182 放課後の図書室
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…はあ
[諦めたようにため息をついて、校庭の見える窓際まで移動すると、外に目をやった。
陸上部が短距離のタイムを計っている。
あんなふうに思い切り走るのは、どんな気分なんだろう。
気晴らしのために窓際に移動したはずなのに、なぜだか悲しくなってきた。]
(6) 2015/06/05(金) 01:26:43
[今日はもう帰ろうか。
といっても、母親が迎えに来るまで待たなければならないのだけど。
図書室にいるよりも、教室で明日の予習でもしていた方がいいのかもしれない。
もう一度ため息をついて、くるりと車椅子を反転させると、ふと机で寝ている男子生徒が目に入った。>>3]
(7) 2015/06/05(金) 01:28:37
(8) 2015/06/05(金) 01:29:26
学生 チカノは、メモを貼った。(内容)[メモ/履歴]
2015/06/05(金) 01:36:53
学生 シンヤは、メモを貼った。(内容)[メモ/履歴]
2015/06/05(金) 07:42:17
「君さあ、コウサカ先生と仲良いよね」
カウンターの奥で分厚いハードカバーを読みふける委員長が、独り言じみてつぶやいた。彼女は僕のひとつ先輩で、今時珍しい、きつく編んだおさげに黒いセルフレームのメガネという図書館女子のイデアのような存在だ。
「仲がいいっていうか」返却作業の手は止めずに、僕は答える。誰かさんが働かないせいで、処理すべき本が目の前に山積みにされていた。窓の外はそろそろ夕暮れの気配が近づいている。下校時刻も近い。「まあ、趣味?が?近いし?」
(9) 2015/06/05(金) 08:48:33
コウサカ先生は図書室へも足繁く通っていた。司書の先生によると、自然科学に関する蔵書はほとんど読み尽くしているらしい。僕が作業をしているところへやってきては毎度おすすめの本やらを置いて行くし、まえに勧めた本の感想を尋ねてくるものだから、僕の読むスピードもかなりのハイペースになっていた。
「最近の学生は、あまりこういうのは読まないからね」いつだったか、先生はぽつりと言った。「ファンタジーなんかはどうにも苦手でね、まあ、SFやミステリーなら、多少は読むんだが」僕も同じだった。「エンデは挫折しました、なんか読みきれなくて。映画も観てません」「そうだろう」「クリスティなら全集読みましたけど」「僕もだ」あの時、心なしか嬉しそうにした先生は、同好の士を探していたのかもしれない。
(10) 2015/06/05(金) 08:49:01
「知ってる?あの先生の奥さん、元々ここの司書だったんだよ」委員長は読みさしの本をぱたんと閉じ、鞄にしまいながら言った。「へえ、初耳ですね」この一年半、そういえば家族の話は聞いたことがなかったような気がする。「うちのお姉ちゃんに聞いた話だけど、すっごい熱烈アプローチしてたって」「全然、想像つかないですね」「でしょ」
話の落とし所を見出せない僕は、わざと作業のペースを上げた。「君は?」唐突に、謎の問いかけが挟まる。「はい?」思わず手が止まる。「私の知る限り君毎日いるし、誰かお目当てでもいたりするのかなー、って」委員長は室内をぐるりと見回した。
その言葉の意味を理解するのにたっぷり3秒を必要とした。僕は二回、瞬きをして、深呼吸。吸い込んだ空気はそのままため息になった。
(11) 2015/06/05(金) 08:49:31
「ないですね」「ないんだ」「はい、全然」「つまんないの」
(12) 2015/06/05(金) 08:50:00
「んじゃ、あとよろしくね」と言い残し、委員長は去って行った。あとも何も、最初から僕が一人で作業をしていたからその言葉はフェアじゃないな、などと考えながら、僕はいまだ山積みの作業を終えるのにかかる時間を頭の中で再計算していた。
(13) 2015/06/05(金) 08:50:35
[こちらから何もしなきゃ気づかないだろ。
そんな風にタカをくくっていたら、あろうことか車椅子はこちら側に近づいてくる。
予想外の展開に少し肝を冷やした。
それほど離れていない窓際にいる車椅子に乗った女子。
彼女は憂いの見える瞳で、窓の外を眺めている。>>6]
(14) 2015/06/05(金) 11:16:47
[考えてもなかった状況に思わず見つめ続けてしまっていたらしい。
溜息が聞こえてすぐに、車椅子がくるりと反転して、こちらに向いたのに、目を逸らすのをうっかり忘れた。
しまった。
思った時には既に遅く、視線はバッチリとぶつかってしまっているような……。>>7
今から目を閉じても手遅れか。目を泳がすことだけは堪えて、平然を装った。
頭を少しだけ浮かせて、会釈だけしてみる。]
(15) 2015/06/05(金) 11:27:10
[やはり見られていたようだ。
目が会うとその男子生徒は会釈を返してきた。>>15
会釈をされるとは思っていなかったので一瞬目を丸くするが
すぐに見られていた理由に思い至り、憮然とした。
車椅子に乗った生徒なんてそう多くない。
『2年B組の近藤チカノさん』と言えば
『ああ、あの車椅子の…』と答えが返る程度には、顔と名前が知れ渡っている。
だから好奇の目で見られることには慣れているし、普段なら気にしない。
いや、気にしないよう努めているのだけれど。
この時は虫の居所が悪かった。]
(16) 2015/06/05(金) 12:59:47
……何か?
[場所をわきまえて、抑えてはいるものの。
明らかに不機嫌そうな声を発してしまった。]
(17) 2015/06/05(金) 13:00:16
……いや、
[言葉に詰まる。
不機嫌そうな声色に、必死に言葉を探した。
好奇の目を向けられるのが好きな人など滅多にいないだろう。>>17]
……あんまり、ここでは見ない顔だから。
[辛うじて出たのはそんなセリフ。
あながち間違いでもないし、少し補足を欠いただけだ。
相変わらずの無表情のままではあるが、すっかり眠気は覚めていて。
しかし生まれつきのぼんやりとした目でチカノを見据える。]
……何か探し物か?
(18) 2015/06/05(金) 14:53:48
[本棚と本棚の間。
本を探そうと思ったけれど、思ったような本がないなとぶらぶらする。そして、意味のない箇所で立ち止まった。
佇むだけの、本人にも自覚されない遊び。
隠れているわけでもなければ、堂々とするわけでもない。
ただ、本の多いこの場所にいるのが楽しかった。
ひそひそ話をして顰蹙を買うような楽しみよりも、こちらの方が好きだ。自分らしい。
思いながら室内を見てみると、とある二人>>17>>18の姿が映った。どうも雰囲気的に、雲行きが怪しい。]
(19) 2015/06/05(金) 19:03:41
[「ちょっと男子ー!」
いや、私はそういうキャラじゃない。
「まあ待ちたまえ、何があったんだい」
そういうキャラでもない。
それに、近藤さんといえば車椅子で有名だ。私は向こうを知っているかもしれないけれど、あっちは私のことなんて知らないかも。どっちが悪いかなんて分からないし見てもいないのだから、私は何も見ていない。そう、それでいいのだ。
何だか相手の男子は頼りなさそうだったけれど、助けを求められたわけでもないし。目を逸らして別の方を見る。]
(20) 2015/06/05(金) 19:06:09
[私はもともと、そう派手な人間じゃない。友達の中でもいちばん地味だという自覚もある。明るくて人気のあるナオはみんなから好かれてるし、弦楽部のハツネなんて男子からも女子からもすごくモテる。……もしかしたら、幼馴染のあいつよりも地味かもしれない。眼鏡の癖に生意気だぞ。
頭の中でぐーるぐる。
誰にも言わない思いはコーヒーとミルクみたいに混ざっていって、変な自己嫌悪かはたまた八つ当たりか、することもないしぐるぐるとその場で回ってみたりして。目が回ってきた。私は何をしているんだろう。]
(21) 2015/06/05(金) 19:13:45
[見ない顔だと言われたのは意外だった。>>18
相手も自分のことを知っているはずだというのは、思い上がりだったのかもしれない。]
…そう、ですか。
ああ、いつも寝てますもんね。
[少し面喰いつつ、皮肉交じりにそう結論づける。
授業を終えて迎えを待つ間、大抵は図書室か教室で時間を潰す。
名前や学年こそ知らないものの、いつもここで寝ている彼のことは何度か見たことがある。
本も読まずに寝るくらいなら、なぜ帰らないのだろうと不思議に思っていた。]
(22) 2015/06/05(金) 19:14:18
…別に。
[不機嫌な表情のまま、探し物かという問いに反射的に答えて、少し後悔する。
探していた本のことを話せば、取ってもらえるかもしれないのに。
できることは自分でしなさいと言われて育ったせいか、人に助けを求めるのはどうも苦手だ。]
気をつけた方がいいですよ。
あなたにとっては見てるだけでも
このご時世、セクハラとかストーカーとか言われかねませんから。
[気取られないようにと焦って、さらに皮肉を口走ってしまう。]
(23) 2015/06/05(金) 19:17:30
[違う。
こんなことが言いたいんじゃない。
これじゃ私、ただの嫌な女だ…]
(24) 2015/06/05(金) 19:17:58
[いつも寝てますもんね。>>22
本も読まずに。そう見えない言葉がついている気がして、少しだけ反応に困った。
確かに、図書室は本を読むための場所だ。
寝るための場所では勿論ない。
そう思うのは至極当然なことで、口に出されたとしても肯定するしかない。
こんな体勢なままではいけないかと、伏せるのだけはやめて座り直した。
背はピンと伸びずに猫背のまま。]
(25) 2015/06/05(金) 19:49:10
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