足取りで近づいた。]
[ラウリとイェンニの近くまで来れば、足を止める。
じゃらり、飾りを揺らしながら二人を見やり。]
ふむ、話の邪魔をしてしまったかのぅ……
[ゆるりと眸を細めながら問いかける。]
妙なことを、申し訳ありません…
お気に障られたらお詫びしますわ
[気遣わねば、悼まねば。あぁ疑われてしまうのでしょうか、とは言にせず]
新参者故良案も、供犠にどのように接すればも、わからぬのでございます。
あぁ、そうしたほうがよろしいのならしますわ。
[空虚な祈りでも、それで疑われぬのなら]
貴男は今もお悲しそう。ごめんなさいませ。
粛々としていれば良いのだ。
聖なるものの扱いが、共同体によって大きく違うとは――あまり、思えない。
[疑いの目が互いに向けられている。
女の言葉の端々から、今己が置かれている現実を垣間見ざるを得ない。
深く、白い息を吐いた]
悲しい?
…そうだな、哀しい。無力な娘が奉げられ、狼は村を取り巻き、夜が明けることもない。
[何度か頷きながら、イェンニに同意する。
あやまられれば、小さく首を横に振った]
[使者として比較的厚い信頼を受けている男であっても、容疑者だというのには変わりない。長老から向けられる視線には、水底に沈んだ泥のように密やかに、疑いの色が混じっている。
それを見て取っても、男は顔色を変えもせず、多くを語らず、常と同じに憂えたような表情をして、テントの中に腰を落ち着けて*いた*]
[聞こえたイェンニの言葉にちらり、視線を向ける。]
思うまま、接すればよかろうて……
こまかなしきたりなどは失われてきておるしのぅ。
このような儀など、いったい何十年ぶりやら……
[ふう、と僅かに息をつく。
話しているほうがという帽子の男にふむ、と呟き。]
一人考え込むよりはよいかもしれんのぅ。
気の滅入る狼の遠吠えはやむことがないし、の。
[遠く、響く狼の声は、こうして話している間にも。
時折空気を振るわせる。]
[無力だから供犠となるのではないのかしら。
それを悲しむのならなぜ身代わりとならぬのか]
…さようで。
狼を神の使いと信仰した時期もございました故に
どうにも狼の声は心地よいとしか。
やはり申し訳ないのですわ。
信じられるものもなければお一人で考えられていたほうが楽ではございません?
たとえば…私が貴方方をそそのかしている、とか。
[二人へ向ける伏し目がちの目から感情は読み取れぬ。淡々と紡ぐ声に偽りはにじまずとも]
狼が、神の使い?
――同じモノを見るのでも、抱く念は共同体によって違うという訳か。
[興味深いな、と付け加えて己の顎をなぜた]
そそのかす。
……成程、気がついたら私はいつの間にか狼の群れの中に放り込まれていると、そういう訳だね。
確かに、それは……難しい問題だ。いや、全く、困ったものだ。
[言って、からから笑った]
一人で考え込んでいては、信じられるものすら見つけられぬだろうて……
わしらは身の潔白を証明せねばならぬが、信じられるものをみつけることも大事なことだからのぅ。
[伏目がちなイェンニに静かに答えながら、ラウリの言葉にふうむ、とうなずく。]
そうさのぅ……それが自然な流れであれば逆らうこともなかろうて。
[文明の>>114という言葉を否定することはない。
じゃらり、杖を鳴らしながら村の外へと視線を向けるように遠くを見る。]
まぁ……狼を操るものの意図がなんであれ、今の状態では……
あれを聞きながらすごすしかないからのぅ。
それもまた、仕方のないことなのじゃろうな……
[力なく呟き。
ひとつ、首を振って]
わしは一度小屋に戻るとしよう……主らも、話があるなら遠慮なく来るとよい。
[短い言葉を残し。
じゃらり、と杖を鳴らしながら二人の側から歩き去った**]
違うようですが…郷に入れば郷に従え、今は疎ましい存在としております。ご心配なさらないで。
[笑う帽子に、表情は変えずとも]
今の様に笑っていただけたのなら、信仰を変えた甲斐があったというものですわ。
私は在るべき理由に抗うことなく生きとうございますが…今はせめて、ビャルネ様やラウリ様がお健やかに休めることを祈りますわ。
狼を操る者の意図、か。
……。
[瞑目する。考えても、狼の遠吠えが耳に響くばかりだ]
ああ、機会があれば遠慮なく寄らせていただくよ。
有難い。
[響く杖の音に僅かに口元を緩ませて、去る書士の背を見送った]
/*
男女が不明なキャラが……
イェンニは女性なのか? うっかり男性かと思いかけてt……
ヘイノは男、だよなあ……
口調で悩むぜ!
さすがにウルスラとトゥーリッキ間違えたらおこられるwww
さあて、寝よう。寝る時間過ぎてしまった……
おやすみなさい
ああ、そうだな。
今この瞬間に限っては、そうしておくのが正しいだろう。
[郷に入り、従う。従わなければ疑念の大口を開いて待っている]
だが、――……。
いや、今はやめておこう。すまない。
[瞳を伏せて、言葉の端を濁した。疑われているのは、己もまた同じなのだ]
その祈りに、私も感謝を。
そして君も、心安らかに過ごさん事を。
[そう言い残して、彼もまた歩を進める]
あぁ、ビャルネ様はつまらないことでお時間をとらせてしまいました。申し訳ございません。
どうやら私は…まだ皆様を信用出来るほど、こちらに馴染めておらぬようですわね。よくして頂いているのに、申し訳ないことです。
[閉じられた瞼の奥に宿る瞳は何色か]
しかし…仕方ないで済ませられるとは殿方とは随分悲観主義でいらっしゃる。どうかあまりお情けないことは仰らないで。
[緩やかな言葉の影にちくりととげを一つ。
ビャルネの言葉にはただ頭を下げ]
ありがたく…。お茶などご馳走になりますわ。
[そのまま、さらりと髪を靡かせると、ラウリにも会釈だけをしきびすを返す*]
供儀 ドロテアは、ここまで読んだ。[栞]
― 小屋前 ―
…………
[トゥーリッキと過ごす時から得たものを、本人に語らず胸裡に仕舞うまま。温まった小屋から熱の逃げていくのも厭わず、閉めぬ扉を背に狼の遠吠えを聴いていた]
ないてる…
[思索の零れる如き呟きは確認めかず、冷えた大気を白く染める事もない。紅いオーロラへ彩られた夜へ顔を向け、既に一度は曇り冷え切った眼鏡の奥の眼差しを細める]
…わらえないな。
………
[緩く首を振る動きに連動して項垂れると、足元へ落とす視線。膝掛けから覗く足先の向こうには、今は溶ける事のない雪と氷に覆われた地面―――車椅子の車輪の跡とトゥーリッキの足跡が残っていた]
ふたり…―――
[長老のテントからの道のりを眼差しだけが逆になぞり、その先にひとりきり捧げられた供犠の娘の口元を想い細める。キィキィキィキィ…―――小屋へ引き返し扉を閉めても、止まぬ狼の遠吠えは*聴こえた*]
[小高い丘の上から、雪原を眺める。
――獣達の包囲は相変わらず。腹に据えかねるのか、
トナカイ追いの犬たちが時折控えめにも吠え返す。
飼い主が慌てて静かにさせるのは、恐れのためか。
蛇遣いは、身体の前で毛皮をかき寄せ眉を寄せた。]
『出来ぬこととて、想いは』――
[…ほう。レイヨの言をなぞる呟きにつれ、吐息。
極夜の日々の「朝」は、総てが蒼く、蒼く染まる。]
想うと焦がれるは、似ていて違う…と言っても。
嗚呼。果たして面白がってくれるのだろうかね?
面白かったとしても、あたしは――
[毛皮の下のしろい大蛇を、片腕は庇い、抱く。
無意識にも恐らく相棒が蒼く染まらぬようにと。]
…そう、わらえないな。
[さくり。足は雪を踏み分けて丘を下りだす。
背後に並び在るのは、よく手入れのされた橇。
曳くトナカイも犬も、今は狼に怯え繋がれず。]
…? 誰と話した?
[群れからはぐれた仔トナカイを一頭、自身へ
通じる狼に襲わせながら、対たる者の驚きを聴く。]
ひとは、己の裡にすら神を見出すよ。
"我々"とは…我々かね。それとも、おおかみ?
[それから顔を贄となる少女へと向け
ゆっくりと長老の方へとずらした。
見えぬ視界の中、顔を向けるのは昔の名残であり
何かを感じ取ろうとする其れやもしれず]
…カウコは、賢いな
[ぽつり 呟いて左脇に置いた杖を握る。
ゆっくりと立ち上がる影が、炎の近く
大きくテントへと黒くうつった]
…長老殿――俺は、あんたを裏切らない。
其れだけは「絶対」に、だ…
[低い声で、皺深き老人へと向け言葉を渡す。
其れは誓いの言葉であり、ひとつの縛]
――孫より群れを取ったあんたが、本当はどれ程…
…多分、俺は、知ってる…――――
[それからドロテアの方へと手を伸ばす。
彼女が男の視界を気にして手を差し出すとそれを取って引き、顔を埋めるようにして、彼女の手首の内側をちろと舐めた]
[彼女の表情を見る事は出来ない。
男は飾り気無き杖を手に、
テントを出ようと足を踏み出して]
…――また、此処に戻る…
[低く告げ入り口を捲くれば冷たい風が吹き込んだ。
ヘイノと対照的に、この地に置いて薄着な方、開いた首元にびっしりと鳥肌を立て、宙で凍る程の息を吐いた]
― 小屋 ―
[カタカタカタ…―――木の根をすり潰す作業に、一本だけ脚の短い机が立てる音。出来た物を移し変えて、似たような容器の横に並べる]
………
ドロテア…
[供犠の娘が今ごろ何を想い何をしているかは知らずも、彼女と引き換えに与えられた時間は過ぎていく。躊躇いがちに手を伸ばす容器は薄く埃を被り、長い間触れられていなかったもの。
中にあるものを自らに言い聞かせるように容器をなぞるだけで、前髪の奥で眉根が寄る。蓋を開ける事もなく手を離すと、容器には手指の跡が残った]
[男が歩いた後は、杖を左右に振りえぐれた雪の跡に足跡が重なる為、まるで模様のようだ。
視界無き男は冷たい空気を進み、向かったのは車椅子の男の小屋。
さくり、さくりと小さな音を雪に染み込ませ]
…――
[小屋の前、どう声をかけるか暫し迷う態で立ち尽くす]
…………
[やまぬ遠吠えと焔の燃える音に混じり、足音が近づいてくるのに扉に顔を向ける。テントでの発言から誰か来るかもと意識していなければ、遠吠えにまぎれて聞き逃していたかも知れない。
かけられる声もなく扉を叩く音もないのに、トゥーリッキとマティアスの会話を思い出しもする。中の様子を伺っているのかと、扉を見る間]
開いてます。
宜しければどうぞお入り下さい。
…こんにちは、も、こんばんは、も
変かと思って…――
[かけられた声に、言い訳めいた声音を返し
杖でコトリ、小屋の入り口に触れてから手を伸ばすと
そっと入り口から足を踏み入れた。
薄着の肩には、煌く雪がへばり着く]
――ひとり、だろうか?
[気配は感じないけれど、確認の言葉]
………そうかも知れません。
[扉の向こうから届く声を聴けば、先に思い出していた人物。けれど寒い外に立っていた理由を疑うでもなく、なんと挨拶するべきか同じく思案して結局は同意だけ示した]
ひとりです。
道中ですれ違われなかったなら…
テントに戻られたのでもないのでしょうね。
温かいお茶を煎れますから。
火の傍へどうぞ。
[見るからに寒そうな装いのマティアスに火の傍を勧めても、殊更に手を引き助ける事はせず。キィキィキィキィ―――来訪者を迎えるべく、茶を煎れながら誰とは語らずもトゥーリッキの事も添えておく]
…すれ違っては、いない。
[レイヨの言葉に頷くと、杖を左右に動かして床を確認しつつ歩みを進める。
茶の匂いと相手の匂いにひくと鼻を蠢かせて
そっと手を伸ばし冷たい壁に触れる]
ひとつ…――聞きたい事があって、来た――
…そうですか。
[話題に上るトゥーリッキの時と違い火もあり、先に沸かしたばかりの湯はまだ温かかったから茶の出るまでの時間も短い。キィキィキィ…―――車椅子は壁際のマティアスに近づき、口を開こうとしたところで先に言葉をかけられた]
何でしょう。
僕に答えられる事でしたら。
…お茶です。
[断ってからカップを渡そうと盲目の彼の手を取ると、外気に冷やされ少なくとも表面はつめたい。温める役割は茶に任せ、彼の手にカップを収めて手を放した]
[マティアスがテントを出ていくのを見送る。やはり、声はかけず。眼鏡を取り、コートの広い袖で無造作にレンズをぬぐった。かけ直すと、中指でブリッジを押し上げて。
汝も行けばいい。そう長老に言われたならば]
いえ。今は……
考える以外に、するべき事もありませんから。
問われなければ……
[伝達以外で、男から誰かを訪ねる事は――少なくとも今は――ないと。潜めた意思を乗せて返し*]
……伝えるべき事が、ないのならば。
[手を取られぬくもりを渡されると
包帯の下で僅かに頬が緩む。
うん、と頷き壁に背を預けると、一度其れを啜り
ず、と音を立てた後、顔を上げ]
「贄」の代わりと言い出した者はいないか、
そう――…、言った…――のは。
…お前で…間違いない…か…?
[問いの最後迄飲み込む事をしなかった低い声は
普段から饒舌とは言いづらい男の喉を奮わせた]
― 小屋 ―
[殺風景な空間にはいくつかの工具のようなもの。
部屋に火を入れ、暖をとろうと湯を沸かす。
過ぎるのは供儀となる娘のこと。
想うことはあれ、口は開かず火を見つめる。]
―――。
[暖まり始めた室内で少し気が緩んだか帽子を外し椅子に座って暫し目を閉じる。
トゥーリッキが付近に居ることは知らず、眠るように。]
…………
[キィ…―――マティアスが言葉を続けるより先に茶を啜るなら、急かす素振りもなく車椅子を少しだけ引く。トゥーリッキの分と一緒に煎れた自らの分の茶は冷めていたから、眼鏡の曇る事はなかった]
………そうですね。
僕は皆さんにそうお訊ねしました。
[到着前の事まではわからずも、周囲の反応からはその話題が出ていた印象は受けなかった。低い声の紡ぐ確認めく問いに、肯定を返すのは折と同じく静かな口調]
どうしてですか?
――何か「量ろうとした」のか…?
それとも「それ」を…自分が言い出そうと、した、のか…
…―……、
[こくり 喉が一度鳴る]
………――言えん事は言うな。
言えるなら…――聞きたいと、
[思った。
背に壁の冷たさを感じながら、男は相手の周りの
見えぬ世界を、全身で感じ取ろうとしている]
[ゆるりと目を開く。]
出来ることを、出来るヤツがすればいい。
ドロテアは――無力じゃない。
[慰めととられるを厭う想いもあり、当人には言わない。
それは単純に、本心からそう想うだけ。
ふ、と息を吐いて沸いたらしき湯で茶をむらす間、扉を開いてみたなら近いか遠目にかトゥーリッキが見えただろうか。
彼女が鼻をすすっているようなら目線だけで招くが相手次第と強要の意志はなく、扉の鍵は掛けずまた部屋に。]
[目の見えぬ彼に対して声で応えず、沈黙に瞬きだけ添えたのは、意識の半ばを問われた内容に対する思索に向けていたから。冷めた茶を啜る間も、彼を見ていた]
…ありがとうございます。
[開いた口から最初に零れたのは謝辞。カップを机に置くのは見えずも、カタと言う机の揺れる音は彼にも聴こえただろう]
ひとつには、皆さんの反応を確かめさせて貰いました。
もうひとつには、叶うなら―――…僕が代わろうと…
結局のところ叶いませんでしたが。
でも叶わず安心したのも確かなんです。
ひどい話です。
……そう、か。
――、
[こくり
頷くと、耳のプレートが揺れた。
口の中で、ありがとう、と添えたのは
答えてくれた行為そのものに対してで]
…いや…それが「ひどい」なら、
――それを黙認する群れの人間すべて、
同じ…――だ。
[長老に対して大きく抗議をする者は無い]
―― カウコの小屋 ――
[――招かれる。
二軒目は、目の合ったカウコの小屋。
少し迷うように視線を動かすと、胸裡に探していた
イェンニは、ビャルネの後ろを歩いていくようす。
蛇遣いは後ほどと自らに頷きカウコの小屋を訪ねた。]
とりあえず、戻った。
…レイヨは性格がわるいらしい。
[畏まらぬ間柄。戸口で霜を払いながらの報告。]
…………
[謝辞に籠められる意は互いに口にはせず、受け取るのは目礼だから彼には見えないのだけれど。見上げるマティアスの耳元で、トゥーリッキの呼ばわる49のプレートが揺れるのに、眼鏡の奥で眼差しを細めた]
―――…
そうなのかも知れません。
[…残酷です、と零す声音は独り言めき、マティアスや群れの者たちを詰る響きはない。曇りもせぬ眼鏡をはずしつるの端に歯を立てながら、滲む視界に彼を捉える]
…僕からもひとつお訊ねしていいですか?
[レイヨの問いに、こくりと頷く。
見えぬ視界のまま顔を彼へと向けるのは、
次なる言葉を待つ様子で]
…茶の礼くらいの答えが返せるといいが…――
[男は男なりの冗談と気の遣い方で
片手に握る温い飲み物のカップを口元へと運び
音を立てずにひとくち、飲み下す]
[訪れたトゥーリッキに視線をやり、蒸らせたらしいお茶を移し替え、戸口から聞く報告にきょとんとする。]
はぁ? なんだそりゃ。
意地悪でもされたのか?
[情報集めは望めども個人の性格を報告されてあげた声は少し間の抜けたもので、緊張もあまりない声は冗談半分。
相手の装いが落ち着けば椅子に促し茶を出す。]
うむ。
せっかく珍しくお前が茶を出してくれたのに、
入りそうにないほど茶を振舞われてしまった。
[勧められる椅子へは、目礼と共に腰を下ろす。
人相のあまりよろしくない男の手から、茶を貰い
温もりばかりはいただく態で両手で緩く包んだ。]
告白と言えば、告白かもしれん。
…普段は吐いてくれなさそうだ。
[指先を唇の端へあて…真横へと滑らせる仕草。]
迂闊をすれば、ドロテアを出し抜けるかと
思ったのだがね。うまくいかんらしいよ。
たまたま自分にいれたものだったから問題ない。
[珍しく出したお茶には悪びれもなく告げて、むしろ茶で良かったな、と人の悪い笑みくらいは見せる。]
告白……?
何か実の在る話でも聞けたか。
[状況が状況。即座に内容を問うことはせずも、知りたい意志は隠しもせず。]
――ドロテアは、ドロテアの出来ることをする。
それがどんなに残酷でも、奪ってやるな。
[苦笑とも何ともつかない曖昧な笑みはトゥーリッキへ。]
お茶は寒い中で足を運んで下さった分です。
―――…、………
[マティアスの気遣いには幾らか穏やかな声を返すも、肯定を示す頷きと視線こそなくも向けられる顔に、問うと言った割りに長い沈黙。問う内容は定まれど言葉を探す間を置き、眼鏡をかけ直し瞬いた]
差し支えなければ…
その数字の意味を。
そいつは、どうもね。
[蛇使いは、自ら唇へ触れた後は決まって舐める。
大蛇を踊らせる笛を吹くための唇を確かめる癖。
カウコの悪めかす笑みには、酒がいい、と真顔。]
誰にでも実のある話かというと、そうでもない。
…レイヨも言っていたよ。
あたしに『奪わせてしまわないといい』、とね。
[外気に冷えたこわばりを解すように瞬きは遅い。
笑みを使い分ける知己の曖昧を聴いて、容れはせず]
[茶で温まった体を覆う鳥肌は既に消えている。
レイヨの言葉に男はピクリと動き、
それから訪れるのは、――長い、沈黙。
レイヨが問いを投げる前の、ゆうに二倍。
耳で揺れるプレートは、引き千切ろうと思えば出来るもの。
だが男はずっと、最初から今までそれをせず、ただ耳元に目立つそれを揺らしている]
…――此れは、
[若しレイヨが言葉を発しようと息を吸ったならそれに重なるように。
低い声は冷たい空気の中、波立てず発せられた]
俺の――…「名」であり、
…俺の存在を赦すもの、だ…――
――ドロテアは、ドロテアの出来ることをする。
…そうして、あの娘を
我々が無力にするのではないか?
密かにでも奪わぬなら、それしか出来ないと
突きつけるようなものじゃないかと―――否、
[激さずとも豊かな感情は、他者へ伝わるに易い。
声音の芯へ籠る力をふっと抜き、蛇遣いは詫びた。]
すまんな、やつあたりだ。
[見慣れた癖はただ見つめるに止めて、酒が良いと真顔で言われれば、零すは嫌味のない苦笑で。]
ウォッカなら。
[相手が本気なら茶をすすりながら棚を親指で示し、飲めばいいというスタンスは相手がトゥーリッキだから。]
――少なくとも、お前に実のある話だったなら
"危険"を冒す価値はあったわけだ。
[個室に二人。それは今も同じ状況。]
それが俺にも実の在る話なら聞きたいところだが
そうでないなら、しまっとけ。
[椅子に背を預けてお茶をまた一口。]
[ドロテアの話には黙って相手の声を聞く。
目をそらすことは決してしない。
詫びる相手には 構わんさ と添える声音は柔い。]
どうにか出来るなら、どうにかしている。
――が、代わってやることは出来ない。
[長老は言う――ドロテアにはまじないに関わる力はなく、狼使いの可能性もない人間と。
それはつまり。]
まじない師の延命。
――"暴虐を阻む"力を、命を対価に行使するに似ているな。
……無論、諦めたくはない気持ちは、ある。
[長い沈黙を急かさずも無理に問う気はないから、口を開きかけたところで低い声。語られる間はマティアスの顔ではなく、耳元で揺れる飾りを見ていた。
浮かぶ疑問もあれど問いはひとつと先に断ったからか、告白を添えてくれた彼に更に問う事はしない。彼が語り終えてもすぐには言葉を返さず、眼差しを細め小さな告白を裡に反芻する]
…お呼びする名、今は変更せずおかせて下さい。
お訊ねしておいてすみません。
[マティアスの両耳にかかる重さを想えど、語らずに仕舞い置く。キィキィキィ…――謝辞は紡がず、彼の手の中のカップへ注ぎ足す温かい茶に籠めた。
視線の交わる事はなくも、交わす言葉があれば訥々と語る声。彼が小屋を出る折にはアルマウェルはまだテントにいたか問い、薄着の彼へ膝掛けを*差し出すだろう*]
…うむ。次に貰うとする。
[示された棚、酒瓶の位置を覚えると確とうなずく。
何しろ今はレイヨの茶で腹が膨れていると素振りして手にしたあたたかなカップで寛いで暖を取っている]
そんなところだな。
因みに、今は"危険"を冒してるつもりはない。
[歓談には遠い状況下、過ごすひとときは静か。
ドロテアについて想うことをカウコが語る声へと
蛇遣いは耳を傾けひとつふたつ相槌を挟みもする。]
ちから、か。
…… ああ。気持ちは無力ではないはずだな。
ドロテアのも…お前のそれも。
もしも、だな。
もしも袂を分かつことがあるなら、カウコ。
[やがて彼のもとを辞する折には、
ひとときの暖と時とに礼を伝えて。]
先に一発入れさせてくれる
くらいのサービスは、――あるんだろう?
[戸口で少し押し黙ると…笑まず軽口を*叩いた*。]
…「名」とは、只個体を識別するものだ…
――俺と分かれば、何でもいい。
[盲と呼ばれようがザトウと言われようが、自身は注意を向けるだろう、と、想う。
ただ存在を赦される、それに男は温もりを感じるから]
…――謝る必要は、無い…
[足された温もりを感じ、顔をそちらへと向け
彼の細めた眼差しは見えぬけれど、それは今鋭いものではないのだろう、と男は推測していた]
[それからいくつかまた言葉を交わし、茶を飲み干すと
男は杖を片手に扉へと向かおうと床を擦る。
そして、掛けられた声と手に]
――アルマウェルは、居た。
…――有難う、此れは、…
[暖かい。
語尾消す癖の侭、外へと出た。
暗い常なる夜の中、冷たい風が頬を叩く。
細かい雪がキラキラと紅いオーロラと共に光る中
男は左右に揺らし雪抉る杖の先と足跡を着け、
遠吠えの中、何かを探すように―― あるく*]
[次にと告げる声にはゆるく頷き、続く言葉に一言。]
……――奇遇だな。
[本当にその一言だけを返す。
気持ちは無力ではないと告げる声に僅かに表情緩め]
そう言われると、救われる――主に俺が。
[口元は笑んで見せるも複雑さは消えない。]
[それから多少の会話はあったか、やがて席を立つトゥーリッキの言葉。ifを語る間には口を挟まず聞き]
そりゃ"どっち"の前提だ?
[笑まぬ軽口には冗談めいた――けれど単純でない問いを投げ]
――其の時は、一発と言わず腕の一本くらいくれてやる。
が、腕は惜しいし不利だからそうならんことを願う。
[軽口の声音には笑み含ませて。
相手は何か言ったか、部屋から去った後には片付けを始めてぽつりと落とす独り言に憂いは*含ませず*]
ちっとばかし無防備かもな、 …お互い。
[狼の遠吠えが聞こえる。耳を打つ。
あてもなく歩くときはいつもそうするように、瞳を伏せて雪に足の痕をつける。
片側には村の灯、もう片側には森の影。極光の下伸びた影が、揺らぐ]
信用、か。
疑いがかけられた時点で、信用も何も無いだろうと思ってしまうのは――流石に薄情だろうか。
[受け止められる先のない言葉は、静かに宵闇に溶けて]
――いや。
漂白の民と、少し。
[対なるものの声と共に、一つの魂が死に招かれたことを知った。
小さく苦笑しながら、付け加える]
お前も、流れてきたのだったな。
私はこの地しか知らぬ身であるが故……
[言葉を濁してから、かけられた問いに答えた]
『おおかみ』、さ。
――だが、私の心は常に狼と共に在る。
[ざりざりと音がなるのは、杖が左右に雪を掻くから。
その後を、ざくり、ざくりと足音を立てるのは、小動物等が自身を避けるを期待しての事。
視界無き男は、ふん、と鼻をひくつかせる。
歩いて来たは、森近く――]
…――、
[誰かの声が聞こえ、足を止めて顔を向ける。]
…む。
[ざり、と雪をかき分ける音。振り返ると、杖をもった人影がそこに居た。
杖から音は聞こえない]
やあ、君か。
奇遇だな、こんな所で。
[眼帯の男。己の所在を伝えるべく、はっきりと声を出した]
ラウリ、か…
…何か、していたら…
――…邪魔、したか…――?
[針葉樹の匂いが冷たい空気の中キンと鼻をつく。
声の主の、洒落た帽子も見る事は出来ない男は、さくり、雪に杖を刺して首を傾けた]
[雪は音を奪い、光源を与える。
それでも時折響く遠吠えに、]
うっさいわね! ひとが考え事してんのに、
少しは気遣おうとか思う気はないのっ?!
今度吼えたら焼肉にしてやるんだからねっ!
[遠吠え以上の大声を出し、制する人影が一つ。
言葉の効力かそれとも他の何かか。
少なくとも森に響く忌々しい獣声はぴたりと止む。]
はぁ、それにしても"あれ"は見つからないわ、
ひととは会えないわ、意図が解んないわ、最悪だわ。
一体狼操って何をしたいのよ、ボンクラ共は…。
[煮詰まったのか。ぼすりと音を立てて地に横たわる。
その横を好奇心の強い小動物が駆け寄り、
無遠慮に服に潜り込んだ。
強い警戒を解かせるものは、身に纏う匂いか
はたまた別の何かか――]
時間稼ぎ、ねえ…。はぁ、合理的かつ的確に、か。
となると、やっぱり目星つけていかなきゃなんだけど…
はぁ…、
[服の中に潜り込んだ客人を招き寄せて手のひらへ。
ぼんやりと見つめては呟きは続く。]
言葉を持たぬこの子達のほうが、
ずっとストレートなのにね。
それは操られている方も同じでしょうけど。
…センセーに聞いてみようかしら? 狼の特性。
アプローチを変えたら少し見えてきそうな気がするのよね。
"こっち"の方では探れないし。
[がばりと起き上がると、森の住人に別れを。
大きなスノーエンジェルを残してひと気のある方へ。]
―自宅へと続く道―
[雪景色の村の中。
じゃらり、じゃらりと杖を鳴らしながら歩く。
イェンニやラウリと分かれてからしばらく村の中をうろつき、村人に声を掛けられれば応えていたために、意外と時間がかかってしまっていた。
この雪の世界になれているとはいえ、冷えから逃げれるわけでもなく。
凍えた体を温めるために、一度自宅へと戻る。]
…いや、邪魔ではない。
むしろ、いろいろと持て余していたところでな……気がついたらこんな所に来てしまった。
[首を傾げる彼に、頷いて答える]
君こそ、何かしている最中ではないのかね?
しかし寒い! 寒すぎるわ!
ひととも話したいけど、何より寒いのよ!
[ずぼずぼと近道をしたのだろう。
積雪に大穴を空けて立ち去った姿に、森付近の人影は見えず。
いや、見てないだけかもしれないが。
そんな視界の先に一つの影。]
――ん? あれって…ビャルネ?
捕獲…できるかしら…?
[寒さに背を丸め、杖を鳴らし歩く姿を発見。
あわよくば暖と会話、二つの利を得ることが出来る。
此処からだと明らかに自宅に戻るより早い。
ごくり。喉が鳴る。
驚かさないように足音を沈めて近付き――]
いや、俺は、別に…
[何も、と。
語尾を飲み込みつつ、相手の様子を窺うように顔を向けた]
…お前は、何か…
――考えて、いる、か…?
[策を、それとも。
また語尾を臓腑に落とし、問いをひとつ置いた]
―自宅前―
[じゃらり、じゃらり、杖を鳴らしながら歩く。
雪を踏みしめる足音は聞こえず。
背後から近づいてくる人影には気づかないまま、自宅にたどり着いてほっと息をひとつつき。]
――やれ、さむいのぅ……
[ぽつりと呟きながら扉に手をかける。]
よっしゃぁ! 暖ゲットっ!!
おやっさん寒いから!
もたもたしない! 早く入って火をつけて!!
[扉に手をかけた瞬間を見計らって、
両手をぶんぶん振りながら背後から急かすように声をかけた。]
何を考えるべきかを考えている。
……答えになっていないな。
[肩をすくめて、笑う。
語尾を飲み込んだ相手の様子には、特に頓着する様子を見せずに]
三人、対抗するまじないを扱える者がいると、長老は言ったな。
力を、うまく動かし利用できなければ――狼を操る者も、つまりはまじないを扱うのだろう。
[自身に言い聞かせるように、呟き始める]
人間の腕だけでは、あの大群には勝てんよ。
[その言葉だけは、妙に確信じみていた]
―自宅前→自宅―
[不意に背後から掛けられる声に驚いたように振り向き。
見えた相手にやれやれと肩をすくめた。]
お主……まぁよいわ……
[せかす様子に僅かに苦笑を浮かべ。
小屋の中へと足を踏み入れ、入り口で雪を落としてから、暖炉に入っていた炎を更に大きくする。
火が消えてなかった小屋の中は寒さで凍えていた体には暖かく感じられて。
暖炉にかけていた薬缶に雪を足して湯を沸かしなおした。]
そこらに適当に座るといい。
……お主、何をしておったんじゃ……雪だらけじゃないかのぅ……
[改めて目にした相手が、スノーエンジェルを作っていたとは知らぬまま、雪まみれなのを呆れたように見やった。]
[驚いた顔が呆れ顔に成る様を、見ては笑いを堪え]
お邪魔…ったか〜い! さすが持つべきものはおやっさんね!
[招き入れられるや否や感じる暖かさに、感激。
呆れた儘雪塗れを指摘されると、
思い出したかのように間延びした声をあげ]
ちょっと考え事をしてて。
気付いたら大地との融合してたのよ。
ねえ、おやっさん。
奴らは…狼使って、この村に何を施したいんだろうね。
そうだな。
…そう、だろうな。
でなければ、長老があんな事を、
[言うわけが、ない。
想いは生贄にされた少女へとつかのま 飛び]
…考えることを、かんがえる…
――信じるか疑うか。
ということ…じゃない、だろうか…?
―自宅―
[ヘイノの言葉にはしょうがないのぅと言わんばかりの笑みを浮かべ。
じゃらり、と音が鳴る杖は壁に立てかけて、茶の用意をする。]
――この時期にそのようなことをすると自殺行為じゃのぅ……
いくらお主が暖かい格好をしておるからといっても、ほどほどにしておくのじゃな。
[ことり、茶葉の入った缶をテーブルに置いて、
問いかけにはゆるりと瞳を伏せた。]
さてのぅ……
村をなくしたいのかも知れぬし。
この地で暮らせないようにしたいのかも知れぬし。
誰かに恨みがあるのかも知れぬし……
わしにはわからんのぅ……
[重い吐息をひとつこぼし、シュンシュンと音を立て始めた薬缶をつかんで熱い茶をいれる。
薬缶にはまた雪を足しておいた。]
――ほれ、とりあえず、凍え死ぬ前に暖まるとよかろうて。
長老は、ドロテアの声に、長じた孫娘の言葉に、
長く白い眉の下で――人知れず目頭を熱くする。
非情にも近づく、"そのとき"。
テントの入口、厚い幕が静かに何者かに捲られる。
『 …… 』
外に見える、幾つかの、儀礼めいて揺れる松明の炎。
幕を捧げ持つ態でテントの奥を――長老の傍に座す
ドロテアをひたと見詰めるのは、若衆頭の男*だった*。
…ああ、まあ。そんな所だろうな。
[信じるか疑うか。
男の言葉に、ようやく答えを得たとばかりに]
己が誰を信じ、誰を疑うか。
そして、どう――疑いを晴らすか。
[ふと思いついたように言葉を切り、すうと息を吸い込む]
『私は狼など呼んではいない。信じてくれ』
――言葉なぞ弱いものだ。皆、そう言うに決まっているのだから。
[ちらりと、口元を掠めるのは挑発的な笑み]
[程ほどに。
そう呈する者に、一つ頷くことで返答とし、
返答に重ねるのはまた問い。]
そうねえ。恨みか、はたまた別の理由か。
どれにせよ何かしら理由はあるとして。
――其処に狼を使う理由はなんだと、
ビャネルはお思いになって?
[出されたもてなしに小さく礼を述べ、
湯気上がるカップを顔に寄せた。]
[暖炉の前、熊の毛皮を敷いた場所。
足の短いテーブルの上においたコップを前にして座るヘイノの向かいに腰を下ろし。
胡坐をかいて暖炉の炎を見やる。]
自分の手を汚したくなかったか――
それとも、狼におびえて皆が逃げることを期待したか……
そんなところじゃないのかのぅ。
[ずず、と熱い茶をすすりながらちらりとヘイノへと視線を向け。]
そういうお主はどう思ってるんじゃ?
そうですか…
ありがとうございます。
…………
あの方宛に言伝を届けて頂くのも面白いですかね。
いえ、折には自分で出向きます。
[少なくとも自分がテントを出てからのアルマウェルの所在を知り、思案するらしきは声音にも滲んだか。マティアスがこれから向かう先もわからぬし行く先を問う事はせず、冗談めかぬ口調で嘯いた]
マティアスが少しでも和らいで下されば幸いです。
[名に対する彼の言葉に対する応えを遅ればせながら添える態で、あまり呼ばわらぬ他者の名を紡ぐ。膝掛けを渡した彼を見送る折に向けた眼鏡の奥の眼差しは、謝罪を容れられなかった時と同じように細まり、似た穏やかさを浮かべた]
/*
怒られちゃいました。
皆さんごめんなさい。
おふざけは、後に控えるシリアスを、
増幅するための味付けだったんだけど…。
さじ加減が難しいですね。失敗です。
凹。
指摘されたことよりも、
言わせてしまった心苦しさが一番辛いかな。
あと、指摘されて軌道修正したんだと、
思われるのがねぇ。
…………
[キィキィキィ…―――マティアスの去ってから、アルマウェルの報せを受けた後と同じように、暫くの間は焔を見ていた。静かなはずの小屋にも狼の遠吠えは届き、時の流れと共にじりじりと募る焦燥感を冷え切った茶で飲み下した]
………信じられるのは…―――
[キィ…キィキィキィ―――呟きは掠れ、車椅子に座す求道者は来訪者を待つ時を休み扉を開ける。膝掛けの無い分だけ余計に冷気が刺さるけれど、曇る眼鏡をはずさず袖口で拭い、再び不吉な紅いオーロラの靡く夜に出た]
[向かい合わせの男に探るような視線は投げかけず。
律儀に返答する姿に礼を述べながらも、
問いを返されると素直に応じ、]
私もビャルネと同意見よ。
手を汚したくないってのは同感ね。
それと狼を操れる位だから、
呪いにも長けていそうよね。
だけど呪いだけじゃ大量殺略には向かないからってのも、有りそうだし…。
――あとは…力の誇示、かしら?*
[男に、相手の笑みは見えぬが
見えぬゆえにその空気を感じ取り、
僅かに口の端を歪めた]
…だが、俺には、その「弱い言葉」しか、
――信じるも信じてもらうも、
[言い掛けて、口を噤む。
ふたつほど息を飲み込んでから]
…――目を見れば判る、とでも…
言う…――か?
…イェンニか。
あれは夢見がちだが、夢が毒を隠さん奴だな。
[苦笑のいろを帯びた相手の声に、日頃想う評を
加えて返答をした。己のことはみじかく肯定を]
ああ。… 他者の在りように
他所を垣間見れば戸惑う、か?
…お前に通じる群れは、お前は何を想うかな。
[深い雪に覆われた森の中で、狼たちの一団が
ひたりと鳴き交わすのをやめたのを感じる。>>170
――村の男たちが、雪原に。
供犠たる娘が捧げられる祭壇をつくっている。]
あたしと意を通じるおおかみたちは…
嘆いているよ。
[『おおかみ』たちは…円い瞳にその態を映す]
濃い情と飢えとの狭間で、…「行く末」をね*。
[ちらちらと炎がゆれる。
会話の合間に薪が爆ぜる音が響く。
素直に同意を返すヘイノへと向けた視線は、探る色を持たず。]
ふぅむ。
まあそうじゃのぅ……
狼達にいうことを聞かせられるだけの腕がある、ということじゃからの……
[ずず、と茶をすすっては、ほう、と息をこぼし。]
力の誇示……
ふぅむ。そうとも言えるかもしれぬなぁ……
なんにせよ、力があるということをしらしめたいと思う欲は誰しも持っているものじゃしのぅ。
[ゆるりと瞳を閉じて静かに考える。]
力の誇示……だとしても姿を見せぬのはまた誇示だけが目的ではなかろうて……
誇示したがるのは認めてほしいという意思があってこそじゃからの……
姿を見せずして認めてもらうのは無理というものじゃろう。
そうだ。
結局、我々人間には言葉を使うくらいの力しかない。
――まじないの心得があれば、また違う思索に耽ることもできるのだろうが……
[マティアスの言葉に、静かに同意する。
目を見ればわかる。
彼の眼帯に、半ば反射的に目を向けてしまう。目そのものが、見えない]
どうだかな。
だが、見えてしまう者も居るのかもしれない。
[自宅に戻るとまず“患者”たちの様子を伺う。
病や怪我を抱えたトナカイたちは
相変わらず落ち着いた様子で]
やっぱり、か。あり得ない話だよ。
外にはあんなに狼がいるってのに。
[あの、疑惑のきっかけとなった夜も。
吠えている間さえこんな調子だった]
……全く、どうしたモンかねえ。
愉しい?
……さあ、それは……それはどうだろうか。
[曖昧に笑う。
否定も肯定も、なく]
もしも私が巻き込まれず、ただの傍観者であったのなら。
ひょっとしたら、愉しんでいたかもしれない。…傍観者で、あったなら、な。
/*
気が付いたらログが想像以上に伸びてた件について。
しかしアレだ。
ヘイノのキャラは流石に慣れてきたw
まーああいうキャラが
悲劇に巻き込まれてキャラ崩壊するのも
残酷なものだからねと納得してた。
[ありえない絡まれ方されて
キャラ崩壊した春日とか見てられなかった]
[ 『 そりゃ"どっち"の前提だ? 』…
別れ際、カウコの応じめく問いに、蛇遣いは
「あとで鏡を見るとわかるんじゃないか?」と
悪人顔で損をする性質の相手へ添えておいた。
ぐず、と歩むまま鼻先に音を立てて眼差しを上げる。
――双列を為した灯りが、ゆっくりと動いていく。
凍る湖上、冬だけの雪原を目指して…ゆらゆらと。]
祭壇を、つくる…のか。
[或いはあの列の中へ、既にドロテアが居るのか。
蛇遣いはじわり、嘆きを押し殺し双眸を細める。]
[開かれた幕から入り込む冷気。テントを訪れた男達の姿に、ほんの僅か、目を細めた。外の闇に揺らぐ炎は、男のコートにも、どこかオーロラにも似ていたか。小さく、口を開き]
……刻限か。
しからば……
[ドロテアに一瞥だけを向け、暝目した。
首飾りの中央に触れる仕草は、祈りのようでもあったか]
戸惑う。
…そうか、戸惑っているのかもしれない。
この雪と闇の外には何も要らない筈なのに……いつの間にか、気がついたら興味を惹かれている。結局帽子を捨てられないのも、そういう事なのかもしれぬな。
[成程、と解を得たとばかりに呟く]
[蒼い極夜。
寒風が粉雪をさらう凍った湖面に、紅い極光が映る]
紅い輝きは常に惨事とともにある、…か。
[呟く。思い出したのは、先のビャルネの台詞。
先刻見かけた彼は、確か自身の小屋へ戻った筈。]
けれど、止まぬ験しもなかったろう…
夜も世も、在るばかり――だな。
[さくり。往来に踏み固められた道に沿って、
蛇遣いは歩をビャルネの住まいへと向けた。]
[森の中、湖の縁、そして雪原の影。己と意を同じくする狼達は、ただ静かに黙し、生贄の娘を運ぶ列を眺めている。
その瞳は確かに輝いてはいたが、何かの色を映すことはない。今の己の瞳と同じように]
嘆く……
嘆きながら、村の娘にその牙を突き立てるのか。
私は――我々は。在るがままが在るのなら、それで良いと思っている。お前のように、感慨など抱いてはいないさ。
だが、結果が同じならば…過程については、好きなように手を出してしまいたい。その欲求だけは、あるのだ。
[薬を塗りかえる、包帯を取りかえる、
その他諸々。
やるべきことは山ほどある。
薬草を混ぜた餌を与え、当座の仕事は終わった]
さて、狼にも無反応って以外は
異常はなかったみたいだけど……。
治りが早くても、今はあんまり喜ばしくないのかも
しれないねえ。
[やれやれと呟いて。
トナカイたちが心配ないことを確認してから
再び外へと向かう]
…そう、か。
お前は、「飾らない」な――…
[口元に手を当て、思案のかたちを取る。
さくり、雪のうえに立てた杖の音を聞き
首を傾ければ耳のプレートが音を重ねた]
…――こうして誰かと話す機会を持とうと思うのも…
――、妙な事だ…
[常に群れの内々へと入ろうとしなかった男は
ぽつり 呟いてラウリへと顔を向ける]
[しゅんしゅんと薬缶は蒸気を吹き上げる。
書物に湿気は大敵なれど、乾燥しきった部屋は人間にとって毒である。
だから薬缶だけという譲歩をしていた。
暫し静かに茶をすすっている。]
――…?
[ことり、茶の入ったカップをテーブルに戻したときに、小屋の外に人の気配を感じれば、扉へと視線を流した。]
あれは…
[キィキィキィキィ…―――二本の跡を残しながら進む先に、遠く列なす明かりの揺らめきを見る。列が何を意味するものか悟るのに暇はいらず、前髪の奥で眉を顰め口元を引き結んだ]
………どうして…―――
[キィキィキィ…―――誰の何に対してか、掠れた声が車椅子の音に重なる。車輪を操る手が震え、道行の途中で車椅子は止まった]
――ウルスラ先生。戻ってたのか。
[ビャルネの小屋を訪ねる扉前…獣医たるウルスラと
行き会い声をかける。軽く足踏みして待ち歩を揃え]
お疲れさまだ。
晴れるは気でなく赤の空ばかりだが…
ただ、ひとを感じてまわっているよ。
…先生は、トナカイたちを?
[炎を引き連れた列が夜の闇を進んでいく。使者の男は、ついていくか否か迷うような素振りを見せたが、伝達の必要は薄いと見てか、尚場に留まる事にした。
それでも、テントからは出て、その前に佇み]
……、
[白く息を吐きながら、炎が遠ざかっていくのを見た]
[キィキィキィキィ…―――目的地たる長老のテントが見える頃には、列は遠のいていた。表に不吉なカーテンとも似る紅いアルマウェルの姿を見て、言葉はかけず注意を向けられれば目礼だけ置き近くまで寄り、遠ざかる列へと顔を向ける]
…いかないんですか?
…何か、見えるのか…――?
[他に気を取られたらしき言葉に
顔を向けるが男に見えるものは、何もなく]
…何が、見える――?
[歩み去る背へと、低く問うた]
生贄を、運ぶ列が。
あれは、湖の方だな……
[背後からの問いかけに、短く答える。
足を止めることはなく、しかしゆっくりと]
[キィキィという音と共に現れたレイヨに視線を向ける。その瞳は、憂いの色を――あくまで常のように――孕んでいたか。ゆるりと一度首を横に振り]
……行ったとて、出来る事はない。
あの列ならば、伝達する必要もないだろう。
あるとして……終えられた後だ。
[何が、とは言わず。静かな、しかしよく通る声で答え]
[トゥーリッキに声をかけられ、
そちらに視線を送る]
ああ、トナカイも大事な村の民であり、
財産でもあるわけからね。
トナカイたちもそうだが、
私を信頼して預けてくれた人たちも
裏切るわけにもいかないのさ。
そういうトゥーリッキはどうしてたんだい?
例の事件で何か調べているのかい?
…興味も、抗えぬ本能というわけだ。
戸惑っても、厭わずいられればよいな。
[対たる者が得る解は、己にも厭わぬもの。
すこし瞼を下ろして、付近のおおかみの眼を借り
しばらく彼の姿を眺め遣る間を置くと、口にした。]
この地の暮らしにそぐわずとも――
その帽子は、お前に馴染んでいるぞ。
…――ドロテア…
[湖の方。
短い答えにひとつ、小さく礼を言い
彼の歩む方向へと顔を向ける。
焔の灯りを見る事は出来ないが
ただ
ざわめきを
風の動きを 感じようと]
―自宅―
[小屋の外から話し声が聞こえてきて、
ふむ、と僅かに考えてからよいせ、と立ち上がり。]
ちょいと外をみてこようかのぅ。
お主は暫しそこで暖まってるとよいじゃろうて。
[雪まみれだったヘイノに気遣うように声をかけて。
壁にかけていた杖を手に取り。
じゃらり、鳴らしながら扉へと手をかけて小屋の外へと出る。]
…それから、その頬の火傷も、な。
[灼けた樹脂で狙いうちした、些細なそれ。
音無き笑みは揶揄とも悪戯ともつかず燻らせ]
―自宅前―
[トゥーリッキとウルスラの姿を見れば眸を細め。]
かようなところで何立ち話をしておるんじゃ。
……お主らも凍えたいのかのぅ……
[物好きばかりだというように呟いた。]
[部屋は静か。ただ水の蒸発する音だけが聞こえる。
ゆったりと返されるビャネルの声に、
いつもの尖った声纏う"仮面"は自然と降ろされる。]
言われてみると確かに一理あるかも。
認められたい、ねえ。
でもだからと言って誇示欲がないとは…、
どうしてか私は外せないのよねえ。
[そして一口熱い茶を啜ると]
もし、よ。
誰かが操るものを見つけたとして。
その命奪えるのなら。
――ビャルネは、自らの手を汚せる?
[問いは物音に会話が中断される前]
…そうですね。
[視線を感じて顔で無く視線だけを向けると、アルマウェルの瞳に浮かぶ憂いの色。瞬きに交わす眼差しは途切れ、列を見たまま眼鏡の奥で眼差しを細めた]
見つけないと…
―席を立つ前―
[ジジ…――
炎が薪を食らう音が鈍く聞こえる。
ヘイノの声にふむ、と呟き。]
そうさの……お主はお主の勘を大事にするとよかろうて。
矢面に立たぬまま、人が右往左往して喜ぶ悪趣味が居ないとは限らぬからのぅ……
[問われた言葉に、しばしの沈黙がおちる]
――…それでわしが助かるのなら……
それもまた、辞さぬだろうな……
わしは、死にたくないからのぅ。
[狼使いを殺しておしまいになるのなら、と付け加え。
そして、応えは待たず、物音につられて、席を立った。]
そう、ドロテアだ。
[眼帯の男に、小さくうなづいて。
足元の雪を音をたてて踏み分けながら、灯へ――行列へとゆっくりと近づいていく]
裏切るわけには――か。
ああ。そんな言葉の端に安心してしまうな。
[まだ芯までは冷えない身。洟を啜る頻度は低い。
蛇遣いはウルスラと、小屋を出てきたビャルネへと
どこか遠い国の香りがする俗な会釈を一つ向けた。]
言っただろう、先生。ひとを感じてまわっていると。
調べるというほどには理詰めの頭をしてないのでね。
…戸口を騒がせてすまんな、白髪頭。
今は寒さより…あの火が気がかりでならんよ。
本当、よくやってくれたよ。
[うっすらと紅い跡が、頬には残っているのだろうか。
悪戯じみた笑みの気配に、返すのは諦観の響きを伴った笑い]
[ビャルネの言葉に苦笑交じりで答えて]
まあ、そりゃ暖かい方がいいけどさ。
話しかけられたからつい、って奴さ。
気になることもいろいろあるしね。
[パチリと火の爆ぜる音。
ドロテアを連れた列が進むことも今は知らぬまま。]
……――寒い。
[呟くほどに、凍えてもいないのに。
気まぐれに鏡のある方向に目をやるも、見にいかず、ただ零したものは嫌気のない苦笑。
やがて立ち上がり、帽子と上着を着込むと外へと。]
出来る事…
あるとすれば見届ける事くらいでしょうか。
[アルマウェルに語られぬものを車椅子に座す求道者もまた紡ぎはせず、考えだけを言葉にする。言う割りに見届けに向かう素振りはなく、冷えた手に息を吹きかけた]
―― 席を立つ前 ――
[爆ぜる音、蒸発する音。
なんて静かだろうと思う。]
あはは、私の勘ってあんまり当たらないし、
逆に右往左往させて見せて、
裏掻くのもありかなって思うけれど…。
うん、ありがとう。
[否定を重ねない言葉に感謝し、]
……苦痛の元凶を、見つけん。
粛正を行わん。
さもなければ……苦痛は更なる苦痛を招き。
絶望をも招かんとするだろう。
[出来る事、というレイヨの考えに続けるように、その顔を見据えてから、空を仰ぎ、呟く。はためくように在るオーロラを見]
贄たる娘のように。
或いは、相反するように。
血を以て血を制する事になろうか。
[続けた言葉は、確信のようでも、仮定のようでもあり]
なれば。悲しいかな。
だが、恐らくは、止むを得ないのだろう。
[光がはっきりと見えるようになった処で、足を止めた。
生贄の娘はどこにいるのだろうと考えながら、行列をじっと見つめている]
―― 席を立つ前 ――
[自らの答えを待たない、彼の答えに]
――残酷者ね。
だけど私と…一緒だわ。
[背中に落とす言葉は、
狩るもの狩られるもの、立場は同じとて、
違う意味を持つものとして。]
[トゥーリッキの言葉にも、
何でもないことのように答えて]
人と人とは信頼で成り立っているものさ。
獣にしたって、信頼してない人間に懐くことはない。
その相棒だって、そうだろう?
寒いのが苦手なのに、こんなところにいるんだから。
ああ、そんなこと言ってたっけね。
私はどうにもあの事が頭を離れなくてさ。
[垣間見た瞳を、映すものへのいろ添えぬ瞳を、
己が思うものに喩えたら――相手は戸惑うだろうか。
少しばかり浮かぶ想いは遠く交わす笑みに途切れる。]
仕返しの仕返しは、なしだぞ。
[そんな戯れ言。
先の>>*19語尾上げぬ問いへは声にて答えないと
相手が飲み込めるだけの沈黙を置いてから口を開く]
では…
お前の欲があらわとなるときを、愉しみに。
―自宅前―
[トゥーリッキが示す松明の列へと視線を向ける。
二人の言葉にわずかに吐息をこぼし。]
ああ――はじまった、のか……
[ここからでは行列の詳細は見えない。
ただ、あの中に贄の娘がいることだけはわかる。]
たしかに、部屋でぬくぬくと過ごしていてはわからぬものだのぅ……
[じゃらり、杖を揺らしながら二人のほうへと近づいていく。
小屋を出る直前に聞こえた、ヘイノの言葉には、軽く肩をすくめただけ。
生きるということが残酷なことでもあるのは、この地に暮らしているものにとっては馴染みだろう。]
[戸口が賑わいを見せることを感ずれば、
新たな来客かと思い、身を引く支度を。
立ち上がり、出口賑わう場所を掻き分け、
対面するものたちに軽い挨拶と、
家主には暖の礼を。
耳を掠める会話にひとつの動きを感ずれば、
視線を向けるだろうか、その先に。]
――…
[しかしそのことには触れず、ふらりと立ち去る瞳は、
何処(いずこ)*眺めるか*]
― 小屋の外 ―
[外に出て、周囲を見渡せば遠く見える灯にも気付こう。
その中にドロテアが居るかどうかまではわからずも、細めた目は複雑に揺れる。]
役立たずは、俺か――。
[自嘲めいた声。
歩みは灯の向かう先に向かわない。
さくり、と雪を踏み、向かうのは人の居そうな場所。]
別に、気にするほどのものでもないさ。
放っておけば治る。治らないときは、私が死ぬ時だ。
[数日では引かないだろうから、そう付け加えて。
沈黙には何も返さない。唯一つ、息を吐くだけ]
欲か。
…ああ、愉しみにしていればいいさ。私自身も、そうなったらどうなるのか見当がつかんからな。
/*
ビャルネ(よく間違える)のレス速さにびっくりしつつ、
喉枯れしそうなのに食いついてごめんね。
でもありがとう。
眠いと頭回らない。
元々回らないんだけど。
日常の残酷と非日常の残酷。
似て非なるものを如何表現するか。
悩む…。
そして今のところPL視点でのCOっぽいものはしているけど、PCにCOする気がない←に悩む。
[ラウリの足音が向く方角が、ドロテアの居る場なのだろう。
男はその方角へ一歩、足を踏みだしたけれど
杖で先を確かめつ、くるりと踵を返した。
森に背を向け、ゆらり、歩く――]
信頼、か。その言葉は…今でも眩しいな。
あたしが流れきた街では、それさえ打算だったから。
[瞼を伏せて、毛皮に包む大蛇へ片手を添える。]
…ああ。相棒があたしに"従う"のは
笛を吹いてるときだけだ。それ以外は――
すきで傍に居てくれてると、いい。
[く、と柔く抱いて頷く。
次いで、ウルスラの言う"あの事"に顔を上げて促し]
血を以て血を…―――
[向けられる顔にアルマウェルに顔を向け、空を仰ぐ彼の横顔を見上げる。確信か仮定か定まらぬアルマウェルの言葉をなぞり、彼とは逆に項垂れるように俯いた]
…………
貴方の仰る 苦痛 が何を指すのか。
僕にはわからないですけど…
見据える先が違わぬ事を願います。
[寒さに身体の先端が痛み出すころ今度はアルマウェルに顔を向け、彼の顔を見上げる。眉の下がるのは前髪に隠れども、面持ちまでは隠せない]
[灯が去れば、また足を動かして。
そっと、行列を追う。
供儀となる少女の貌を――生きている時の貌を、せめて目に焼き付けておきたい。たぶん、そういうことだ。
開けた場所に、行列はたどり着いただろうか。
あくまでも遠巻きにそれを眺めながら、視線が探すのは捧げられた少女のすがた**]
好きでいるんだろうさ。
何もなけりゃ、もっと旨い餌がある場所に
とっとと逃げちまってるんじゃないのかい。
これだけ寒い場所では、少しの油断が
命取りになるからね。
多少の打算はあっても、それだけじゃとても、ね。
だからこそ、互いに助け合って信じる心が
必要になって来るんだけど……。
[短く言葉を切って、あの事について語る]
どうやら狼遣いってのは
人の心も利用するものらしくてね。
[雪を手に。解けるそれをぎゅぅと握り締めて想うことは]
……。どうしろと、おっしゃるのかしらね。私にはとんと理解及ばぬ出来事よ。
より生きたいと想う者が生きるだけではありませぬか。
ドロテア様はそうお思いではなかっただけ。
気遣う必要がどうしておありに?
本当に難しいこと。わからない…。
[ぼんやり、オーロラを眺め、たいまつを眺め。口にあがる言葉は聞きとがめられぬように呟いたつもり]
[ビャルネの吐息が、目の前を流れる。
涙に視界が歪んだわけではない、と自らに確かめて
浅く俯き…はじまったのか、との声にたぶんなと添え]
…目をそらすな、と何かが言う。
…他に見るべきがある、と他方で言う。
気がかりなのは、変わらん。
ドロテアの望みを思えば――見送れんよ。
[やがて去り行くヘイノの背には、またなとだけ告げた]
[己が率いる狼たちの気配を感じる。
どこか虚ろなそれ。小さく笑って、――今は伏せておけと、そう、送る。
己に連なる狼達は、ただ影のような視線を、じっと送り続けるだろう。
村に、雪原に、森に、極光に、供儀に、――そして、対となるものと、彼女が率いるおおかみ達に**]
だめですね。なんか、人と話せる気がしません。
忘年会もかなり急に入ったのよね。
ちくそう。許してもらえるならこっち優先にしたいのだけど。会社の忘年会、キライだわ。
せめて3日は間をあけてほしいといったらわがままかしら。
[ふらり出歩けばビャルネ達の姿が遠くに見えようも、彼の家の前だと知れば何とはなしに近づくことはなく。
ヘイノが群れから離れるには暫し目を留めるもそれだけ。
目が合うようなら片手の一つも振るだろう。]
――何も、進まないな。
隠したまま引き出すなんざ出来ないだろうが
……其れ以前の問題だ。
[やれやれ、と息を吐き、贄の娘を想うも刹那。
足だけを前に進めながら、赤い空を見た]
―自宅前―
[ウルスラがトゥーリッキに告げた最後の言葉にちらりと視線をそちらに向ける。]
……人の心も利用、か……
なるほどのぅ……
[ポツリ、呟き。
トゥーリッキの頷きにはうなずきを返し。
じゃらりと杖を抱えなおす。]
わしらはわしらのやるべきことをやるだけだろうて。
それが――ドロテアへの手向けともなろう。
[静かに言葉をつむぎ。]
[そして――ふう、と白い吐息をこぼしてから、二人を見やる。]
長老は口にしておらなんだが……狼使いに味方するものも、一人おるようじゃの……
[伝聞のような、あやふやな言葉が冷たい空気に溶けた。]
……もし、違うものであるならば。
どちらが正かを決めなければならない。
だが、それだけの話だ。
[顔を正面に向き直らせる、と、レイヨを向いて]
しかし。嗚呼。そうだな。違わなければいい。
現となった兆が、跡にならないように。
[感情の吐露を避けるような、迂遠な語り口は、普段と変わらず。ただ、ぽつりと]
私欲を含めるとすれば、尚……
いや。詮無い事か。
[小さく零しては、首を振った]
…――…
――やはり、…――、
[ぽつり くぐもった声で独り語散らせ
森から離れ小屋並ぶ集落へと足を向ける。
ざりざり、ざくり、特徴的な音がなる]
[ドロテアの表情はどうでしたでしょうか。この目では見えません。伏し目がちの瞳は、見えるものを見ぬようにする為かどうかは知らぬこと]
……。私、おかしいのかしら?
赤い空も、こんなに綺麗。私なら、歓迎だわ。
[痴れ者のようにとぼけた言葉、今度は風にも流れましょう。ふと視界の先にトナカイを見、そのまま赤い空をうっとりと眺めやりながら]
…ああ。有難うだ。
[――相棒の、旨い餌。
夏には事欠かぬものの、冬は覚めれば無く…飢える。
凍えぬよう目覚めぬよう人肌で温め続ける蛇遣いは、
獣医の言葉に感謝しながら、遠い雪解けを想った。]
…この地には、それがある。あたしも知ってる。
利用――ひとの心を?
[ひとつ瞬いて、ウルスラが明かす話を傾聴する]
するものらしい、というのは…誰とした話だろう。
聞かせてくれるといいが――先生。
互いに疑い合うように仕向けるとかね。
そういうのを狙ってるらしくてさ。
全く面倒な連中だよ。
……だね。
無駄にするわけには、いかないね。
[犠牲となる娘を思い、ビャルネの呟きに言葉短く頷く]
狼遣いに、味方?本当なのかい?
だとしたら、どうして長老は……
それに触れなかったんだろうかね。
――凶兆の徴と知らなければ綺麗なのかもな。
それこそ、ヨソの人間や子供なら。
[流れて来たイェンニの声には唐突に声をかけ。]
この状況で"歓迎"ってのは些か想うこともあるが。
[此処へ来て長くは経たない相手の意図ははかりかね。
他方で聞こえた特徴的な足音――否、杖の音だろうか。
鳴らない杖を持つのはマティアスだろうとあたりつけ。]
あら。ごきげんよう…かしら?
貴男も悼まれるお方?
[唐突な声かけには流石に目も僅か見開きます]
赤は、好きですの。長老様は赤は凶兆とかおっしゃいますが。
綺麗という言葉に罪はありませんでしょ。
まるで血のよう。赤はキライではないの。
[ドロテアはこれからその赤を流すのでしょうか。期待の声だけは悟られませぬよう]
もしかしたら……
寒い分、人の温かみが欲しくなるのかもしれないね。
[冗談のように少し笑みながら語る。
話の続きを促されて、それに答える]
それは、カウコとした話さ。
偽物のまじない師が、無実の人間を狼遣いだと
告発する可能性とかね。
まじない師は狼遣いが誰かを知ることができるけど
そこを逆に……って話さ。
しかし、ビャルネの話が本当だとしたら……
ますます、おかしなことになりそうだね。
[細められる視線の先にある行列を*見つめて*]
さしもの長老も……自らの孫娘を贄としたことに動揺しておったのかもしれんのぅ。
わししかテントにおらなんだときに、言うておったが――
皆が来た時には口にするのを忘れておったのか……もしくは口にしないことで油断させるつもりじゃったのかのぅ。
[じゃらり、杖を持ち直しながら。
テントでのことを思い返すように言葉をつむぐ。]
その話は……狼使いに味方するものが居たら、さらにややこしくなりそうじゃのぅ。
[ウルスラがカウコとしたという話を耳にして、難しげに眉を寄せた。]
[相手が見開いた目に、驚かせたと知るも謝罪はなく]
悼んでも儀が止まるわけじゃなし、
ドロテアはドロテアの出来ることをするだけだ――。
[答えは否定を滲ませるも割り切れてはおらず。
赤が好きだと言う相手の様子に特に咎める色なく聞くけれど]
血のようだから好きってか?
[帽子をつまみ、少し深く被る。
赤を血と結びつけた上で好きと言う相手をじっと見やり]
…どんなかたちにせよ跡は残るでしょう。
もうドロテアは…―――
[紅い空を見上げてから、捧げられる供犠の娘の向かった先に顔を向け、俯き瞬きよりは長く瞼をおろす間。首を振るアルマウェルの気配に顔を再びあげて、噤まれた言葉の先を想い眼差しを細めた]
僕には何が正しいのかもわかりません。
それでも奪わせてしまいたくはないと想います。
[周囲を見回す視線は人の無いのを確かめ、アルマウェルに向き直る。悴む手が眼鏡をずらし、滲む視界に彼を捉えてからかけ直す]
…方策は見つかりましたか?
―― ビャルネの小屋前 ――
[気づけば、いつしか村のほとんどの人々が
外へ出て――葬列めく儀礼へ視線を向けていた。
容疑を向けられる他の者の姿も、そこにはあって。
…逸れかけた意識は、ビャルネの呟きにか戻って]
…?
狼使いに、味方する――…
あんたが、書物へ希望ある知識を求めている
ところだろうと思って訪ねてみたんだが。
ふむ…随分と、剣呑な話を聞いてしまったな…
…
狼使いに味方する者が、ひとり――
いるとかいないとか。
[目の前のビャルネの言をなぞって、ぽつり]
妙な話になっているな。…
「赤」が好きですわ。貴方が仮に白がお好きといえば同じように。
……お話は私も同席しておりましたから。
赤い色が凶兆とはいえ己の好き嫌いまで否定されるのはつまらぬことと想われません?
[伏し目がちな瞳はまた閉じて]
それとも。疑える人間をお探しゆえにかしら。
―自宅前―
[儀式を照らす松明は粛々と進んでいる。
それを止めるすべを持たぬ男は、ただ遠くから眺めるのみで。
トゥーリッキの声にゆるりと頷きを返した。]
書物にも、それなりに有意義なこともあったがのぅ……
これは書物からではないからの、あまり人に吹聴せぬほうがよいだろうと思うて。
とりあえず、お主らに伝えておこうかと、の。
[じゃら、と飾りが揺れる。
凍てついた風が通り抜ける。]
[松明のともし火は、小屋からはもう、小さな点のようにしか見えない。]
主らが、広めるかどうかは主らの好きにするとよかろうて……
わしは、また小屋に戻るとしよう――話なら、いつでも来るとよい。
[冬の女王の冷たい手に触れられたように一度身震いして。
暖かい室内へと避難する旨をつげて、扉の向こうへと、戻っていった**]
そう。
「赤」が好きなことについては何も。
ただ血のようでと言ったことが気になっただけだ。
[ドロテアの儀式に期待を寄せることなど知りもしないが。]
疑える、とはまた挑発的だな。
信じられる人間と、疑わしい人間なら探してる。
が、疑える人間探しにゃ意味はないだろ。
少なくとも――俺には。
[他者の思考まで知らないから、否定は自身に留めて。]
仕損ずれば全てが終焉を迎えるだろう。
全てでなくとも……嗚呼。そういう事、だ。
[レイヨに答えるでもなく答える。それでも、と言うのには、無言で一度頷いて]
方策が……あればいい。
しかし、今は。与われるは思考のみだ。
まじないの結果が出でもしない限り。
[自身がその力を持つ者か否かは、やはり言わず]
変調を待つしかない。伝えるべき……
或いは与り知るべき、変調を。
[任の合間、しばしば待機に沈む男は、やはり待機に甘んじるのだと告げる。僅か、目を伏せ]
…カウコと、か。
その類の話は――奴らに知恵を付けてしまいそうで
あたしは確とは誰にも言い出せなかったな。ふむ…
[ウルスラから聞かされる内容を、先のビャルネの
あやふやな話と重ね合わせながら、思案げにする。]
ああ、書物でなく長老さまの仰せか。
…あんたしかテントにいなかったとき、か。
[随分早いうちからテントの中で顔を合わせていた
ビャルネの、手元から杖先へと視線を辿らせ―――]
…ほんとうなら…あぶない橋を、渡るものだな。
怖いのですわ。それだけ。
長老様はこんな私でもこの村に容れてくださいましたが、一年も経たぬ身ですもの。
ただ、私は「いたむこと」を知らぬのです。今、あの方が捧げられても何の情も持たぬように。
貴方もお綺麗な赤をお持ちなら、私は好きだわ。きっと、切ることをためらわぬ位。
[うっすら、瞼が開き瞳の色がちらり]
信じられる方もそうでない方も関係ない。
自分が疑われねばよいだけ。
違います?
[僅かに感想を添えて、身震いの後に小屋へと戻る
ビャルネへとやはり常の如く俗な会釈で見送った。]
ああ。
…書物のほうは、また改めてだろうかな。
――眠れるようなら、少し眠っておけよ。
[怖い、と言う相手を決して人相の良くない目で見やり、日の浅い者が言うことと多くは裡に留めず]
浅さ深さもあるし、別段悼みを強要する気もない。
――俺は俺の意志の元、悼まないことを決めるだけ。
[理屈だけでは済まないことなれそれは自分の決断。]
へぇ……ためらわないって?
どうやら根本的に俺とは違うようで――好かん。
民族の差なんてレベルじゃないだろう、とは
此処しか知らない俺には言えない。
[自分が疑われねば――告げる声に目を細め]
この群れを守る意志のない人間にとったら、
案外そんなもんかもな――。
とするなら、お前はドロテアをどう見てる?
[抵抗もせず、捧げられる贄の娘。
潔白と明かされながらも捧げられる贄の娘を。]
ありがたいことです…。
[言葉の裏、伝わるか否かは求めない。
ただ、自分の流れを断ち切らぬ言葉には謝意を]
好きなものを得る為に躊躇いはいりませんでしょう?私、貴方を好きになれそうです。なんて嬉しいこと。
民族の差ではなく私と貴方の差ですわ。
強要されないお方、疾くご理解遊ばせ。
[しゃらん。髪飾りが鳴ると同じにするりと手を伸ばし。その帽子にふわりと触れるとやんわり笑う]
疑われることも逆に逃げ延びる道やもしれませんね。
仮定の話ではありましたけど…
まじないが出来るなら密かにことを進めろと。
そんなありがたい助言を頂きました。
僕もそう思います。
[自らの事に言及しないアルマウェルに問わず、待てど得れるとは限らぬとは言外にも訥々と語る。待機に甘んじる彼を詰る様子はなく、むしろ動かずある事を想うらしき口振り]
…差し支えなければ変調の折にはまたお願いします。
[長老からの報せを運んでくれた彼へ労いのひとつもかけれなかったからか、軋みそうなぎこちなさで小さく頭をさげる。テントまで出向いたアルマウェルへの用件が済むと、また列の去った方を見て眼差しを細めた]
それがドロテア様の望むことなれば否定もせず。役目負うものの結末ですわ。
生きる意志ないものは死ぬべきかと。
生きる意志あれば生きるもの。
自ら容れたことへ、同情を求めることこそ愚かでは?
ただ…今は生きる為に考えめぐらす皆様が愛おしいとも想います。
共に在れます様にと願うだけで…。
[ふわり。頭を下げると髪が靡き。にこりと微笑むと、「ご自愛を」と言葉残して背を向けます*]
[小屋の主が戻った後は、ウルスラとふたり。
残されるままに、蛇遣いは彼女と顔を見合わせる。]
…ここでもう、先の"信頼"の話になるわけか。
皆に話すか、自身が信用する者にのみ話すか。
口を噤むにしても、期間を含めまた難しい――
狼使いに加担する者が、いたとして。
それは裏切りだ…我々への。そんなことが…
[険しくする、眼差し。
遠ざかった灯りの列を、ウルスラと共に*見遣った*]
あなたは、ただの村人です
あなたは、ただの村人です
あなたは、ただの村人です
あなたは、ただの村人です
あなたは、ただの村人です
なんとなく自分が狂人に見えてきたので念じてみる。なむなむ。
正しき事だ。
益になるだろう事実は発露されなければならない。
だが、過ぎた顕現は得策にならない。
[レイヨが話す助言の内容には、男も同意する。――汝らの誰にも、可能性は在る――答えながら脳裏に浮かぶは、先の長老の言だったか]
無論。伝える事が、私の役目だ。
[頭を下げる様子に、小さく頷くようにして。眼鏡を押し上げ直し、細く、長く息を吐いた。吐息は煙のように白く昇り、すぐに消えて]
此処に来て1年も経たないヤツにあれこれ言っても
仕方がないだろう――それだけだ。
[相手からひしひしと感じるものが違和感と呼べるものなのか、それほど付き合いもなければはかりかね。]
好かんと言った直後にそう言うか。
ああ、そうだな――これは個人の差異らしい。
[伸ばされた手に自然と警戒しそうになるを抑え、触れられた手が離れれば直すだけ。
疑われるが逃げ延びる道と告げる言葉に相手を見て、紡ぎかけた言葉は飲み込んだ。]
Σはっ!
しまったなんて明後日バンザイな返答を!!!!
すいませんすいません思い切りボケてましたごめんなさい。
ドロやんは潔白なのに〜ということですよね、すんませんorz
流石にへこんだ。
望んでいるかどうかは――さて。
だが、 ……、在る意味想像出来た答えだったな。
[生きる意志のないものは死ぬべきとこともなげに告げる様子に言い表せぬ想いを添えて]
お前は、考えないのか? 生きる術を。
[どこか人ごとのように語る声を訝しんで問う。]
せいぜい気をつけるよ。
赤が好きだと襲われてはたまったもんじゃない。
[ご自愛を――去り際添えられた言葉に本気混じりの*返答*]
/*
そういえば、あんまり回想なしで来てるなあと今さらに。
Pt設定、少ないようで案外適度なのかもしれません。
普段多弁な方々はどうなのかなあ。
私の目からは、皆さま生き生きして見えるのです。
素敵素敵。
なのでヘイノの人は気にしすぎないでくださると幸せ。
…………
彼女のくれる時が終わってしまったら…―――
[血を以て血を…―――アルマウェルの言葉が過ぎり、言葉を切り前髪に隠れる眉を顰める。彼の吐息の白が解けるのを見届けども、彼の役目を想えば面持ちの和らぐ事はない]
よろしくお願いします。
本当はもうひとつお願いがあったんですが…
申し訳ないので他の方策を考えます。
報せに走られる道中どうかお気をつけて。
― →祭壇へ―
[男衆が持つ焔の数々が、闇に浮き漂っているようだった。
歩を進めつつポケットから取り出した砂糖菓子を口に含む]
無力ではないと、どのように証明してくれるのかしら。
[舌の上、雪に負けず劣らず、ふわりと軽く溶ける白。
目前、呼気は色濃く現れる。
誰かへの伝言か? 問われると]
美味しかった、ありがとうと、菓子職人さんへ。
[ふ、と。
躓いた、あるいは跳ねた。そんな様子で前方へ突っ伏した。
顔も足も手も雪にうずもれ、そこからくぐもった声が発される]
ちょっとだけ待ってちょうだい。
[男達は顔を見合わせ、誰も生贄には触れない。
しかし次の瞬間には、ドロテアは何事も無かったかのように起き上がり、また歩み出した**]
供儀 ドロテアは、ここまで読んだ。[栞]
……、
[途切れるレイヨの言葉を継ごうとはせず。その顔を見据える様は、彼の表情を窺うようでも、普段と変わらないようでもあったか]
もう一つ。……私にできる事なら、言うといい。
[本当は、と続けられた言葉に、促すように。レイヨが言わないというなら、無理に聞きもしないだろうが、言われたならば静かにそれを聞くだろう。
お気を付けて、というのには頷いた**]
/*
いい人ではあるらしい。
記憶力が良過ぎて困っている、のかもしれない。
そして初回で死ぬ確率は<41>%だ!
ドロテアはとても可愛いと思う。
火水と筋肉少女帯ライブ行ってくるぜ……!
[見えぬ瞳の上に瞼を縫い止め、包帯までした男の視界は真闇だ。
僅かな光をぼんやりと感じる事すら出来ないが]
…――、
[鳥肌覆う肌で、微かな温度を感じる事は出来る。
生贄の行列が雪を踏み、松明の灯りと共に進むのを
体の正面で感じつつ 見送るひととき。]
[自身の行動>>128に、ただひとこと理由を問うた>>184少女が、最後のそのときまで出来る限り寒くないと良いと想う。
ちろと、尖らせた舌でのひと舐めが、
視力無き自身がひとを記憶に残す為、味と匂いと触感を一度に残す有用な手段だと、男が少女に説明する事は無かった。
記憶に残すなと言われそうだと想ったのか、
理由は自身でもわからない]
…―――きっと、余り時間は無い…――
――誰に聞けば、
[良いかな…?
呟きつつ、ざりざり、とまた杖で行く先を掻く。
足を踏み出す男の手元には、レイヨから受け取った膝掛けだけが暖かい*]
[向けられる視線の先、意の先を辿り頬傷を想う。]
…それが治らなくとも、気にはしないが。
お前が死ぬと、あたしが死ねなくなって困るな。
[蛇を連れた遣い手は、諸々へと無頓着に嘯く。
…"どちらかが遣り遂せられれば、それでいい"。
必ず滅ぼさねばならぬ。長老の言に重ねた望み。]
――狼使いは、人の心を利用するのだそうだよ。
[ウルスラから聞いた話を、他人事めかし口にする。
様子には憤りも落胆もなく…珍しごとを教える*態*]
―――…、………
[供犠の娘が雪にうずもれ立ち上がるところなのは知らずも、芯から冷え始めた身に膝の上で震える手を握る。アルマウェルの視線と続く言葉に顔を上げると、口を開かず彼を暫くは見ていた]
…貴方のお言葉に甘えさせて頂きます。
まじないに関わる報せに走る折。
出来るだけ早く僕に届けてもらいたいのです。
残りは折にまたお話させて下さい。
[意図も説明も先送りにした願いに、中途半端ですみませんと添える。キィ…―――悴む手を擦り合わせ車椅子が音を立てると、労いに頷いたアルマウェルへ場を辞すべく目礼]
まじないに関わる報せ……か。
[レイヨに告げられた内容に、その瞳を見据え返して少しの間を置いたが。一度、緩慢に瞬きをしてから]
わかった。
知れた時には、いち早く伝えに行こう。
[そう同意して、目礼に目礼を返した。去っていくレイヨを見送り、小さく息を吐く。暫くは、テントの前に*佇んだまま*]
/*
急用に付き、すぐ落ちなければならないうえに、
右手の人差し指付け根の血管が切れましたorz
凄い痛い。
年取ったな、自分。
お陰で右手はお箸を持てません。
が、酒は飲めます。
さて連投する前に落としたい言葉を整理。
―― 自宅 ――
[贄の参列は天に光を反射し。
暗い当たりを幻想的に仄か照らす。
しかし赤いオーロラ同様、見るものが感じる美しさを、
否定する術は持ち合わせておらず。
黙した人影は暖を投げっぱなしにした自宅へと、
やがてたどり着く。]
―自宅―
[小屋の中へと入る途中。
トゥーリッキの言葉には、じゃらりと杖が鳴るだけ。]
書物についてはいつでもくるとよかろうて。
……まあ、眠れたら、のぅ……
[短い言葉を挨拶代わりに。
ウルスラにも会釈だけはして小屋の中へと入る。
そして、コップを片付けて、暖炉の前に座る。]
さあて……どう動くかの……
[狭い部屋の中一人、くす、と小さく笑みをこぼした。]
[贄の命をひとつ、
乙女のそれより先に奪い血染めの闇、
啼く声に、せめて泣ける強さが有ればいいと、
かの姿に思うも、それすら傲慢だと自嘲の影に
敷く術は始まりを告げる。]
しかし長老は何処までも酷なひとよね。
[燃す火。清めの水。投げ入れるは、
贄の乙女より黙して奪いし身の欠片。
無力ではない証に。知り行くば怒りを買うだろうか。]
孫娘だけでは足りず"ふたり"も。
真っ先に贄に捧げようだなんて。
[「探すもの」「阻むもの」。
そう告げた後、あの場に集う人のことを思い出す。]
でも、まあ。別にいいけどね。私は。
それなりの覚悟は出来てるし。
[言葉短めに区切る手には、なめし皮。
傷つけた手でなぞる血文字は、問う言葉。]
『かの者の 真実は?』
[やがて時すれば浮かび上がるであろう文字。]
[鮮血を湛えた器。焚く自然の実り。
相俟って漂う匂いは、
すれ違いざまに鼻腔へと落ちるあの匂い。]
生き物を殺めるより酷なこと。
それは真実を暴くこと。
食物連鎖なんて…甘い話じゃないわ。
だから私はお守りなんて"要らない"のよ。
誰よりも残酷者ってことは、身に染みているつもりだし。
/*
ちらりと覗きつつ。
ドロテア襲撃を表でやってもいい気もするくらい
黒く動いてるのですが、ヘイノとの会話の流れで
いっそ守護騙りでもしようかなと思う私がいます。
[全てが整った空間に、並べられた文字は、
自らを抜かした全員の名。
そのうちの一つを血池に放り投げてひと時、
命を削る所業。それは培った覚悟。]
それでもひとは欲するのでしょうね。
自らを生き長らえるために。
真実を一つ得るたびに、
ふたつ以上の犠牲を払うことを知ってか知らずして…か。
[やがて浮かび上がるひとつの答えを得るまで。
やけに静かな時間が*流れる*]
/*
指が痛いな。打つだけで痛い。
しかもわからんちんだ。
いつものことだが。
「言いたかったこと」
白出しされた人って狙われるよね。
でもここで鬼ヅモっても狼泣くよね。
↑これはPL心。
関係ないけど、昨日までの←の廃テンションが、
中身ただ洩れだと思われたらいやだなぁって思ってた。
いや、良いんだけどね。如何思われても。
(どっちだ
/*
うん、だだ漏れだ。
でも←にはホント中身が救われてます。
今年入った村ってどの村も一日目に、
特に理由なくがっつりモチベーションが下って、
村で発言できなくなるんですが、
今回は←のお陰で難なくクリアです。
用事入ってますが。
ホント感謝感謝だよ、←。
エピ終わったらサシで酒飲もうな、←。
[キィキィキィキィ…―――冷たく溶けない雪の上を進む音が、狼の遠吠えに重なる。ビャルネの小屋を訪ねる道中にまだウルスラとトゥーリッキの姿やすれ違う者があったなら、目礼を添えて通り過ぎただろう。
目指す先には明かりが灯っているから、ビャルネは中にあるのだろうと知る。キィキィキ…扉の前で止まる音に、彼も気づいたかも知れない]
…レイヨです。
少しお時間を頂けませんか。
[マディアスが扉の前で思案した挨拶は置かず、外から声をかけて扉を見る。冷えた手に息を吹きかけて、中から声の返るのを待つ]
―自宅―
[ふ、と笑いをひっこめたのは、キィキィと響く車椅子の音に気づいたから。
小屋の外でその音が止まれば、傍らにおいていた杖を手にして、じゃらり、と鳴らしながら扉へと向かう。]
お主か……お主も冷えておるようじゃのぅ……
[車椅子のレイヨも通れる程度には間口はあいている。
扉を開いたまま、中へ、と促すように杖を動かす。
じゃらり、飾りが鳴った。]
[じゃらり、ビシャルの引き連れる覚えある音が室内より聴こえ、開かれる扉に彼を見上げて目礼。促されるのに遠のいた明かりの列を振り返り、礼を籠めた頷きを置いて室内へ]
他にも冷えた方がいらしたんですか。
[多くの者が列を見送り外へ出ているのも見かけたから、まさか寒そうだった人物が雪の天使を作っていたとは思わない。室内を見回す間に曇る眼鏡をはずし、袖口で拭いながら滲む視界にビシャルを捉えた]
お訊ねしたい事があってお邪魔しました。
―自宅―
[レイヨが室内にはいってから扉を閉める。
分厚いタペストリーが扉を多い、外気の冷たさを遮断している室内は、温かい。]
先ほど、ヘイノが雪まみれでやってきおったからのぅ……
[暖炉の側に行くようにと促しながら、
もう一度茶の準備を始める。
壁に杖を立てかけてから、コップ二つに茶を淹れて。
そのひとつをレイヨへと手渡した。]
ふぅむ……なんじゃ?
[聞きたいことという相手を、じ、と細めた目で見やる。]
雪まみれですか…それは寒そうです。
[キィキィキィ…―――促されるまま火の傍へと寄り、再び曇らぬように眼鏡を温める。本を読めぬ文盲の求道者はつるに歯を立てず眼鏡をかけ直して、本に囲まれて暮らす書士を見た]
貴方は僕の知らない事も多くご存知でしょうから。
書に限らず役立つ知識をお持ちではないかと。
[悴む手を握り感覚を確かめてから、礼を籠めて頷き茶を受け取る。冷えた足の上に組む両手で包み、茶の味より先に温もりを味わう様子]
…――寒いな…
[レイヨの膝掛けを持った侭、ざりざりと杖先で雪をかき、足を進める]
[あん]
[微かな小さな鳴き声に足を止める。
自身の小屋の方向へと顔を向け――
ゆったりと、歩を向けた]
[雪が半ば溶けかけ、水になりかけていた器の中身は薬缶に継ぎ足し。
温かい茶が入ったコップを手にして、レイヨの近くに腰を下ろす。]
わしの知識など、長老には及ばぬがな……
さて、何が知りたいんじゃ?
[書物を読み、伝承をかきとめ――
けれど、そんな生活にはひそかに飽いている。
それを人に見せることはせぬまま、ゆるりと問いかけた。]
―湖の畔―
[松明の灯が見えなくとも、男は湖の畔まで足を延ばしていた。
取り囲む狼たちの気配が強くなる。あまり長居するわけにもいかぬだろう。
だが、この時期にのみ出来る雪原と、そしてそこに捧げられる娘を最後に一目見ておきたかった]
……感傷か。
[吐いた息は白く、見上げるオーロラは赤い。
どう疑い、どう信じるのか。どうすれば、疑いを晴らせるか。どうすれば――生き延びられるのだろうか]
言葉は、無力だ。
だが、時にその器を超えた能力を有する……
嘘、……。
[肩を抱いて、微かに震えた。きっと、寒さのせいだろう]
…………
知りたいのは貴方ご自身の事です。
[供犠の娘の代わりを問うた折に、言葉でないもので語った相手へかける問い。おろされる腰に視線もおりて、近づいた分だけ互いの顔も見えやすいか]
…いかしたい者はおありですか?
[ジジ…――
パチ…パチ――…
レイヨの問いにしばしの間が空く。
暖炉で火が薪を食べる音が響く。]
ふぅむ……生かしたい者、か……
[悩むようにゆるりと一度瞬く。
車椅子に座る相手を見据えるように視線を向け。]
そうだのぅ……
女子は生かしたいと思うが――
[ふ、と僅かに息をつき。
ずず、と茶をすすって。]
なによりも、自分自身が生きていなければ
意味はないのぅ。
[さらりと言い切った。]
― 自身の小屋 ―
[男の小屋は、必要なものすら足りて無い程、ものが少ない。
キィ、と扉を開けると中にあるのはひとつだけ不似合いな程大きな本棚と、質素な木の机と椅子のみ。
尻尾を振って足元に纏わりついてきた子犬の感触に頬を緩めつつ、寒い室内へと入る。
火を入れる気にはなれず、コトリ、椅子に腰を下ろし子犬を構うひととき。]
…――お前が、…――
――いや、何でも無い…
[彼に語る自身も詮無いな、と呟いて]
[イェンニと別れた後、すっきりとしないまま、改めて見上げた空の赤に、やはり自分は嫌いだ、と想う。]
刷り込みってやつかもな――
[目を細めて呟いた。
首元に手をあてる――脈打つものは命のしるし。]
狼使いかどうかってーよりは……もっと……
[形にならない想いは言葉には出来ず、途切れた言葉は誰が聞いてるわけでもなし途切れさせたまま。
暫し赤を見つめた後、祭壇の方向へはやはり視線を向けずにさくりと雪を踏む。]
[薪の爆ぜる音が聴こえど互いに口を開かぬ間は、身じろがずただ黙して。向けられる視線はそらさず、容れずも厭わぬ態]
…………
僕は性別で判断はしないので参考になりました。
[言い切られる言葉にはゆっくりと瞬き、一呼吸を置く。カップへ視線を落とすも口はつけずに、茶が思案に揺れた]
村とご自身ならどちらをとは問わずにおかせて下さい。
ありがとうございました。
[考え事をしていたせいか、マティアスにはすぐには気付かず、一拍遅れて相手の気配に気付くと視線を向けた。]
――カウコだ。
[何と声をかけたものかと考える間も一拍。
目が見える自分には相手の状況などわからないけれど、ひとまずは彼の前に居るのが誰であるかを明示すべきかと名乗るにとどめ。]
[レイヨの言葉に小さく笑う。]
このような地にいる女子は大事にせんとのぅ……
[住みよい都会へと流れるのは男女ともだが、
若い女子は華やかな街にあこがれるものだという、意識がある。]
――そういうお主は、生かしたいものはおるのか?
[茶を飲まず、考え込んでいる様子を見やり。
向けられた問いをそのまま返した。]
…――マティアスだ…
――って、俺が言っても詮無いか…
[カウコの声に、一歩、其方へと踏みだす]
…容疑者仲間、だったな。
お前も…
…………
僕は彼女を生かしたかったです。
…―――嫌いなので。
[過去形で語る相手はひとりしかなく、名を出さずも供犠の娘と知れるだろう。訥々とした語り口で添える理由は、決してそれらしくはなくも嘘も冗談も含まぬ響き]
ご馳走様でした。
おかげで幾らか温まりました。
[キィ…―――カップを渡せば車椅子が音を立て、非礼を詫びるよりは口をつけず味わったものを伝える。芯まで冷え切った身は温まりきらずも、招かれたおかげで随分と感覚を取り戻していた]
知ってる――ってーのは冷たいか?
[言いかけた言葉に自ら修正をいれる。
容疑者仲間、と言われれば そうだな と返し]
十名の中に狼使いが二人。
少ないんだか多いんだか――
[盲目と知れど"操る"という点において他者と差を作ることはなく。]
…お前に温かくされても、驚くかな…
[軽口を言うのは、男が群れにおいてカウコの衣着せぬ言葉を吐く事を知って居るから]
…2人、…――
――誰か判って居るならそれだけ「始末」すれば良いか、と思う数だが
…――誰か、判らん状況では、
[多いと感じる。と呟きを添えて
見えぬ顔を彼へと向ける。
声を聞き、空気を感じ取る為に]
[半ば予想していたとおりの答えに、苦笑を浮かべかけて。
とつとつとした口調で告げられた理由にきょとりとしたように一度瞬いた。]
ふぅむ……
まあ、そういう理由もありじゃろうなぁ……
[カップを受け取りながら、車椅子の上の人を見やる。]
なあに、たいしたもてなしはしておらぬしの。
他のものにもわしも話を聞きにいかねばなぁ……
[ひとりごちながら、レイヨが退室するのを引き止めることはない。
壁に立てかけた杖を手にして、じゃらりと鳴らしながら、扉を開けにいく。]
雪原に設えられた祭壇に、供犠の女は横たえられる。
『 爺様、恥ずべきことは何もないわ。 』
ドロテアの言は、祖父以外の者たちにも尊重された。
逃げられぬよう括りつけるための縄は…打たれない。
砂糖菓子の味は余韻となって、仰向けに見上げる天、
そこへひらめく極光のくれないと如何に相俟ったか。
祭壇を取り囲む者たちは、女との別れを沈黙で為す。
松明を手に、目を伏せる祖父と祖母。
松明を手に、強く歯噛みする若衆頭。
松明を手に、深く項垂れる兄弟たち。
熟練のポロミエス(トナカイ追い)が、餞の呪い歌を
唸りながら、踵を返すのをはじめとして…列は動く。
長く列為す炎は、祭壇から…ドロテアから遠ざかる。
狼の群れは、遠巻きに見ているが列の者を襲わない。
『 ―― だめよ、踏まないで ! 』
戻り道。ドロテアの幼馴染たる村娘が声を上げる。
先へ>>280、やわらかな新雪に出来たひと形の窪み。
往路に、供犠が大地をいだき、いだかれたかたち。
どいつもこいつも……
[ついたため息に邪気がないのはそういった扱いの方が落ち着くせいもあり、ついた悪態の片方にはトゥーリッキが含まれてもいるだろう。]
多い――かもな。
十人の中に二人――……情報がなきゃ
間違えた相手を"始末"する可能性が、高い。
"確率"があがっても"間違い"は帰ってこない。
まったくもって憂鬱。
[憂鬱と言うも躊躇いは感じさせず言葉を置き、自分からも少し距離を詰める。
触れようと想えば触れられる位置まで。]
納得は頂けずとも詮無いですが…
「なし」と言われると困りそうですね。
[冗談めかぬ訥々とした口調で嘯き、さがる眉は前髪に隠れる。普段から杖を手にするビャルネが立つのを制するより先に、扉へ向かわれるのには更に下がる眉は前髪に隠れても、面持ちまでは隠せない]
…………
貴方まで凍えてしまわない事を願います。
[開かれる扉に流れ込む冷気、刺す冷たさに眼鏡の奥で眼差しを細める。キィキィキィキィ…―――扉を開いてくれたビャルネへ目礼を置き、車椅子の音は彼の宅から遠のいていく]
[行列はやがて見えなくなり、
しばらくの間をおいて遠吠えが止んだ。
それが意味することは
誰に教えられずとも、何を言われずとも理解できたような気がした]
……ドロテア。
[せめて、その命が無駄にならないようにと思う]
―村外れ―
[村の灯が瞳に映る。狼の遠吠えがやんだ。
――瞑目する。
時間稼ぎ。
長老の言葉が、脳裏に蘇る]
いよいよ、か。
[触れられる位置に近寄られても、
男が足を引く事はない。
ひとつ、深めに頷いて]
…そう、だな――憂鬱だ。
普通は、そうだよな…?
[狼のトオボエがやんだということは。
思いつく考えから、思考を遠ざけた]
うむ。ウルスラ先生もそばに居たのでな。
その場で嘘だと言ってやるのもよかったが…
せっかくの誘いだ、
近く用向きを聴くのもいい。
[死なれれば困るといった主旨への相手の反応は、
蠢きの微かさに幾分物想うひとときを置く。頷いて]
勝手に疑い合ってくれて、殺し合ってくれて。
…ああ。
「そうなる」ことが多いのは知っているが、
「仕向ける」というのはひとならではの発想か。
―自宅→
[レイヨの言葉にゆるりと肩をすくめれば、じゃら、と杖がなる。]
相手の言葉を否定するのは、自らの言葉を否定されることと変わらぬからのぅ……
[ぽつりと返し、
立ち上がってしまえば、前髪で隠れるその面持ちはよくは見えない。]
なあに……冬の女王に抱かれる前に、ねぐらに逃げ帰るから大丈夫じゃて。
[きしみながら遠ざかる車椅子を見送る。
扉を閉めて、冷たい空気のさなかへと、自らも足を踏み出した。]
[触れられるほど近づいたとて触れることはなく。]
……――普通は?
お前まで、血が好きだとか言うんじゃないだろうな。
[過ったのは此処に来て1年と経たないイェンニの言葉。
"赤"が、色彩が好きだと言った。
聞こえなくなる狼の声――ゆっくりと瞬くだけ。]
…言葉は弱い。疑いは、言葉を簡単に突破する。
だが、ちからのない人間はそれに頼るしかない。
疑いの矛先が、言葉しか持たぬ人間に向かったら――それは、悲惨だろうな。
[疑い合うことで、村が自滅していく。
狼の輪で押し潰すまでもなく。想像することしか出来ないが。
故に、他人事のように淡々と語る]
仕向けているのは、時に人間同士であるのにと、そういう事なのだろうか。
……力のない人間のやることは、どうにも理解できず、予想できん。注意せねば……
[囁きではなく、それは自身に向けた呟きなのかもしれなかった]
[訪れた静寂が、耳鳴りを呼ぶ。
先の言葉通り雪原の方角を見遣ることはなく、
人知れず奥歯を噛んで…蛇遣いは足を止めた。
別れたばかりのウルスラを振り返ると、彼女の唇が
長老の孫娘たるその人の名を紡ぐかたちが見えた。]
……
こんなふうに、…
また日を違えて違う誰かの名を呼ぶのだな。
…正体の如何に、かかわらず。
[言ちて、さくり。雪に足をとられながらも歩む。]
[失意の長老は、テントへと戻ってくるだろうか。
ビャルネから聞かされた話を思い起こしながら、
蛇遣いはテントへと手足をかじかませ向かった。]
…――
[テントの前に佇む儘のアルマウェルを見つけると、
彼の目前まで歩み寄り――黙して強く*見上げた*。]
…ラウリは、傍観者なら愉しいと言っていたな。
…――傍観者じゃないから、
きっと、憂鬱、だが…
[瞬く音を拾い、頷いた。
からり、みみのプレートが音をたてる]
女王は美しくも時に残酷ですからね。
[夜に靡く紅いカーテンは女王の纏う衣にも見え、別れ際にビャルネへ嘯いた。キィキィキ…―――彼と別れて少し、狼の声がやむのに車椅子の音も止まる]
…………
[ひとりだけ人数を減らし戻り来る者のあるであろう祭壇の方ではなく、紅いオーロラの靡く空を見上げる。白く曇る眼鏡に眼差しを細めるも今ははずす事はなく、冷たい女王へ零す白い溜息は*解けた*]
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