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[一段上るごとに人の顔が頭に浮かんでくる。
親しくなれた人たち。
親しくしてくれた人たち。
守りたいと思えた人たち。
守ってくれた人たち。
なんだかんだで大好きな姉]
[九段目]
[・・・怖いよ]
[十段目]
[怖いよ・・・]
[十一段目]
[やだ・・・《そこ》には行きたくない・・・]
[十二段目]
[・・・たすけてっ]
[そしてまた一段]
ちょっ……まっ!ひとりにしにゃーで!
[タカハルを追いかけるように、階段を登る、急いでいるつもりなのだけれど、身体はそれに反して遅々としてしか動かない。]
ねぇ、まって、おねがい。ねえってば。
[ここで一人になってしまったら、もう耐え切れいなのが、自分でも判る。だから。]
[12段、11段、11段、10段、12段、10段。
数えたく何てないのに。追いかけて登る階段の段数が、自然と意識に入り込んでくる。既に1階から3階まで登ってきているのに。更に屋上に向かって階段を進む。
それこそ。何かに惹き付けられているかのように。]
[不意に、空気が重くなる。
ここから屋上は、駄目だ、絶対に。
体の中で一杯一杯の赤信号が、警告している。
それでも昇って行くタカハルには、追いつけそうにないけれど、酷く重い脚を、階段に向かって動かす]
――だっ、だめ。登っちゃ、だめだみ。
そこ、当たり、だにゃ。
[3Fから屋上に向かう踊り場。視線の先には、屋上手前。十三段目を踏む彼の姿が。]
―― 元いた階段 ――
俺は、意識はっきりしとるし
お祓いするようなあれでも、ないけどな
でもまぁ、ちょっと様子みよか
…――――
おらんな、あいつら
[そこには、タカハルとナオの姿は無く
どうやら、移動したのだろうと言う事はわかる
問題は、何処に移動したのか、だけれど]
階段やって言うんやし、階段やろ 登るか
[マシロに問いかけて、階段に足をかける]
何ぞ、変わった事があったら……
すぐ言いまっしよ。
くれぐれも隠したりせんようにな。
[ヨシアキと言葉を交わしつつ、階段付近と戻り着く。しんと静まり返った闇を見渡し]
……やな。
何処行ったんやろ。
[少しだけ表情を険しくして呟く。問い掛けには頷き、己も階段を昇り始めた。と、踊り場の暗がりの中に、立ち尽くすナオの姿が見えて]
ナオ? どうしたん、……
……タカハル!
[満ちる緊迫の気配に、ぽつりと呟く。そしてその視線の先を見、はっと名を呼んだ。其処には屋上への階段の最後の段を踏むタカハルの姿があった。
思考が巡る。階段の階段。十三段目を踏むと連れ去られる。あれは、何段目だろうか――]
[十三段目]
[そこに足を踏み込むと、目の前に黒い空間が広がった。扉のような・・・さっきまで屋上への扉が見えていたはずなのに]
・・・っ
[足が・・・止まらない]
にゃっ・・・ゃ・・・
[手が震える。懐中電灯が手から離れて・・・階段を転がり落ちた]
[それでも止まらない。止まれない]
たっ、たすけてっ!!
[その一寸先も見えない闇の中に足を――]
ああ、隠したりせんよ
マシロに隠す意味、ないしな
[そう言いながら、昇る階段
その先に、嫌な空気と、光景があった]
タカハル…―――!
[階段を昇る、タカハル
その先に、口を開く扉]
っ…――――
[助けに行こう、と踏み出した足
だけど、その足は進まなかった
その場で、足踏みをしてしまう]
「叶える望みは、最も強い一つだけ」
[聞いた事のない、声が聞こえたきがした]
タカハル!
[タカハルの足元が溶けるように歪むのが見えた。懐中電灯が転がり落ちる。助けて、と叫ぶ声に、駆け寄ろうと、手を伸ばそうとして]
……っ。
また……!
[足は床から上がらなかった。伸ばした手は空しく宙を掴む。リウの時と、同じように]
[闇の中から声が聞こえた]
オイデ……
オイデ………
コッチニオイデ………
[闇へと誘う甘い声。とても優しくて・・・冷たくて・・・怖かった]
おねがい・・・
「…――――――」
[最後に何かを言って。
タカハルは闇に消えた。
普通に階段を上るように]
[何事も無かったかのように元通りになる階段の下にあさっての方向を照らす懐中電灯だけが残されて]
!
[ふっと。
炎が噴き消されるかのように、タカハルの姿はその場から消えた。それと同時に固まっていた体が動いた。階段を駆け上がる。一段、二段――十二段。十三段目は、その奈落は、跡形もなくなっていて]
……タカハル……。
[呟き、呆然とその場に佇んだ]
…――――
[タカハルと共に、かき消える13段目
だけど、わかる
そこには、13段目の階段と、扉がある]
…――――
[背中が、引き返せと言う
だから、俺は]
マシロ、引き返せ
そこにおったら、いかん
[マシロと、ナオ
二人を連れて、階段を降りようと
マシロの所まで、昇っていった]
―同刻 タカハルの家・リビング―
「・・・遅い!!
なにやってんのよあいつは!!」
[バンとテーブルを叩き、イライラしたように叫ぶ女性。
タカハルの姉の恵美だ]
「いま、何時だと思ってんのよ!!
ちょっと遅くなるって・・・あいつにとってのちょっとの定義を帰ってきたら問い詰めてやるわ!!」
「まったく・・・あいつのハンバーグも食ってやろうかしら
人がせっかく食べないで待ってやってんのにあいつはどこで何してるのよ!!」
[通じないだろうな。と思いつつまた携帯を掛けて見る。
やっぱり通じない。
恵美は携帯を乱暴に閉じた]
「はぁっ・・・もー、早く帰ってきなさいよ。
寂しいじゃない」
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