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[アンの身体から離れた鬼火は、集められた人たちの周囲を漂う。]
自ら贄になりたがるとは、愚かな奴らじゃ
ただ攫うはつまらぬ
目的地に着くまでの暇潰しをしようじゃないか
二人を鬼に
一人は鬼の補佐役に
そして鬼に対抗するヒトの力は三つ
鬼を見分ける目と
死者の声を聞ける耳と
鬼から他者を守る手
鬼は死なない限り、ヒトを喰らう
ヒトは殺されないよう、鬼を見つけて殺せ
―電車の中、のような―
………で。
何処かしらぁ、ここ。
[気が付いた時には、電車の中に居た。
切符を買った覚えもなければ、改札を通った記憶もない。
不思議そうに辺りを見回し、首を捻る。]
刻限は明朝まで
それまでに鬼がいなくなったら 帰してやろう
鬼しか残らなかったら――誰も帰しはしない
さあ――楽しい旅の始まりだ
[揺らめきながら囁く鬼火は徐々に数を減らし、最後の一つとなった時、辺りを閃光で満たした後に消滅した。
その光が消え去った時、鬼火に選ばれた者達は、自らの能力に*気付くだろう*]
[気がつくと、列車の客席にいた。そして漂う青白い、火のにおい・・・いや、炎ににおいなんてあっただろうか?倒れるアンを見ながら、頭のスミは自分でも驚くほど冷静だった]
・・・おい、ウソだろ・・・?
これって、これってまさか・・・。
[起きた現実が信じられない。ということではなかった。この現実に、今自分がいることが信じられないのだ。
――この現実に、立ち会えた幸運が、信じられないのだった]
・・・そうか、来たんだ!ついに俺はみつけたんだ!!
いやまてよ、でも話に聞いていたのとはちょっと違うな・・・。でもまったく同じになるわけもないか。ただ、類型化されていることから考えると、やっぱりこの中に・・・。
[そういって、その場にいる人々を見回す。知っている人物、知らない人物。等しく、感情のこもっていない目で見やる]
ああ、そうだな。夢かと思ったけど。このにおいはリアルだ。ウミも、このにおいに囲まれていたんだ。そしてそこで・・・。そうなるとウミを探す前に、ここの原因になってるやつを探さないといけないんだな・・・。そうさ、投票だ・・・。ふふふ、楽しくなってきたじゃないか・・・!
さあ、誰なんだ!俺を、俺たちを、そしてウミをこんなところに連れてきたやつは!絶対見つけ出してやるからな!
[そう、全員の前で、楽しそうに宣言する。それが彼らの、長い一日の始まりだった・・・]
─回想・煌星学園廊下─
[真剣な顔つきで椎名の披露する知識に感心していれば、前方を歩いていた長澤たちに唐突に声をかけられる]
……っは!? は、はい!
いき、いく、いくます……っ! こんにちはっ……!
[びくり、と飛び上がって、勢いのままにこくこくと頷く。
懐っこく声をかけられたものの、目の前のグループの誰もに、見覚えがない。
上履きを見れば、皆1学年下であることを表している]
……しいな、くん。しり、あい?
[胸元を押さえて、逸る心音を落ち着かせつつ、動じぬ様子で応える椎名に尋ねた。
会話が弾めば、緊張した面持ちで応じつつ。 「一緒に行こう」という誘いには、どうにか首肯したはず]
ー回想・公園ー
[塾の生徒たちが来ないというのは意外だったが、こうして寺崎と会った以上は一緒に行かないわけにもいかない。
ーーいや、本当は誰も来なくても行ってみる心算ではあった。良い口実ができた、というのが本音だった]
優しい……、か。俺のは甘い、とも言うぞ。
[会う場所が普段と違うせいか、一人称がくだけていることには自分では気づかない]
[辺りを見回した時に見つけたのは、倒れたアンの姿と、青白い光の塊。]
二宮さん?
[声を掛けようかと迷ったその時、青白い火の玉から声がしたような気がした。]
…何、それ。
誰か悪戯でもしているんでしょう?
二宮さんも倒れてないで、起きなさい。
[火の玉のようなものが消えた後。
椎名の楽しげな声を聞いた。]
…椎名君まで、こういうときに冗談言わないの。
いくらオカルト好きだからってちょっと演出過剰じゃない?
[戸惑いと微かな不気味さを感じながら、椎名を窘めるような声色で]
[と、そのとき。
闇を切り裂くような警笛の音とともに、目も眩むばかりの光が辺りを包み込む。
何かを考える前に、とっさに寺崎を庇うように駆け寄った。
ーー強烈な光の中、怪しい炎に取り囲まれる女生徒の姿が浮かび上がった。
あれは……二宮?
3日前、塾ではしゃいでいた生徒たちの1人だ。
しかし、何故駅ではなく公園に?
ついさっきまで、いなかったのに。
そう思った瞬間、二宮の身体がぐらりと崩れ落ちる。]
二宮っ!!
[駆け寄ろうとするが、何かに足を掴まれたように動けない。
呆然とその様子を見届けて、光が去った後。
周囲を確かめると、そこはーー電車の中、だった。]
─列車の中?─
[何か警笛のような音を聞き、まばゆい光に包まれたかと思うと、いつの間にか場所が変わっていた。
どうやら列車のような内部。
傍らに小鳥遊が居る事を確認した後で、周囲をこわごわと見回す。こんな体験は後にも先にも初めてだ]
…なんだ、ここ…?電車の、中…?
[列車に乗り込んだどころか、改札を通った記憶もなかった。
ただ、分かるのは、周囲には同じく困惑顔をした複数の男女…そのほとんどが、顔を見知った学園の生徒だと知る]
お前ら…?どうして?
[何が起きたのか、すぐには飲み込めない。以前聞いたかもしれない偽汽車の噂についても、すぐには思い出せなかった]
…あ。
[そういえば水筒を須藤に貸しっぱなしだった気がする。
彼も此処にいるのだろうか。もしそうなら返してもらわないと。
ちょっとだけ、喉が渇いたし。]
−回想−
[学園を離れ、駅へ向かっている途中、村瀬がコハルと呼んだ三枝の姿や、もしかしたら近藤にも合流するかもしれない。
そうであるなら三枝、近藤にに軽くこんばんわ、と挨拶して名乗っただろう。]
意外と、たくさんの人くるのね。
やっぱ面白いから、かしら。
[ぽつりとそう呟く。
無論、自分もその一人ではあるが。
それだけ興味を持っていた人がいたということなのだろう。]
―回想―
先輩だったすか!さっせ。
[クルミの言葉にバクが上級生であったことを悟り、本人なりには多少敬語を使っているつもりだが態度や言葉はあまり変わらない。]
目的地一緒なんすから一緒にー
俺オカルトそんな詳しくないんすよねー
[合流した皆でオカルト話などをわいわいしながら駅に到着した]
―回想終了―
───!
[動揺していると突如悲鳴のような声を聞き]
二宮?おい、どうした?!
[小鳥遊と共に倒れた女生徒の側に駆け寄る。
身体にまとわりつく鬼火は本物なのか、幻想なのか。炎が消えた後で、恐る恐る彼女の身体を改める。
鼻の上に手をかざすが、息が当たらない。
首元に触れるが、そこに脈動はない]
な、んだ…これ。
[どこかで気が触れたような椎名の声を聞いた気がしたが解釈するまでに至らない]
−駅→電車の中−
[駅に辿りついて今は何時だろうか?
そう思って今何時だろうと時計を見る。
ちょうど針が0時へと刺すところだった。
警笛の音が聞こえたかと思えば共に眩しい光に目を瞑った。]
…はい?
[ここはどこもなにも、普段通い、見ている電車の中だ。
その中に先ほど一緒にいた人、知っている人もいれば、名前を知らない人も。]
[椎名の声の代わりに、やたらと響いて届くのは誰が発しているか分からない声。
鬼がどうとか、帰してやろうとか、…一体なんの事だ]
……。
[呆然としている片手には、小鳥遊から借りた水筒が握られている。
持ち主がその手から取り上げるのは、いとも簡単にできるだろう]
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