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[鏡で己の姿を確認した後、また室内を見回した。くすんだ白色の壁に貼られた何枚かの紙。空を飛ぶ超人や派手な衣装を纏った青年が描かれている紙、中央に赤いバツマークが描かれた黒い紙、破れ掠れたそれらの絵を一望して]
君。
ふと思ったのだが、私の正体は正義の味方だったりはしないかね。
悪に改造をほどこされてしまった、というような……
あるいは逆に封じられた何か悪しきものでもあるか。
[それに「声」があしらうように返せば、眉を下げ]
……
冗談だ。そう冷たく否定しないでくれたまえ。
だが、私が何者かと聞いても……
君は答えてくれないのだから、色々と想像してしまうのも道理というものだろう。
哀れだとは思わないかね、君は――事情を知っているというなら、尚更!
今自分が使っている言葉が何という言語であるかすらわからない私を……
ああ、まるで迷い子のような気持ちだよ、私は。
[額に手をあて、ふらりとよろめいてみせる。はたと気が付いたように己の袖を見、そこから身に纏った服をざっと見て]
……改造というのは冗談としても……
これでは本当に実験体か何かのようだ。
[実験体のようでも、囚人のようでもある灰色の服。その箱を開けてごらんなさい、というカナメに、床の隅に置かれた木の箱を見やり]
着替えかね。
よもやびっくり箱などではないだろうね?
……いや、これも冗談だ。
全く、君は親切だが……
どうにも生真面目なようで困る。
[ぼやきつつも木の箱まで歩み、しゃがんでその蓋を持ち上げ横に置く。中には薄い色のシャツと黒っぽいズボン、地味な色のコートが畳んで重ねられ、その上に皮のロングブーツが置かれていた。どれも共通して大きく]
ふむ。丁度良さそうだ。
[それらに着替えると鏡を覗き、前髪を指で軽く梳いて。膝下まであるコートを前はしめないまま、マントのように翻して部屋の外へ出た]
とりあえず、ありはわかった。
ありってなんだ?
[あり、とだけ語るそれに呟くが。視線は小さな黒い生き物へ注がれる。視線でそれを追うが、何をするでもなく。]
……おお。
[まず見えたのは白く、広い景色。向こうには木々らしきものがあり]
あそこまで、何kmあるだろうか?
[こつりこつりと足音を鳴らし、緩慢な歩調でそちらに向けて歩き始め]
[何度目かに巡る、幾つめかの扉。鍵穴は見つからない。
左手に鍵を握りこむ。温かいか冷たいかはわからない。
やがて、ドームに沿い弧を描く通路の向こう、軽い足音。
蒼みを帯びた髪を揺らす少女の姿を見とめ、丁寧な会釈。]
…おはようございます?
[目元だけで笑みかける。初対面の少女へと、口数少なに
自らの名を告げて…彼女の名と、部屋の位置とを尋ねる。]
不躾に、扉を叩いてしまいたくはないので。
[そして、ルリの肩へかけられたブランケットを
暖かに掛け直そうと両手を伸ばしかけるが…留めて]
……。
どうか、お風邪など召さぬよう。
[今度の笑みは、どこか諦観の滲むいろを*口元に*。]
>>30
なんだ?
[聞こえる言葉を繰り返し、首を傾げる。
ぬいぐるみを地面に置いて、樹へ昇ろうと裸足を幹に付けた]
[が、一番下の枝にさえ手は届かない]
[やがて木々らしきものがはっきり見えてくる。ビオトープと思しき場所。一度足を止めてから、ぐるりと回るように歩き]
……おや?
おや。君達も……此処の人かね?
ん、いや。此処の人、という言い方は少々妙だな。
ひとまず一人きりでなかったというのは僥倖だ。
[前方の二つの人影に、声をかけた。最後などは独り言のような調子だったが]
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