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誰かの視界にも別の地図があったの。
教誨所と湯治場、二宮尊徳像と火の見櫓。
[日記帳と誰かの巻物、それぞれに描かれていた場所を宙に打つ]
ノギさんも、赤い水にやられてしまうよね?
[『像』の下にあった梯子のような記号のことは口にせずに、道なき斜面を滑り降りる**]
ええ、まったくです。ただの観光客にこのような仕打ちとは。
[徐々に落ち着きを取り戻してきたのか、声音はいつもの無機質な調子を帯び始める]
私はあいにくと、「ないよりはまし」程度のものはなるべく持たない主義でして。
[男性につられるように肩を竦めた。
雑誌に関する追求はなく、次の質問。
顔を上げ、眼鏡の奥から淡々と男性を見据える]
あれは確かに化け物ですが、かつては―― どうしました?
そもそも存在しない村に、
学校なんて有る訳が無いのに。
なぜ、携帯電話の中継塔の話が、
湧き上がったのだろうね?
[ひとの足だけで踏み作られた悪路を進む。
轍に足を取られないように。]
――?
[そして奇妙な動きをする、
屍人と呼ばれるらしき姿を見かけた。]
瞳を、かして?
[呟くと同時に、右の視界が反転する。
草むらに隠そうとするものを覗き込む。]
――日記?
[村の誰かが綴ったのであろう。
古ぼけた表紙を捲ると、記憶が蘇る。]
巻物と――?
[盗み見た視界で漸く読み取った文字に首を傾げる。
謎を追い、また謎に逃げられた気分になり、
思考を散らすかのように、頭を振った。
そして借りた儘の視線で視続けた先に見つけた、
少年らしき者が横たわる姿。]
――どうして欲しい?
[問いかけても音は無いが。
村の教えに従えば、炎で弔うのが*最善かと*]
[ただの観光客、と零した言葉からは、何かそれだけではないような気配を感じ取ったが――そも、好んで観光に来るようなところではない――やはり追求はせず]
そうか。
……かつては…… っ、
[発しかけた言葉を途切れさせる。突如として響き渡った声。神経を緊張させ、その声がした方を見やる。其処には、先程少年の視界に移り込んだ姿があった。――人ではない、姿があった]
……下がって、
[傍にいる彼女を庇うように片腕を横に広げつつ、男は一歩踏み出す。警棒を構え、じ、と、人ならざる相手の動向を注視して――]
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