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……獏君。やめて下さい。
栗田さんはもう……
[自分を傷付けてグリタに血を飲ませようとするバクには、それだけを言って。助力を求めるようにドウゼンの方を見た。
テンマに(>>17)問われ]
僕が……? 違いますよ。
僕は「犯人」でもなければ、その協力者でもありません。
[はっきりとした調子で答える。
もたれるように意識を失ったニキに、その場に膝をついて座り、ひとまず支えるように]
……兎の声が聞こえる、と。
そう言っていたのが……その力が。
頭痛の原因、なんでしょうか。
- 回想・いつかの病室 -
〔父母が約束に、と飾ったハナミズキ。
其れは床から、寝転んだベッドまでの高さ。
少し寝返りを打てばその姿が視界に飛び込んだ。〕
――、キミはいつも元気だね
〔杏奈は口許に薄い笑みを浮かべ、
寝返りの先へ小さな言葉を投げる。
言葉を受けるハナミズキは窓から入る、
微かな春風を纏い返答する様に揺れた。〕
いつか……。
〔寝転ぶ唇が、ゆっくりと言葉を紡ぐ。〕
いつか、ね。
キミを必ず、植えてあげる。
キミの仲間が沢山いるんだって、さ。
お父さんとお母さんと一緒に行きたい。
――、いつか。絶対だから。
〔絶対と続ける唇は、
定時の検診が迫っている事に気付き、
きっと笑みを消し、ため息をつく。
希望と現実の狭間、杏奈はハナミズキを見つめ。〕
生贄を出そうとしてるのはお前の方だろうに。
[孝治へ攻撃の矛先を向け始めた男に、毒づく。]
畜生、畜生、畜生。
生きていれば、あんなヤツ生かしてなどやらなかったのに。
[自己欺瞞の言い訳。かつてと同じた記憶のある、本能的な忌避感。
しかし、父の必死にすがるバクを見れば、倒れるニキを見れば、それを支える少年を見れば、逃げたら──それこそ次は4つの死体が生まれる気がした]
[戻ってきたテンマをじいっと見つめる]
お前は──天馬君は、孤独なのか。ここが、オレたちが誓いを──村を捨てたからか。
[子供の頃に聞いた言葉が思い出される。
──タァ坊。死んだらカミサマのところに行くのよ]
ここじゃァ、死者は、神のものだった。
誰もここでは死ななくなったからか?
[──ハナミズキの木になるの。カミサマは寂しがりやさんだから。
華やいだ甘い声は、もう顔さえも定かに覚えていない母のものか。確信を持てぬまま、寂しげに見えるテンマに問いかけた*]
[意識を失った私はまた夢を見る。チェロの過ごした長い長い悠久の話。
100年前、村で人間の罠にかかり傷ついた兎は足を引きづりながら山へと戻る。魂をハナミズキに還すべく木の下まで向かうと力尽き役目を終える兎は眠るように横たわった。
兎から木に戻った私は山を降りたことをひどく後悔した。
かつての大好きだった人間への思いは自分の愚かな行為で壊してしまったと思いこんだからだった。
木は人を避け鳥達とだけ触れ合うことにした。]
[それから90年の月日が経った。
これまでずっと生きてきた木はここにきて初めて衰えがあらわれる。
いつも聴こえていた鳥達の鳴き声がだんだんと聴こえなくなり.....
咲く花の数は年を追うごとに少なくなっていく....
唯一自分の存在を確かめられた木々を揺らす風すらも感じられないほどに死の静寂がゆっくりと確実にまわりをつつみ始めたのだった。
木は初めて体験する孤独と寂しさに大きく震えた。赤子のように泣き。木は死を恐れるようになった。
木はその死を否定するため山に定められた禁を再び犯す。
最後の力を振り絞り兎を木の下に呼ぶと兎に魂を乗せ新たな命を兎として授かろうとした。]
そんな筈………
[ドウゼンとタカハルに声をかけられ、泣きそうな顔を上げる。
指先に感じる冷たさは現実。
ドウゼンから止血を受け、ゆっくりと視野が広がっていく。
ペケレの血だまりとその側で倒れ伏しているフユキさん]
せんせ、雨園君。ありがとう。
ごめんなさい。本当に、ごめんなさい。
[震える声で、止めてくれた2人に言った。
倒れてる女の子から血が出ていないことだけ見てほっとする]
[けれど衰えていたのは体だけでは無かった。魂もまた衰えていたのだ。
木はまた兎になる。しかし兎になっても状況は変わらない。体は動かず目もほとんど見えず音がない世界。死の運命は木を逃がしてはくれなかった....
さっきまでの自分、1490年生きてきたハナミズキ。その下で兎は自分の最後を覚悟した]
[動けない兎は目を閉じて最後を待とうとする。しかしそこに一人の少女が現れた
それは幼い日の自分だった.......
その少女は動けない兎を優しく抱き上げると家へと連れて行き。兎の介抱をする。
相変わらず一人では生きていけず体も動かないままだったが兎の体力はどんどん回復していく。
兎は
木は
忘れかけていた大好きな人間への思いをその少女に抱くようになっていった。]
[管理棟から出てくる義兄が見えた。
無言で立ち上がり、のろのろと上着を羽織る。
ぱさり、と幽かな音がして、足元に落ちたのは銀のタグ。
義兄に預けていたはずのそれ]
…………。
[無言で拾い上げれば、その中の獏は腕に小さな傷がついていた]
オッサン。オッサンが、親父を、皆を殺したのか?
俺が、親父を止めたりしなければ、こんなことにはならなかった?
[真っ赤な手でタグをぎゅっと握り締め、
ドウゼンと義兄のやりとりをしばらく見てから小さな声で尋ねた**]
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