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[混乱と焦燥を努めて抑えながら、男は考える。あの化け物は――男は屍人という名を知らない――ゾンビの類のようなあれは、何なのだろうかと。状況からすれば、あれがこの村の「秘密」の顕現であるのは、間違いないだろう。先程の視界の異変も、それに纏わるものなのかもしれない]
……本当に、こんな事になるなんてなあ。
十年以上オカルト調べてきて、初めてだよ。流石に。
[手帳に文字を書き込みながらぼやく。足音に気を付けつつ、近くの物置らしい廃屋に入り込み]
……お。
[其処には金属の棒状と、赤黒く汚れたバインダーとが、空箱に紛れて落ちていた。棒状は伸縮性の警棒のようだった。バインダーの中には、幾枚かの紙が挟まれていた。黒ずんだ赤色で象形文字のようなものが記されていて]
……
[紙群を写真に収めてから、警棒を手に取った。これであれに適うかは怪しくも――ないよりはましだろうと。
物置を出、*歩き出す*]
[まず視えたのは、振り被るように上げられた、右手。
それを何とか交わそうと自らも腕を上げる。]
五十年前の音楽室の次は、
理由なく襲われる映像かい?
強ち噂は噂じゃなかったとか、
言うクチかね? これは。
[耳を劈くようなサイレンに、頭を振るう。]
まぁ、あたしとしては、この状況、逆に好都合だね。
[瞳を貸した右目と、左目で辺りを見渡す。
血のように赤く、そして紫色に染まった視界の中で、
握り締めた古びた新聞紙がくしゃりと音を立てて。
自らの存在の意義をアピールした。]
[しかし何故、この村は未だ存在するのだろう?
握り締められた新聞は、三十五年前のもの。
古い地方紙にも一面に大きく躍る文字は、
四辻村と呼ばれる村が事実上、
姿を消した事を告げていた。]
そしてあたしは五十年前、この世には居ない。
[一瞬にして消え去った音楽室。
跡地にはただの草むらが広がる。]
――…この地に伝わる密教と、
何らかの係わり合いが有るのかね?
この、赤い視界は。
[貸していない左目を軽く手で覆う。
また、誰かの視界であろう。
ノイズ交じりの映像が、紛れ込んできた。]
教会、とやらを探してみようかね?
――…その前に、この生き永らえた者に
捕まえられないように、逃げる方が先かね?
[くっと喉で押し殺した哂い声が、跳ねる。
一度も訪れた事が無い土地。
しかし記憶には存在する道標。
息を殺して地を蹴る。
そうすべきだと教えてくれるのは――]
[女は、走っていた。隣に相棒の姿はない]
まずったわね……。
(まさか、屍人が集団で行動しているところに出くわすなんて。)
[とっさに二手に分かれて逃げた先には、古い家屋が立ち並ぶ一区画があった。
隠れる場所には困らなさそうだと、束の間、安堵の息を吐いた。
ザ――――
追っ手の一人、素手の男性の視界に、女の姿は入っていない]
誰だ、ここにアンテナ建てるって決めたのは!
[汗をぬぐい、叫ぶ、小声で。
足をゆるめて、周囲の安全を確認するため首を巡らせると、見覚えのある建物に気づいた]
あれは――
[不思議な印のある扉――近づいてよく見るとそれは赤黒く沈んだ色をしている]
血……だったりして。
[印をなぞるように指で触れて、そっと扉を押し開けた**]
誰かいますか ?
……逃げ切れた ?
なら、探さないと。ソラの視界は、どこ?
[思い、探すも、映るのは砂嵐ばかり。
だから壊れたラジオを直そうとするかのごとく頭を叩こうとして――その手が止まる。
女は駆け出した]
助けてください!
[焦燥を滲ませた声は、物置を出て歩き出した人影に向けて**]
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