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あ、ねね。職員室行くなら、これ届けてもらってもいい?
来た時に、玄関で拾ったのすっかり忘れてた。
[あちゃー、という表情をしながら、ごそごそと鞄から取り出したのは[櫻木 ナオ]の名前が書かれた生徒手帳だった。]
…いや、用事を押しつけるのは良くないか。
ごめん、やっぱ自分で届けに行くよ。
[向かう先は同じということで、一緒に先生のところへ行こうと、六花に向かっておいでおいでと手を動かした。]
せ、
[先生も来るんだ、と続けようとして、言いよどんでしまった。
唐突に雑談に混じれるほど、盛り上がっている生徒たちと仲が良いわけでもなく、社交的なキャラクターでもなかったから。
小春が立って居たのは近藤のやや後方、死角となる位置。
マフラーに口元を埋めて、幾度も口を開きかけては躊躇っていると、生徒たちの笑い声に紛れるように、近藤の苦い呟きが漏れ聞こえた。
『――小山内がどうして死んだのか、知りたくないって言ったら嘘だしな』]
──先生、さようなら!
[とっさに口を開いていた。 明瞭な発音につられて、背筋まで伸びた気がする。
努めて大きな声で挨拶を発すると、相手の返事も待たずに、駆け出すようにして教室を出た。
何だか、秘密を盗み聞いてしまったような。
駆け足からくる動機と共に、胸騒ぎを抱えて]
……土曜日の夜、松柏駅……。
[近藤が「偶然」足を運ぶと話していた場所の名を唇に乗せてみる。
その呟きは、分厚く巻かれたマフラーに受け止められて、小春以外に届くことはなかった]
偽、汽車…?
ああ、そういえばそんな噂を耳にしたね。
それが今日なんだ?
だったら尚更櫻木さん1人で行かせる訳にはいかないな。
[聞き覚えがあるような単語に首を傾げる。
何とか記憶の片隅から噂の話を引き出し噂の内容を思い出せば苦笑いで彼女を見やり]
いやいや、気にしなくていいよ。
松柏駅にはどうせ行こうと思ってたからね。
[小さく咳払いをして礼を言う彼女に緩く手を振ると連れ立って玄関に向かう。
途中誰かに合えば気さくに話し掛けるだろう。**]
えへへー。ケンくんはクラスのおにーさん的存在って誰かが言ってたのね。六花、ちゃんと覚えてるのね。
[覚えててくれたという笑顔に嬉しくなって得意気に他にも覚えていることを言う。
部活をやっていたと言いながら動かされる弓に目をやり]
部活?キュウドウ?弓大きいのねー。
[言いながらテレビ等で見たことある弓を射るポーズをしてみせる]
用事?落し物なのね。
[寺崎が誰かの生徒手帳を取り出すのを見つつ、だが思い直して職員室への同行の誘いに笑顔で頷いて答えた]
うん、行くー!
―玄関→職員室―
[寺崎と連れ立って職員室に向かう途中、話しながら歩いている櫻木奈央と弓槻臣哉が歩いてくるのが見える。話の内容に気を惹かれ二人に近寄って声をかけた]
ねえねえ、なんの話してるの?
キシャ?遠足行くの?
[面識ある無しに関わらず屈託なく話かける。名前を聞かれるなら名乗るだろう**]
―回想―
[偶然のふりをして松柏駅に行く、という話がまとまった直後。
いつもは引っ込み思案な女子生徒――三枝小春の唐突な挨拶を背中に浴び、驚いて振り返る。]
お、おぉ? さよなら。気をつけて帰れよ。
……って、もう居ないのか。
[駆け去って行く小春の後ろ姿を見送りながら、聞かれたんじゃなかろうな、と一瞬ひやりとする。目の前に居た賑やかな生徒たちに気を取られていて、近藤の死角に居たらしい彼女の存在には気づいていなかった。]
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