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―― →教誨所 ――
[落ちていたメガネ――それがオトハの物かは知らない――を拾い上げ、決めポーズする屍人アン]
18年間無遅刻無欠席だもんね。
[説教机をずらして、床の隠し扉を開いた。
闇の奥底から、びちゃびちゃという音と、秒針の音が*聞こえる*]
「 『助けて』 」
「 『殺すしかないの』 」
[何時の記憶。
微かに、赤涙と妖しく笑う少女のあどけない顔。
自らの指先は赤く、そして相手の持つバットは赤く滴っている。]
『―― 5時55分**秒を ――』
[大音量のラジオが]
[昭和86年8月 都内 某所]
生温い部屋の片隅、
机の上に無造作に広げられたノートが一冊。
申し訳程度に付けられた空調の微風に、
ゆらりと揺れている。]
[ノートの持ち主は、平家 直海。
数十年教鞭を執り、教育に従事してきただけの
ごく在り来たりな一介の教師である筈の彼女が、
何故此処まで熱心に、
村の謎へのめり込んでいるのか。
当の本人しか、知る由は無い。]
[ふと、動く空気にページが大きく捲れ、
新たな文字が夏の日差しに晒された。
「ツチノコ」「土着信仰」「受け継がれる民話」
「外部との接触を頑なに断ち」「独自の文化」
「三十五年前」「災害」「傷害事件」「眠り姫」]
[凡そ日常ではあまり目に触れることの無い単語が、
そのノートには、極当たり前のように*記載されていた*]
「 … 教誨所 ‥ あそこに 不朽体の… そして… ――が 」
[何時か、自らの口が語った言葉。]
「 『境界は教誨に通ずる』 」
[――…破かれた地図、繋がれた地図。
異界の中で、場所が繋がる。異界の裡同士の境界。そして…――]
―― オ知ラセシシシシ ――
[大音量のラジオが時報を繰り返す。
さっきから同じ時刻のような気さえした]
『繰り返してる』
[無意識の思いを見ないようにして歯を食いしばる。詔は導くことを己はよく知っている。撃たれた右腕、自分の体液でぬれた手を杭に添える。肌の焼ける様な音、熱]
いいから『そいつ』を寄こせ!
[有象無象の記憶たちを蹴散らすように叫び――
杭を中心に広がった光に突き飛ばされるように、地面を転がった]
[不浄を討つ――知らない。
杭の名前――知らない。
神の名?――知るもんか。
うるしにかぶれるだとか。
正しい時を刻むだとか。
神に捧げる体だとか。
ヴェールをかぶった眠り姫だとか!
“きょうかい”だとか!!]
……。
[地面をいくらか転がって]
―― 5時55分**秒をお知らせします ――
[その声を聞いた]
[サイレンの、音]
――っ!
[否、それは堕ちたる神の呼び声。
両手で耳を塞ぐことなど、まるで役に立たぬ大音量で脳に刺さる]
[絶叫、は――
警官の体を借りるように。ただその身を折って]
[はらり。手紙が地面に落ちる頃、ゆらりと身を起こした]
[昭和86年9月 都内 某所]
[残暑厳しくも、冷房はゆるくそよぐ風は変わらず。
一角に置かれた机に広げられたノートもまた、
持ち主不在のまま、同じ場所に居住まう]
[緩くうねる風に、ノートがまた一枚、
音も無く捲れる。
几帳面な性格が窺われる文字が、
無駄な隙間もなく列ねられた片隅にもまた、
奇妙な文字がいくつも並んでいた。]
『 銀水 』
[廻る記憶は…。
乃木は、胸に刺さる杭に両手をかけた。]
…を… ”これ” *、
[杭から溢れ出した浄化の光は、ズイハラの前に、まるで『手に取れ』とばかりに集まる。一方、乃木の身体は『魔切り』の影響でか、痙攣を繰り返しているようだ。]
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