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潤沢ロースボックスなんて、願いかなわなそうな名前っすよね
[へらへらと笑いながら検査室に入る]
で、何かわかりました?
[純太の方へ顔を向けながら、定位置に座ろうとしたとき
ピピ、と電子音がポケットから響く]
……また、だ。
[やれやれと息をついてポケットから端末を取り出した。
表示は『iNcOrReCtO』 - 不正解 - だ]
[廊下の向こうへ進もうとするハツネへ]
いや、僕は何もしてないよ。
僕が部屋を出たときにはまだルリちゃんはここにいたんだし。
君と、壱乃宮さんと一緒にね。
[心外そうに言葉を返し、ハツネの背を見やった]
そう、ですか?
[ユウキには、そうとしか言えない]
見てきます。
[ズイハラの部屋がある廊下の途中で、既に事態は予測できた。
開きっぱなしの扉に溜め息混じりに近づいた]
[別棟に繋がる受信機から新たな声]
ルリちゃん、そこにいるの?[思わず声をあげてから、指輪の声はアンしか聞こえないんだった、と思い出した。]
ありがとう、自分にスパイを誘導してくれたのね。
私とハツネを守ってくれたのね。ありがとう。
[それでも送信機に乗せる感謝の言葉。アンが伝えてくれることを*祈った*]
「イヴをつかまえるの」
研究所の外でレンと会ったのはその日が最初だった。
目深に帽子を被り、サングラスをかけた彼女。「それ逆に目立ってるよ」とツッコミを入れるべきなのか迷い、結局飲み込んだ。
公園のベンチは、前日の雨の湿り気が少し残っていた。
「つかまえて、どうするの?」
「どうしたら楽しいかな?」
レンの綺麗な色の唇が弧を描いて、密やかに言葉を吐き出した。
その問いに、私はくすぐられたような可笑しさを感じ、声をあげて笑っていた。
[ふと振り向いたのは、何か音がした気がしたから]
またか。
[廊下を浮遊する蝶は静かに近付いて来て、差し出した左手に止まった]
レンなのか?
[蝶が指先から飛び立つと同時に、ブレスレットがバラバラと床に散らばる]
[ジュンタのPCに送信した中には、マスターとの古い記録も含まれていた。]
私にはわからない。何故マスターは笑ってくれないのか。
[うなじのコードを通じて送信される0と1の羅列。それが自分の意識の全て。そう感じることさえも、プログラムの一部。”デジタル”]
私の身体も意識も、”デジタル”で現され、作り出されている。
だから、私は、デジタルではない、”アナログ”なものに憧れる。
数字やプログラムで作り出すことのできない『心』が欲しい。
……『わかちあいたい』…… [ルリの言葉を再生して、呟いた。]
[送信を終えて、コードを抜いた。]
ネギヤさんのポケコンをつかって、ルリちゃんとアンさんが何とかしてくれると良いけれど。
[うなじのインターフェースカバーを閉じた。]
……ルリちゃん、ブレスレット落としたみたい。探してきますね。
[コードをジュンタに返して、検査室を離れた。]
ブレスレットかあ。
[検索モードに切替え、廊下の床を探したが見つからなかった。]
あら、これは?
[見つけたのは、小さな石が一つ。]
ブレスレットの石かしら?
[拾い上げ、ポケットに石を入れた。]
一通り覗いてきたけれど、ブレスレットは落ちてなさそうね。 どうしたのかな。
[冷えた手先を暖房器具にかざして暖める。]
[饅頭に手を伸ばしながら、小声でユウキに囁いた。]
あのね、ユウキさん。ユウキさんがスパイじゃないと思うから、話します。
イブの防衛システムに細工が仕掛けられていて、それが影響を及ぼして、イブは明日には強制スリープモードまたは自己破壊を起こします。
そうなれば、イブ自身からイブの情報を盗むことはできない。
スパイが動くとしたら今日しかない。
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