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私は恋人に…捨てられて…しまった…
人はこの私を…ふだつきと云うから……
んぁー! ろくぅでなぁ……ゲフッッゲフンッ
[鼻歌。にしては声高な、そして図太い歌声とともに、見かけ的には女の姿が一人、また列車に乗り込んでくる。]
…鼻から何か出た気がするわ。嫌ね。夏風邪かしら。
あら。イケメン。
ここ。いいかしら?
[返事を待つでもなく、どかりと腰を降ろして、
取り出した扇子で胸元に風を送り始めた。ぱたぱたと。]
それにしても暑いわねぇ。
そうだわ。イケメンさん?八朔食べる?
というか、食べなさい。夏の暑さには八朔が良いのよ。
[本当だろうか。
無理矢理に近い感じで、八朔をズイハラに手渡した。**]
[清潔さの保たれたセーラー服(夏仕様)。
一人分の座席を悠々と占める革張りの楽器ケース――その隅の。
適度にファンシーな長方形の枠の中に流暢なフォントで記されている「Hatsune.S」という文字。
それが――ただの通りすがりが、彼女の身分を知ろうとする際に使える材料。
そう。
ただ通りすがるだけの関係であるなら、
彼女が簡素に「ハツネ」とだけ名乗った際、
<<13>>回に1回の割合で名乗ったそれを苗字と勘違いされることなど、
そうそう簡単に知れるまい]
[青色に身を包んだスマートフォンは、
片隅に様々な色をぶら下げていた。
持ち主である彼が指を滑らすたびに、
冷風の揺れとは異なるリズムで踊るのは――クマだ。
クマ。
均一の規格、けれど一つ一つの色も装飾も異なるそれらは
コンビニで販売されている清涼飲料水のオマケだ。
ただ単にオマケをつけているのだろう――などとは
決して思えないほどに、クマたちは大量に揺れている。]
[そんなクマたちを、否、クマ付きスマートフォンを
制服ポケットに押し込んで
クマ付き男子学生となった彼は「アチィ」と呟いた。
濁点でもついていそうな声だ。]
ァ゛ー……
[襟から風を取り入れようとも、
額を流れる汗は消えるはずもない。
縁眼鏡のレンズには、走った名残か、一滴の汗が付着していた。]
[クマのついてくるペットボトルと、追加注文のアイス。
ついでに、間に合うかどうかギリギリの、パシッた友人。
それらを待つ間は、この男子学生は背を扉に預ける心算だ。
立っていると電車内がよく見渡せる。
常とは違う時間帯の電車だ。
そうそう知っている顔があるわけではない。
けれど、それなりに学生生活を送れば、
繰り返す日常の中に見覚えある顔の一つや二つ、でてくるものだ。
楽器ケースを持ち運ぶ姿が印象深い女学生が最たる例だ。
そしてもちろん、見覚えのないばかりか
そぐわない顔だって、ごく偶に、日常の中に生じてくる。]
[ガラわぁりぃ。
顰め面と漂う不機嫌なオーラに
『わざと蹴った』のだと勘違いをして。
少し持ち上げた顎と顰めた眉での些細な意思表示は、
部活動に勤しむ健全な男子高校生のとりうる最大で、
そしてささやかな、すぐに消え去る不快感の表出だった**]
/*
皆様、ご乗車ありがとうございます。
このまま本日0時の更新時間をもちまして、村を開始させていただきます。
電車は発車し、以降更新時間を迎えるごとに各駅に停車いたします。
[ルリの黒い目が何往復かする間、この列車に乗っている他のお客さんのこともだんだんと見えてきました。似たような服を着たお姉さんお兄さんたち。ルリより何歳も年上なのでしょう。学校から帰っているのでしょう。鞄の上に顔を伏せているお兄さんだっていました。
本当ならルリも、今日は学校へ行く日でした。今日の給食は、確か、デザートに星形の寒天が入ったゼリーがあったはずです。それを思うとルリは余計にどぎまぎして、お腹がきゅうとしまっていくようで、握った手を少し強くしました。かわいそうなルリのゼリー、きっと食いしん坊のユウタくんに食べられてしまいます。]
[一度どぎまぎすると何故だか変に悲しくなります。
ですから、ルリの目はだんだん下がってしまって、誰かが気遣わしげに送ってくれた視線も受け止めることは出来ませんでした。
けれどそんな悲しい気分も長くは続きませんでした。
一人、とびきり不思議な人が乗り込んできたからです。その人がどんなふうに不思議かというと、一人きりのはずなのに何やら歌を歌っているのです。そうして――お友達なのでしょうか、ルリには分からないことですが、本を読んでた男の人に果物を差し出したのです。ぱちくり。悲しい気分もどこかへ飛んでいってしまいました。]
[ようやっと、男にも周囲を見る気が出てきた。
ぐるりと視線を巡らせ、車内にいる人物を一通り眺める。
最後にちらりと見たのは、[学生 ハツネ]の姿。]
(あ、いる)
[ズイハラには若者の活字離れを声高に叫ぶ趣味は無いが、若い女学生が文庫本を読んでいる様子にはつい眼を留めてしまう
そして知らず知らずのうちに"いる"ということを意識する様になっていた。
それはあくまで日常の一風景としての認識だった
尤も、何を読んでいるか気にならない訳では無かったが
女学生とサラリーマン。互いにそれを知る機会はないだろう]
(ああいう年代の流行りって何だろうな…。宮部みゆきとかか?
ま、良いか)
…
[フゥと小さく息をつき、手元の本へ再度目を落とす。
場面は主人公が赤シャツと釣りに出る頃合いだった]
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