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ラウリとウルスラの仲間じゃないだろうし。あのケチくさい組織がわんさか人を送るとも思えないし。
だから手伝うよ?
[一気呵成に話し終えると、くーとおなかが鳴った]
……まったくもう、おなかがすいたんだよ、僕は!
[おなかを押さえて途方にくれた様子だが、アイノのナイフや、止まった列車の喧騒には気を配っている。
いつでもどこでも、自分に有利なところにいけるように**]
いざっていうときは運がいいほうなんだけどな?
まったく、見落としとかで閣下の部屋にないもんかねー……
[のびをすると]
疲れたわ……
[のろのろ*歩き出した*]
…。
[女は炎を見つめていた。
兎の縫いぐるみから出てきた手紙。
灰となり崩れていくのをただ…]
…久々だったせいで、
暗号を解くのに随分と時間がかかってしまったわ。
[無意識に親指を口元に持っていき、きりりと噛んだ。]
(これを託された意味は…?)
正直、荷が重いわね…。
[ゆるゆると首を振った。]
…!?
[立ち上がって廊下を出ようとしたところで、
激しい揺れが。壁に強く叩きつけられた。]
[しばらく衝撃と、受けた痛みに耐えていたが、
ゆっくりと立ち上がり、]
…どうやら色々と出遅れてるみたい?
[そう言って、一等客車の方へと向かった*]
―回想・またはフランス内務省機密書類―
[ヴァルテリ・シャルブネ―。
パリの裏通りに画廊を構えるその人物は、本名をアンリ・ルイ・フェルディナンと言う。
ブルボン家最後の国王、シャルル]世の庶子の家系の曾孫に当る。
庶子の家系と言っても、家系図に記される正当な血筋であるがゆえ、セーヌ河沿いのシャトーで、一族は何不自由なく暮らしていた。]
[その穏やかな暮らしは、彼が少年から青年に変わろうとする頃破られた。
ある日、とあるマダムの館の、馴染みの娘との一夜を過ごして戻った彼は、信じられない光景を目の当たりにする。
朝の光の中、かつて瀟洒な姿で河岸に佇んでいたシャトーは、今やまるで悪夢のように、黒く焼け崩れているのだった。
警察や、該当機関がシャトー内を検分している。
内部に入ることも叶わず―または入ろうとしなかったのか―、彼は野次馬たちから、シャトー内の金品、絵画が全て持ち去られ、城主と見られる夫妻、その娘と見られる焼け焦げた遺体が見つかった事などを伝え聞く。
その時、彼の胸に去来したのはどのような感情だったのか。
ともあれ、彼はシャトーに背を向けると、そのまま、消息をくらませた。]
[身につけていた僅かな紙幣と、宝飾品を売った金で、彼は裏通りに安いアパルトマンを借り、しばらく篭って絵を描いた。
その絵は、その後「さる貴族の、放蕩息子が金に困って持ち出したルネッサンス期の名画」との触れ込みで、街に溢れる新興成金達の一人に買われることとなる。
それが彼の、"La Maestro"と呼ばれる贋作師の、そして絵画泥棒の第一歩だった。
その後彼は、絵画に関する真っ当な仕事からそうでない物まで、広く携わりつつ、シャトーを襲った強盗団、そしてその黒幕を突き止め復讐を果たす。
―なお、その黒幕とは。
件の事件を仕組んだのは、彼の父が王政復古を唱える王党派に担ぎ出される事を―、そして何より、何をやらせても自分の上を行く兄弟の事を妬んだ、叔父の仕業であった。]
[復讐を終えると、今度は彼はシャトーから盗み出され散逸した絵画を取り戻して回る事業に取り掛かった。
ある物は買い戻し、またある物は盗み出したり、贋作とすり替えたりと、危険を冒しつつも着々と、長い年月をかけてその成果は実を結んで行く。
そしていよいよ最後の一枚。
それはどういう経緯か、ロシアのツァーリの元に所有されていると言う。
またそれは此度、他の名画数点と共に、ウラジオストックのツァーリの別荘(ダーチャ)に、シベリア鉄道を利用して輸送される、と美術界で噂されている。
目指すその絵画とは。
「レンブラントの初期の小品」と称される少女の肖像。]
[だんだんと意識がはっきりしてきた。]
アルマは―?ああ、一体何がどうなった?
[起き上がろうと、手を付くと何やらそこに違和感を感じた。
急ブレーキのショックで、運転席の床の羽目板が一枚ズレている。
そのまま、視線をそこに移すと、運転席の、床の下に油紙で厳重に梱包された、薄い箱のような包みがいくつか目に入る。
状況を理解して、きらりと画商の瞳が光った。]**
なるほど、運転室なら常に人目がある故、隠すには安全と踏んだか。
うむ、厳密には、これが「財宝」ではないのかも知れんが…。これさえ手に入れば、わしは充分。
中を逐一確認している余裕は無いが―、まあこれが絵である事は確かだろうて。全て戴いて行けば問題あるまい。
はてはて、どうした物かな。
最早ウラジオストックまで行く事もなかろう、このまま自室に帰り、無電で迎えを呼ぶか。
本物の「財宝」も別の羽目板の下にあるのだろうかな?
[時間は無いと理解しつつも少し迷っている。]**
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