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― 早朝 ―
[イェンニの悲鳴に、彼は目をこすって、扉を開ける。
ドロテアの部屋の扉が壊れているのは、見て取れた。
部屋の中までは見えないけれど、そのにおいは、彼のところまで届いていた]
――…
[まだ少し眠そうにしていた目が、細まる。
ドロテアが、妹が。
そんな叫び声に理解する。
つまり、供儀が殺されたのだ、と]
[イェンニの叫びが響く。
ゆるりと瞳を瞬かせて、身体を起こした]
……供えられた娘は、いったか。
[ちいさな呟きを落し。
しわの寄った服を着替えて廊下へと出る。
血の匂いが、ただよっていた]
[顔を上げたのは、扉の開く音が聞こえた後。
廊下に出てきたヴァルテリの姿が見えた。
小さく頭を下げて、壊れた扉の、ドロテアの部屋の前へと歩いてゆく。
――近づくにつれ、血の匂いが酷くなって、
廊下の床に視線を落とした]
レイヨ……
[レイヨが出てきたのを見て名前を呼び。
廊下から壊れた扉のほうへと視線を向ける。
壊れた扉をゆっくりと開けば、血の匂いはさらにつよくなり]
……ああ。
イェンニ。
[血に濡れた二人の姿に、小さく声をかけた]
[骸に顔を埋め血に汚れるも気にせず
その頬へと頬寄せて震えていた
後から後から溢れる涙が落ち流れる]
、ヴァルテリ、さま……!
[聞こえた声にゆると向ける顔は
クシャリと歪んだままに。
合わぬ歯の音を噛み締めて
縋るような声を漏らした]
ヴァルテリさん…
[呼ばれ、少し沈んだような、静かな声で返す名。
それから視線を、扉の方へと向ける。
彼が戸を開く先をのぞく。
部屋の中は、血の海のようだ。、
イェンニがその赤の中、赤くそまったものを抱きしめていた。
供儀の少女が流した血からも、
彼女が死んでいるのは、明らかだ]
[イェンニの顔を見て、部屋の中に足を踏み入れる。
宥めるように肩を叩き。
他にも誰か来るのなら、現状はすぐに見て取れるだろう]
[イェンニがヴァルテリの名を呼ぶ。
呼ばれた彼は入ってゆく。
自分は、少し扉の前で立ち止まった。
赤い血の中、むせかえるようなにおい。
部屋の扉の前に佇む形]
[叩かれる肩に向ける顔はぐしゃぐしゃで
ぼろぼろと落ちる泪は止めどなく服を濡らす]
どうして…ドロテアだったのでしょう。
何も悪い事なんてしていないのに…
[震える声は掠れて高さを上下させる]
[彼は、夢を見ていた]
[それは、彼が故郷にいた頃の――まだ口が利けた頃の夢]
父上。
[目の見えない老婆が籠に乗せられるのを見て、少年時代のクレストは父親に尋ねた]
あの方は、どこへ行かれるのですか?
[父は答える。“災いを鎮めに行くのだよ”と]
[その頃の少年はまだ知らない事だったが、彼の生まれ育った地域には、ある伝承があった]
[『身体の一部に欠損がありながらも生き永らえている人は、神の加護を受けている証であり、災いを退ける力がある』――…。
すなわち。
彼らは大切に扱われる一方で、その地に災いが降りかかった際には、生きたまま供物となる運命を背負っているのだ――]
[“だけどお前は鎮めてはくれなかった”]
[“お前が逃げたから、町は滅びてしまった”]
ちがう。
僕は。
逃げてなんて。
[しかし、その叫びは音にはならず、ひゅうひゅうと喉が鳴るばかり]
……ッ!!
[彼は飛び起きた。全身が、汗でぐっしょりと濡れている]
[……夢だ、という事は分かっている。父も母も、自分を死なせないために、この村に逃がしたという事も、知っている]
[そして、そのせいで故郷が――]
…………。
[彼は首を振った。じくじくと手術痕が鈍く痛む。手をやると、少しばかり腫れているようだった]
[風呂でも浴びてこよう、とベッドを出て、ようやく外が騒がしい事に気づいた]
[簡単に身支度を整えて廊下に出る、と、むせかえるような酷い血の匂いに、思わず顔をしかめた]
[そして聞こえてくる、イェンニの叫びと嗚咽]
………。
[ドロテアの身に、何か大変な事が起こったのだ、と理解して、彼は彼女の部屋に足を向けた]
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