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[扉の向こうで聞こえる会話にわずかに眉を寄せる。
はぁ、と小さく息をついて。]
扉はあいてる、入りたいなら入ってくれば。
[冷たくも響く声で告げながら、目の前の幼馴染に僅かに苦笑を向けた。]
悪いな……
[幼馴染ではなくアイノがそうだったのかと独り言ちながら扉と幼馴染の間に立つ。]
わかンねェと言や、――コイツもわかンねェ。
[扉の外から聞こえた音と声。
ペッカは、アイノの妙に抑揚のついた語調に言ち。
少し声を常より大きなものにして返答をする。]
… 此処に居ンのァ、俺とビーだぜ。
[絵本の中の人狼じゃない。そう念を押す響き。]
ウルスラ姐も居ンのか?
[扉をけり開けられて、瞳を瞬かせる。]
乱暴だなあ、アイノ。
そんなんじゃ嫁の貰い手がなくなるぞ。
[物騒なもんまでもって、と軽口のように告げながら、少女を凝と見やる。]
最初に訊きましょうか。
どうしてベルンは夜のうちに逃げなかったの?
[武器代わりの瓶を隠しもせずに、廊下から声を張った。]
……過激だねぇ。
[扉を蹴り開けるアイノの様子に、小さく呟いて。
ベルンハードへ向ける問いに目を細める。
すぐに何か事を起こす気はないが。
何かあれば動くつもりで、やり取りを見つめた]
どーしてって……此処が俺の生きる場所だし。
逃げ出してどーなんの?
[それをいうならアイノだって逃げなかったじゃないか、と指摘しながら、顔を赤らめた少女の怒鳴り声にう、と胸を押さえる。]
人の気持ちなんか口に出されなきゃわかるはずないだろ!
[逆切れた。]
…できねーな。のんびり。
[素っ気無い物言いは、含む万感を潜ませる。
苦笑と共にベルンハードから告げられる詫びに、
ペッカは幾分遣る瀬なげにも、ひひとわらう。]
おう。聴いとく…
[ぐしゃり――陽に灼けて縮れた髪といっしょに
掴んだタオルが、ペッカの頭からはらと解けた。]
―――― 刺繍糸。
[逃げる素振りなくことを注視するウルスラへは、
姉が後日彼女へ伝える心算だった言葉を添える。]
新しいのよか、古布をほどいて紡げって
姉ちゃんが言ってた。
ウルスラ姐。
死ぬ気で生きようとして、死ぬなよ。
[ラウリの血を流したばかりの汲み置き水へ、
ばしゃり。ペッカは頭から解けたタオルを通した。]
[アイノの言葉>>56に苦いものを嚼んだように顔を蹙め。]
だって、なあ……俺が逃げても、お前らが逃げられないんじゃ、一緒だろ。
[騒ぎさえ起きなければ、今までどおりだったのに、と僅かに息をつきながら。]
で……アイノは俺が人狼だって、いいたいわけ、だ。
[昨夜のうちに逃げても、なにも解決はしない。
ラウリが死んでもそれは同じ。
結局――騒がれたことと共に空腹に我慢できなかったのが原因なのだから自業自得もいいところだった。]
[アイノと視線を交わすのは幼馴染みの肩越し。
誰をやら何からやらは想い、むつと口を尖らせる。]
…庇ってねェし。
どっちかつーと俺、全力で庇われてなくね。
[昨夜の件にしろ、いま幼馴染みが彼女らと
ペッカの間に立って話している件にしろ。]
[ドロテアが、というアイノの言葉に、ゆるく首を傾げる。
ここにいた者たちの名を書いた、その理由。
少女が抱いていた想い]
……やっぱり、ちゃんと聞いてやるべきだったか。
[零れ落ちた呟きは、ため息混じり。
あの時呼び止めていれば、と。
掠めるのは、悔い]
[ゆっくりと、一歩二歩とベルンハードへと近づく。
瓶は音を立てて床に落ちた。]
ねぇ、あたしを食べて、そして逃げて。
人狼がここから居なくなって、もうそれで、終わり。
それじゃダメなのかなぁ?
[立ち止まると俯き、顔を両手に埋めた。]
もうやだよ。
[ドロテアが、と示された羊皮紙>>60を見てあーあ、と額に手を当てる。]
まいったなぁ……
言い逃れもできやしない。せっかくドロテアの口を封じたのにな。
[自嘲気味な笑みを浮かべてぽつりと呟く。
ドロテアに特別な感情は抱いては居なかったし、彼女の気持ちには気づいてもいなかった。
アイノの言葉>>63に肩をすくめて。]
でも、それで残ったウルスラやペッカが疑われたら――?
そりゃあ俺だって生きていたいさ。腹が減ったら食べもするし――
でも、この町の人間を食べるつもりはなかったんだよなあ……土砂崩れさえ、なければ。
ドロテアやラウリを殺しておいてなんだけど、それでも俺、皆にも生きててほしいんだよねえ。
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