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[思い出屋村の一日目]
現在、定時更新が【07/08 23:00】になっております。
このまま進めるか、
ログのキリよいところで今夜更新するか、
一言メモにてご希望をお聞かせください。
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──「思い出屋」?
[説明するような男性の口調だったが、いかんせん意味が。
屋号なのか業種なのか]
いか焼き・福引き・お面売り……
[何かが心に引っかかる。]
[ウエストバッグを探って、財布を取り出す。]
お目当ては何かあるんですか?
[誘ってくれた人の後ろにつきながら、そう声をかけた。]
あら。
[神社の境内の並ぶ屋台の一角で目に入ったのは、先日婦人会に顔を出した男と少年]
いかやき、ふくびき、おめんうり…
[毎年真しやかに囁かれる噂話を思い出す。言葉を交わす二人の後ろをするりと通り抜けた]
[アセチレンランプと灯籠の明かりに、つやつやとした色白な顔の福引き屋の笑顔が浮かぶ。]
……美味しそうだ。
[店主の食べているのは、たぶん隣の店の売り物。]
[景品を見回した作家が指さすのは、
重ねてぴっちりとラミネートされた
分厚い『シツジノ学習帳17冊セット』。
…前日のご婦人が通りすぎるのは、
新井式廻轉抽籤器の回し取っ手を
慣れぬげに摘んだ作家の背後。]
シツジの学習帳ですかぁ。二本以上当たるなら僕も欲しいかも。
[製造元こそあまりメジャーではないが、なかなか使い勝手の良いノートである。]
もしかして、学校の先生ですか?
[そう尋ねる横を誰かが通り過ぎていった。]
… 美味しそうだ。
[福引き屋が食べるイカ焼きについては、
うまそうであることに作家も同意した。
感想を付け加えるに、]
正面から買うイカ焼きよりも、
たぶん、ずっと。
[隣屋台から手を伸ばす其れゆえに、
きっとあれは旨いのだろう――と]
[『1等が出たら、ごちそうするよ』。
――福引屋が、もちりと不敵に笑う。
『なんだったら、
"思い出屋"から買った思い出の話も』。]
… む、…
… いや、文筆業というやつだ。
[若者の問いには、遅れて応える。]
だから、これも"あたり"なんだ。
[堅物なりに判り難く道化てみせた。]
んー、そういえばつまみ食いって美味しいですよね。
[思わず、くすっと笑ってしまった。]
当たりますように。
[先客の背中にそう声をかけた。
にんまりと笑みを浮かべた主がかけた言葉は聞こえない。]
「 ガランガラン コトン 」
……あ。
[転がり落ちた小さな玉を見て、福々しい男が取り出したのは細長い箱──たぶん中身は鉛筆──。]
ノート、だめでしたね。
[鉛筆1ダースを手にした男に声をかけた。]
へえ、作家をしてらっしゃるんですか。
[男の返事に、目を丸くする。
脳裏に浮かんだのは、この人が、鉛筆を手に原稿用紙と眼鏡越しににらめっこする、そんな光景。]
ノートが当たったら、半分こしましょう?
[言って、福引きの器械の前に立つ。]
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