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やだな、謝らないでよ
ほんとにただの検査だからさ……
だから…今度こそ、また
[視線を反らす。次の言葉まで間があいた]
……また明日ね
[唇を引き結び、白い頬は強張ったまま。
立ち上がると点滴装置を握り、右手はひらりと振って]
603号室
[病室に戻った少女は荷物の整理を始めた。未だ半分以上は未読の本の山を鞄に詰め、洗濯して感想させた着替えをその上に重ねた。
昼食が今日最後の食事となる。売店で買ったプリンをデザートにして、歯磨きを終えれば歯ブラシセットも鞄に詰め]
個室はやっぱり…広いよ
[片付いた病室に背を向け、再び入院棟内を歩き始めた]
え…?
[復帰は難しいかもしれない、と言う結城の言葉を聞いた途端。]
な、なにを言っているんですか、先生…
[頭が真っ白になっていく。その後の話は全く頭に入らず、
結城が去っていった後、看護師が何か慰めだったりをしてくれても、全然何も分からない。
頭にあるのはただ一つ
『復帰は難しいかもしれない』
心の拠り所が無くなっていくのを感じた。**]
...さて、時間が...なさそうだな。
[自分の体は自分が一番分かっているだなんて。
そんなことを言うつもりは無いのだけど。
自分に時間がなさそうなことは、何となく感じていた。]
...見守っていたかった。
あの子には、元気になってもらえれば。
あの人には、元気になってもらえれば。
...其の為だと言うのなら。
僕の命など、どうでもいいのだけど。
[思い出したのは昨日のひと時。
たわいの無い話をしていたような気がするが...どうしてだろう。
何となく自分の、いや二人の表情が思い出せない。
話した内容は...何となくは覚えているのだけど。]
[父は死んだ。
母はその後を追って自殺した。
残された僕と弟は、親戚の人に引き取られたのだけど。
3つ下の弟も、去年亡くなった。
父も弟も、今の自分と変わらない感じだったように思う。
心電図がどうやら異常をきたしているみたいだが、結局良くわからないままだった。
脈が乱れるからなのか。
突然意識を失ったり。
そのまま、死んでしまったり。
そんなことしか分からないままだった。]
...やはり暇だ。
[今の状態は...もう注射を打たれていてしまって、ベットから離れることはできそうにないから。
そして。
先程からは色んなことが思い出されてきて。
何か、切なくなってきたのもある。]
死んでしまったら、どうなるのかな...。
[自分が持っている少なすぎる知識では、わかる筈もなく。
ただ、魂が恒久的に残ってしまうのならば溢れかえってしまうだろうから、それはないのだろうけど。
することもないので、何となく文字をつれづれなるままに書いていた。
何かを残したいという、ありふれている思いもあったのだろうか。]
/*
うーん、っと
たかくんは結城先生いってるし、墓落ちるし(霊化するかはともかく)
小春ちゃんとチカちゃん・・
二人ともいないから・・うーんと
[点滴装置の持ち方も堂に入ったものだ。エレベーターに乗って、少し迷って押したのは、五階も四階も通り過ぎて、結局一階に降り立つ。
明日は家族が来ることになっている。無事に手術が終わって病室に戻ったら、退院したら。一緒にご飯を食べるのが恒例となっていた。大抵、退院後すぐはろくに食べれなくて、美味しいとも思えないのだけれど。
すれ違う医師の顔をひとつひとつ確かめる。知った顔があれば、柏木がどうなったのか、約束の、時計がどうなったのか。聞きたかった。取りに来ますと言った自分か、置いておくと言った彼か。約束を破ってしまったのはどちらなのか、はっきりさせたかった]
[白筒に積もる灰を、手にした灰皿へと落とす。
――灰色。
世界から色が奪われたのは、何時からのことだっただろう。
赤色が、好きだった。
かつてヒーローは皆、リーダーが赤色だったからだ。
けれど赤色の服を選んだ時、父に叱られた。
『それは、血の色だ』と。
『医者は赤を選んではいけない』と。
僕の未来は既に、決定していた。
それでもまだ、少なくとも子供の頃は。
いくつもの夢を持っていた気がする。
鮮やかな世界の色と共に。
立ち昇る紫煙へと焦点を合わせ、ぼんやりと思考を巡らせながら、摘んだ白筒の先端を赤く焦がしていった。]
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