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[軽業師が話しかける言葉は、全て届いてはいた。返す事が出来なかっただけで。煤煙に包まれるまま、額同士を一方的にぶつけ合わせられた時も届いていた。]
ちがう
[最後の音>>10へ。血の泡が弾けるような呟きは軽業師の耳に届いただろうか?]
声が出せぬ訳では無いようだな。
ほう……
[薬剤を、包装ごと口に押し込んで飲み下す]
……。
そうだ。
一つ誤解のないように言っておくが。
私は別にお前の事が心憎くて刃を抜こうとしている訳ではないのだよ。
……だが、お前が知らぬうちに殺した者の中に、私の愛するものが居たかどうか、それを判ずる手段を私は……持たない。
君は……ふふ。少しは気安く思ってくれていたようなので、あえて、こう言うが。愚かだと笑ってくれても構わないよ。
[何度か息をつきながら語り]
[上げた目は、薬効で真っ赤に染まっている]
[笑うように、何度か喉を鳴らす]
くく。そうだ、まだ報酬を払って居なかったね。
私の命で贖うかい?
[*口元に笑みの形すら浮かべて。*]
・・・失礼します。
今宵、神の供物となるドロテアの姉でございます・・・。
最後に、別れの挨拶をしたくて・・・
妹は、今何処に?
[儀式を取り纏める面々である白装束に尋ねる。
彼は場所を伝えた後、彼女は大いなる犠牲になるだの、魂は浄化され云々等長々と宗教について話すのだった]
――・・・あぁ、もういいヨ。
お宅らの宗教感、興味無いネ。
[白装束の会話を遮るようにそう告げる。
予想外の反応に戸惑いと苛立ちを浮かべる白装束の口を掌で覆うと]
――信じられるのは己の『剛力』のみ。
それがこの街で唯一つ、私達が信じれる戒律ヨ。
[そう言い捨てると同時に、小太刀が男の首筋に紅い線を描き
白装束を朱く染めていく]
早く終わらせて、バカンスの計画でも立てるネ。
[刃についた血液を拭いながら、女は目的地へと向かった**]
― 路地 ―
[一度店へと戻れば、仕事用の道具を詰めた荷を抱え、再び外へ。
頼まれ事は、明確な依頼で無くとも一応は調べておくかと、話題の場所へと足を向ける。]
……あン?
[通り抜ける路地の影に、見知らぬ黒い帽子>>3。
眠っているようではあるが、無造作にもほどがある。
死体にも見えないと、殺気を向けるではなく単に睨みつけるも、眠っているのならば気付かれないか、あるいは。]
旅人カ……命知らずカ、自信家カ。
この辺りハ物騒モ多い、気をつけることダナ。
[目深な帽子が上がる事はあっただろうか。
今は仕事を優先するも、何か返る声があれば話くらいはしただろう。]
― イケニエの祭壇近く ―
[祈る弱者に、単なる野次馬に、あるいは宗教じみた白装束に。
その周囲には、普段とは比べ物にならないほどの多くがざわめいているか。とはいえ、人気さえ疎らな常よりも、というだけで然程多いとも言えない人数。
その中に情報屋は紛れ、周囲から聞こえる声を拾う。]
……バカバカし過ぎテ反吐が出るゼ。
[ぽつりと落とすのは、あまりに滑稽なイケニエと宗教論について。
一度その近辺から離れると、まだ高さをある程度保つビルの階段を登る。
天井がすっかり消えた最上階、真上は羽ばたきが在れば直ぐに見つけられる、赤く濁る空。
粗末ながらも多少の効果を期待できる集音器と双眼鏡を構え、祭壇を伺って]
……ハハッ、あのネーさんは派手だねエ。
[飛び散る飛沫に染まった白に、苦笑した。]
―砂塵の街―
[塵に塗れて倒れ居る旧友をちらと見遣る。
街の乾きを潤す如き有体が、然し『否』と
――贄の肩代わりでないと聴いたその意が
耳の奥へ残る。ゆっくりと、視線を戻す。]
…
[薬包含むサンテリの様子には面持ち曇るも、
薬効の廻りゆくと思しき間も声は遮らない。]
ん。… ん
[渡すのはひとつ、ふたつとごく浅い頷き。
声でなくとも言を継げるはずの手は握って]
[つられ、感じる息苦しさに目を細め――
軽業師は、ふと
真っ赤な相手の目から
唐突に僅かだけ上へ視線をずらすと
サンテリが剣携える逆方の脇へと疾駆した。]
[ごぼっ]
[ごぷっ] [ぷっ]
――――…ひゅ……はぁ―――……
[一際大きな血の塊が頚から吐き出された。ドクリ、と軽業師の指で千切られた筈の血管の表面が傷を繋いでゆく。]
……げほっ…ぅ………うぅ……
[気管から這入り込んだ血液を唾液で薄めたものが、口元から垂れて、砂塵と混ざり合う。]
う……うぅぅ……――
[両手の指先に力が篭り、手と額を支点にして身体が僅かに持ち上がった。]
[―――その研究施設では非人道的な研究が行われていた。其れが、コワレカケタ世界に置ける救済の術であるのか、抗する為の技術を探し出す為であるのか、技術力の高い有翼人と対等に在ろうとする為なのか、真実は研究施設を設けようと考えた者の頭の中にしかない事だろう。]
[研究施設での人体実験は多岐を極めた。試験管>>0:24で人工的に生み出された生命体の結果は、より完成度の高い存在を生み出す為にフィードバックされ、実験体自体は永劫『檻』の中に鎖される侭だった筈だ。]
うぅ……――――
[べたりと瓦礫に血の手形が付く。『縄』の痕は其のままに、頚の傷痕から血の滴りは殆ど止まっている。
其れでも、脳も心臓もなくなれば、死ぬ。]
――――……―――
[そして、餓えても。]
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