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― いつかどこかで ―
[カラコロ
下駄の音が鳴る]
[それは50年よりちょっと前の話
一緒に遊んだ女の子
下ろしたてみたいな、
赤い鼻緒の下駄ひとつ]
『ミーナツちゃん
あそびましょ』
[其の声がいつのものなのか。
覚えているのはその人だけ。
誰かとその時聞かれたら、
人差し指を口元に当て、]
― 夏祭り会場 ―
相変わらずソラさんはゴージャスかき氷派なんだな。
おじさんにサービスしてもらえばよかったのに。そしたら3点コンボどころか5点にも10点にも……う、食べる前に溶けそうだ。
[笑い袋を抱えて屋台の間をそぞろ歩く]
お祭りが終わったら宿題やる準備しないと。どうせみんなくるんだし、座敷片づけて。
感想文はやっとかないとだめか。フユキ先生の新作でいいかな。なんだかどこかで読んだことがある気がするし。
[ぶつぶつぶつ。独り言]
― 40余年前・フユキ宅 ―
肩書きって便利だね。
[『若先生』が適当言うと、大家は簡単に鍵を開けてくれたのだった。
開いた扉から冷気が出てきた気がしたが、すぐに暑い、うるさい、夏に覆われる]
どこに消えたんだろうね。
[一人ごちる。
おばけも、チラつく景色も、もう見えなくなっていた。
フユキの机上に残っている、鬼気迫る文字は判読が難しい]
『ん〜……? ここどこぉ?』
[と、少女の声がした。
背後の布団がもぞもぞと動いて、その中から顔を出したのは]
アン、ちゃん……!?
[失踪時と変わらぬ見た目の女学生を見て、腰を抜かしかけた。*あばばばば*]
[ふと、射的屋の前で立ち止まる。
「今年も来たな小僧」と言われて、苦笑して頭を掻いた]
なんだろう、ここを通ると「やらないと」って気になっちゃうんですよね。
勝負してるっていうか、なんだろう。
[うまく言葉にできなくて、毎年同じような事を言っている気がするなと言い訳。
お代を払い、替わりにに受け取るおもちゃの銃とコルクの弾。
ねらいをつけるのはキャラメルの箱]
― 現代・救護テント下 ―
家に帰ればやれ嫁はまだか孫はまだかって、時代錯誤なこと言われ、外に出れば、病人もいないのにタダ働きかよ……!
みんな元気なのはいいことだけどなー。
[本部テントから、迎え火の匂いが届く。
机に置かれていた小説は、フユキの新刊。ぺらぺらとめくり苦笑した]
医者でユウキとかやめろよ、まったく。
― 40余年前 ―
若先生!
アンが見つかったって、本当!?
…あ…アン、本当に、アンだ。
良かった…心配、したん、だから。
今までどこに…ううん、違う。
───おかえり、アン。
やっとみんな、おうちに帰れるね。**
[暑い暑い夏の祭り。
カラコロと響くリズムは軽やかに、涼やかに]
踊りのこと、ご存じでしたか。
…やっぱり、先生は、お詳しいんですね。
[狼の面、戯れに作家の顔に重ね]
ふふ。
…みいつけた。
[また外して、にこりと笑う**]
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