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[クレストとウルスラを居間に置いてきたのは、彼らにも考える時間が必要だと思ったからだ。
ニルスは彼らを信じると言った。しかしそれは彼らがニルスを信じるということとは必ずしもイコールではない。
色んなことがありすぎた。故に、一度冷静になって考える時間が必要だと、ニルスは考えていた。
勿論、それは彼らだけではない。自分達にとっても同様だ。
>>35 自らはユノラフのように床に崩れることはなかったものの、ベッドに座り込んで身を清めるように勧められるまでナイフすらも握ったままでいた。
言われた通りに身を清め、シャツを着替えて戻ってきたユノラフを出迎える。
そうしてベッドに腰を下ろしたまま、椅子に座るユノラフに視線を向けて、ニルスは口を開いた。]
……私はさっき言った通り、ウルスラとクレストを信じようと思っている。
彼らは人狼ではないと思う。
しかし、明確な根拠があるわけじゃない。
私が信じたいと思う。ただそれだけなんだ。
だから、君にそれを強制することはない。
君が誰を信じるかは君の自由だからな。
ただ……出来るなら、私を信じて欲しい。
明日はイェンニに投票する。
もし人狼が一人ではなく、イェンニに投票しても誰かが死ぬようなら……私は、次はヴァルテリ殿に投票する。
いや、もし必要であれば…………
[自ら手を、と告げようとした言葉は途中で途切れた。
一つ息を吐き、首を緩く横に振って。]
少し、疲れたな。
[ニルスはごそりとベッドの中へと潜り込み、ユノラフに背を向けた。
約束を求められれば背を向けたまま、短く了承の返事を返して、眠りについた。]
[そしてイェン二は早朝から
居間の椅子に座っていた。
ウルスラの部屋を見に行くこともない。
ただ、じっと椅子に座り。
外の祭りの準備の音に、耳を傾けていた]
― 翌朝 ―
[幽霊になって寝る、とはいうのは可笑しいが。
気がつけば意識が途切れていて、居間にいた]
……
ドロ、テア?
[死の気配を感じ、声をかける。
だが――返事はない]
アイノ? レイ、ヨ?
[誰だろう、と思いながら、階段をあがる。]
[ふと見かけるのは、親友の後ろ姿。
幽霊となった今、臭いを知覚するのは難しい。
それでも――嗚呼、いってはならない、と血の苦手な親友を止めようとしても手がすけてしまうのだ]
[それに、親友がいつも。彼女がいれば、彼女のことを目で追っているのには気付いていた。
彼女に好意を抱いていることも。
だから彼女を見かけたときはいつもそれとなく二人っきりになるように計らったりもしたが――だいたい体が大きいわりに鈍いので失敗した――まさか、こんな]
うる、すら……
[嗚咽を噛み切られて絶命している姿を、見下ろした]
[朝。
先に目覚めたユノラフが立てる物音で目を覚まし、昨日と変わらない手順で身支度を整えて廊下に出た。
漂う血の匂いは、すぐに鼻を突く。この数日で、随分と慣れてしまった。
その血の匂いが誰のものであるかを確認するより早く、>>38 ヴァルテリから声が掛かった。
つられるように、視線をウルスラの部屋へと向ける。
その言葉の内容も、ウルスラが死んだことを思わせるもので。]
……あなたは、もう見に行ったんですか?
[自分よりも随分と年嵩のヴァルテリに対し、慣れない敬語を使いながら問う。
>>37 今しがた部屋から出てきたばかりであるように見えたのに、死者がウルスラであると悟っているかのような物言いに僅かばかりの違和感を覚えながら。]
[生まれてから、いや、母がいなくなってから、彼は一人だった。
父は母に似た彼の扱いを悩んでいるようであったし、
叔母はそんな父から生まれた彼を、あまりよく思っていないようだった。
近しい人が心配してくれていても、彼はそれを受け入れられなかった。
父が描いている絵のせいだ、と。
だから自分はここになじめないのだと。
自分から作った壁を壊すことはしなかった。
叔母に言われていたのだ。あのような父親の子のお前と、仲良くすれば、その人にも迷惑がかかると。
自分は何故生まれたのか、
――父の世話をする為か、それならばそれでも良いのだと、割り切っていた。
そうやって毎日を過ごしていた。死ぬわけもなく、誰かに関わりたいと思うわけもなく、ただ毎日を生きていた]
[だから自分が、その声を聞いた時、
それはとても楽しいことのように感じられた。
姉妹のような存在の姉が、妹をおいしそうに思うその声が。
まるで、夢の入り口のようで、
――それが現実だと、彼は確かに知っていたけれど。
彼は笑った。
これに従えば、自分はあの毎日から逃げられるのではないかと。
そして、これのそばにいれば、自分が切り離された世界、
人間の脆く崩れる姿が見られるのではないかと]
― 昨夜 ―
[自分に迫るその刃を避けなかったのは、なかばの諦念と、そして喜びからだった。
生きようとしている、なんて口では、いや、声では伝えながら、
その実そんな行動を取らなかったこと。
特に後悔もしなかった。
イェンニの声に最初応じた時から、彼女に優しい言葉をかけた。
彼女は自分の死にどう思っているのだろう。
もう一人の狼は、きっと自分の死にそこまで動じることはないだろう。
ウルスラは自分の魂が人間であったと知るだろう。
その時にどんな反応をするのか、――でも彼女は今日にでも食べられるのだろうと予想もあった。
自分を殺すニルスは、きっとこの事実を乗り越えるだろう。
だけれど、殺した事実は残る。いつまでも覚えていてくれるだろう、人の肉を断つ感触を。
クレストは、何度も壊れかけてくれた。
それはとても楽しかった。とてもとても、楽しかった]
[肉体が完全に死を得た時、彼の意識はこちらに現れた。
自分の体が運ばれていくのを見送ったあと、
そこにいる人たちに気付いて、笑みを向ける]
殺されるのは痛いものだね。
でも、悪くない。
こうやって君達も見てたの?
――それから、おはよう、アイノ。
[夢の中だと彼女の意識を唆したのは生前の話。
だけれど彼女の様子に、彼は、そんな言葉を投げた]
夢は覚めたかな。
― 回想・レイヨの死後―
……レイ、ヨ。
[何故笑っていられるのか理解を超越していた]
どうして、あんなことを?
[漠然とした問いかけを]
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