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[しかし日記を手にしたドロテアの父は、暗く澱んだ瞳のまま。
『違うというのなら、人狼を、娘を殺した者を差し出せ』
ただ、呪詛のごとく、呟くのみだった。]
……うわあ、一番やな展開……
[ぼそりと呟きながら、呆然とするウルスラや、証拠がどうこう言うラウリを見る。]
この町の森の狼はふつう町の近くに出てこないし、人も襲わないんだよね……
ほかに食べる動物がいるから――
[狙われるのも、人間じゃなくて町で飼ってる家畜だったりするのだから、人間が狼に襲われることなど、ほとんどないと、告げる。]
―― 森の空家 ――
ひっ!
[足元を走る鼠に声を上げる。
窓の外には人の気配。
覗き込むと、運ばれるドロテアが木々の合間に見て取れた。]
婆様、どうしよう。
[羊皮紙が入った封筒を胸元に隠し、蹲った。]
[ドロテアの死を契機に、今や村衆の意見は
人狼などいるものかといった意見の壮年の男らから
迷信深い長老ら寄りのものへと様変わりしていた。
挙げられた名の者たちは異を唱え、ペッカも言う。]
人狼なんて居ねぇ、たァ言わねえよ。
世間は広ぇ。海にゃ、
熊よりでけぇ烏賊もいるし、歌う魚もいる。
空飛ぶ魚を喰ったこともあンぜ。
この村にだって、何か居たっておかしかねェ。
―― 森→ ――
……ドリーが? どうして?
[行き会った人が『人狼』について話し掛けてくるが、どこか歯切れが悪い。
アイノがその理由を察したのは、他でもない、ドロテアの父親に手を引かれたときだった。]
待って下さい、日記って、何のことですか?
離して……!
ドロテアの仇は、討つさ。討つだろ。
この村の者ンならな。
けど、――俺ラを疑って――
どうすんだ、全員縛り首だってのか?
[名を挙げられた者を見回して、
ペッカは冗談じゃねえと吐き捨てる。
中に、印象のよくなかったラウリの姿を見つけると]
よう手前ェ、こんな時だけ
ナニしおらしぶってやがんだよ。
そうだよ、それに俺達のなかに人狼がいるって決まったわけでもないだろう。
[ペッカ>>24に追従するように頷きながら訴え。]
それに人狼はもう逃げたかもしれないじゃないか。
間違った人を殺してしまったら、どうするんだよ。
[ラウリへと言葉を向けるペッカの姿を横目に、町の人たちに訴えてみる。
けれど、ドロテアの復讐を求める人たちには届かず、いらいらと髪をかきむしる羽目になるだけだった。]
例えあたしが人狼だとして、ドリーを襲うわけないじゃないですか!
[ドロテアの父親が怯んだ隙に、腕を払って駆け出した。
雑踏の中、見慣れた背中にぶつかるように走り寄って、名を呼んだ。]
ペッカ……
ねぇ、どういうこと?
……僕には理由がありません。僕は旅人なんだ、ここで誰かを襲う理由はないし、彼女にだって恨みはない。
僕が犯人なら、死体を隠して時間を稼いでその間に村を出ればいいだけの話です。
[非力な少年は考える。いきり立った村衆を前に、感情的になるのは得策ではないと。『愛想』はいまこそ使うべきなのだと。
だが、水夫にけんか腰に話しかけられれば、メッキはすぐに剥がれた。]
理由があるのは村の人でしょうねぇ。殺してしまえば逃げ場がない。
僕がいる今のうちに事件を起こして、僕に罪を着せたかったんじゃないですか?
『間違った人を殺してしまったら』――
ドロテアの親父さんは、それでもいいだろうよ。
[訴えが聞き入れられず苛立つベルンハードへと、
ペッカも焦燥を滲ませながら低い声を添える。
犯人を引き渡せと言われ戸惑うウルスラへは、
苦りきった面持ちを向け]
ウルスラ姐、取り合えずわかったとでも
言っとかねえとやばいんじゃねえか…コレ。
おっさんたちまで見境なくしてやがらァ。
…わかンね。
けど、やべェし。
[背に飛びついてきた相手がアイノと知ると、
ペッカは眉根を寄せて片腕を其方へと回す。
剣呑さを高める村衆の視線からアイノを隠す態]
ちっとは、聞いたろ。
ドロテアの仇を討ちこそすれ、
喰い殺した犯人にされるなんざァ、真っ平だ。
[はぁ、と僅かに吐息をこぼす。]
いったい、どうしろってんだよ……
[アイノがやってきたのを見る。
ペッカやウルスラ、ラウリへと視線を移して、もういちどため息をついた。]
俺らの中に犯人が居なかったら住人全員殺していく羽目になるぞ。
それでも――
[『やる』とドロテアの父親の声が重なれば顔を蹙めた。]
返して。
あなたに出来ないなら、師匠でもなんでも呼んで、ドリーを生き返らせて。
[声を荒げることもなく、淡々と、ラウリへ向ける言葉を紡いだ。]
へーえ、いの一番に罪を着せられかねねェ
立場っつーのはわかってるみてェじゃねーか。
[ラウリの饒舌さにさも感心するといった調子で、
ペッカは太い指でラウリの額を押遣る仕草をする。]
いきなり弁解から入るところが凝ってらァ。
[取成す語調のウルスラの顔を立ててか、
ペッカはラウリをそれ以上挑発するのはよした。
――そして、>>32背へつくアイノが
呼気と共に腕へ籠らせる呟きを感じ、]
…、お前ェ。
[問う間も挟まずに、否定するアイノの言に
ペッカの元から腫れぼったい瞼がひとつ瞬いた。]
……人を生き返らせることなんてできたら、それは手品じゃなくて魔法ですよ。
[水夫のように敵意をぶつけてくるならともかく、少女の言葉は予想外だった。]
僕にはできませんし、師匠にも無理です。それに……
[一度言葉を切った。]
奪ってないものを、返せと言われるのは心外です。
[彼女からよくわからない圧力を感じたから、丁寧に言葉を紡いだ。]
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