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どうだったかしら。
[一歩、川面を踏んで。
バクが炎の向こうにあるように揺らめいた気がした]
あの時、こう。
[バクの右手に、手を、伸ばす]
─屋上─
[びゅうと鳴る風に白い耳を震わせる]
(バックン……手を取っちゃったの?
暖かかったのかな……)
[赤い目をぎゅうとつぶる]
(かみさまの花嫁に……?
あ、あれっ? 女の子、マシマロンとバックン……ひぃふぅみぃ……さんにん。
花嫁って3人も要るんだっけ……)
……あ。
[手を引かれる。よろけて素足が曼珠沙華の咲く地面を踏んだ]
いつ。
だれ。
[真っ直ぐな眼差しを受け止めて、一度、瞬きする]
……。
これは、違う。
[握った手の感触を確かめるように、一度、強く握って。
漂わせる視線は、川の向こう岸を振り返る]
(もしかして、バックンは……口減らし……ううん。きっと生きてる)
[その考えを否定するかのように、強く首を横に振る]
(カケオチ……でもマシマロンはバックンのお姉さんだから?)
[バクが『マシロ姉』と呼ぶのを、何やら誤解した様子で、首を傾げる]
(──)
[人間臭い仕種で腕を組んだ(短いのでクロスさせるのに精一杯)。
屋上から村を見下ろせば、ひときわ目立つのは精錬所の高い煙突。今日も煙が上がっていた]
(──耳のお姉さんと、金魚のお兄さんと……ウサギを美味しそうって言ったお兄さん)
[お祭りでマシロとバクと親しげに話していた人物を思い出す]
(あの人たちなら、何か知ってるかな)
[ぶるっと身を震わせる]
(お祭り会場に居るかな?)
[屋上から盆踊りの櫓が見える。
心なしか、人気が少ないようで─…]
今年も、お祭りが始まったね。
[一年前のことを思い出す]
浴衣……作ってあげたかったな。
[親しく話した少女のことを考える度、寂しさが込み上げた。神様じゃなくて閻魔様に会いたいと言っていた彼女は、望みがかなったのか。それに]
去年は二人消えた……。
[遠いところを見るような眼差しをした少年も]
二人とも、神隠し?
[ぷす、ぷすと音を立てながらモナカに針金を刺していく。会場を走り回る子供たちは、去年よりもさらに減った気がする]
…。
[神隠し、人攫い、家出。どれもピンと来ない。マシロもバクも居なくなる直前まで自分たちと一緒にいたというのに]
[ムカイを見ていると、一年前の光景が甦る]
ヒトダマが……。
[チラチラゆらゆら揺れる焔のようなそれは、人込みを漂ってやがてムカイの肩にそっととまって]
やだ……。
[真っ黒く凶凶しく膨らんで、そして消えた]
[ぐるりと見渡すと、会場の奥では例年通りムカイの手伝う姿が見えた]
あ、お洋服のお姉さん。
[呟くと隣の父親に怪訝な顔をされた]
なんでもねーよ。知り合い。
ちょっと行ってくる。
[立ち上がると準備の進んだ会場の方へ]
[準備を手伝う彼の姿からは、少しも邪悪さを感じないのだけれど]
どうしてなのかな。
[焔が示した黒い光りを思い出すとぞっとして、何となく腕をさする]
別にじんろう様を悪者にしたい訳じゃなくて、ビセの目には怖くて邪悪な印しに見えたってだけで……。
うぅ。うまく出来ないなー……。
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