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[鳥居の前を通り過ぎようとした時
突然ヒグラシが一斉に鳴き始めた
今まで聴いたこともない割れんばかりの大合唱]
(なぜ、こんなに…)
[背後から五郎丸君とポチの鳴き声が聞こえた…ような気がしたが
その時大きな風が吹いて]
[其処は、一体、何処なんだ。
君らは今、如何しているんだ。]
少々、出歩いてくるから、店番を頼んでもいいだろうか。
[上手くトマトが掴めずに、つるりと桶中へ落とす事三度。
近くの者へ力無く頼むと屋台を出た。]
/*
これはヒナさん、占われに来ていらっしゃるように見えるのですが。
もしヒナさん以外にピクシーがいるとしたら、溶かされに来てる様子がないので、無理くり占いにいくのもどうなのかという話で。
ゼンジとゴロウマルは……まあ、うん。
ならばいずれにせよヒナさん占い一択か。
*/
[去年の夏祭りの後に消えた転校生はまた転校して行ったのだと夏が明ける頃には聞かされて。
ポチとポチのにーちゃんがいなくなったのはつまんなかったけれど、それもやはり"トーキョーに行った"と大人には常套文句を言い聞かされて。三人目の編集者のおじ…兄ちゃんもそうだ。
転校。トーキョー。
一晩で三人も消えたのだという噂すらこの一年ではもうそれで納得できるようになっている
それ程に子供の一年は長い]
なんだよー、少ない小遣いの強い味方豚汁様はないのかよー。
まあいっか、エビコさん、焼きおむすびおくれよー。オマケしてくれたら去年みたいに客寄せになってやるってばよ!
[一学年上がったから小遣いは去年よりも増えた。
そして大人に「さん」付けするぐらいの分別はついてきただろう。
しかし祭りを遊びまわるにはそれでも物足りない、がま口財布の中身だろう]
[見上げればきつねぐも]
[後ろ手には狐の面]
オイラ、ポチをいじめたりしなかったんだぜ?
送るつもりが送られたり、きつねぐもが選んだらそうなっちゃったりもするのかい?
[子供の一年は長い]
[何かの一年は短い]
[まるで昨日のように思い出せるぐらいに]
[日課の早朝の散歩
いつもと違うのは犬好きのおっさんが犬にちょっかいをかけた事]
好きだな
[それは褒め言葉]
じゃ、また
[ひとしきり構ってもらい満足した犬を連れて再び散歩を再開する]
/*
占ドウゼン:ゼンジ○、デンゴ○(村?)
霊ゼンジ 守エビコ
狼ハツネ? 悪ヒナ?
▼グリタ(狼?)−絆ゴロウマル(狂信?)
◆ロッカ(村?)
こう…なんだろうか?
今日は河原に行こうか、ポチ
[蝉時雨、蝉時雨]
んっ?
[痣の部分を握られたような感覚の次は引っ張られる感覚が襲う]
人引きの呪(まじな)いか
ポチ、お前は生(い)くんだ
代わりに父と母を守れ
俺は此岸(しがん)から何処に行く
[放たれた紐]
ポチ、また逢おう
お前がその気ならお前が幾度も輪廻から舞い戻った時に逢おう
いつか神隠しから還る日まで――
おー!うめえなこれ!
エビコさん、オイラが大人になったらヨメさんにしてやってもいいぐらいなんだぜ!なー、考えといてよー?
[悪戯っ子はにひひ、と笑って、そしておむすびを食べながら神社をちょろちょろと動き回る]
エビコさんのさいきょーの焼きおむすびだってばよ!場所?あっちだよ、あっち。
[小学校の友達やすれ違う大人に、しっかりとアピールしまくるのだ。毎年持ってきている狐のお面も頭に斜めに引っ掛ければ、焼きおむすびの宣伝も目立つだろう]
[しかし身体はきちんと成長をしているようで]
[引っ掛けたその狐の面は]
[去年に比べて顔より少しだけ小さくなっているだろう]
どれぐらいか招いて送ったら
そのうち完全にこっちに馴染んでそんでニンゲンで暮らせるのかなあ
[一昨年よりも去年、去年よりも今年]
[数回通り道にお招きすればあっちに戻らなくてもいいような]
[幼い何かはそんな感覚がして]
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