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[尨毛の木に凭れる軽業師は
砕けた煉瓦の粉を直接創部へ擦りつけ
至極大雑把にも――焼け爛れた組織ごと
「毒」をその身から削り落とした。]
熱さに鈍いのも、考えもの…
っ痛…
[布も巻きつけず疵は剥き出しのまま、
仰向いて額へ片手を乗せ息を整える。]
よオ、ネーさん。
散歩ノようなモンダ。
……仕事ハ上手くいったみたいダナ?
[待ちぼうけているらしい賞金稼ぎを見つけるのは、多少の時間を有した。
とはいっても、夜を纏う広い街の中、これだけの時間で見つけられたのは、何の『情報』も無ければ奇跡としか言いようがないのだが。
持ち運んでいる漂う死臭も辺りに漂うだろうか。
彼女に向けて、手にする数枚の紙をガサガサと振って見せる。]
ほレ。もう必要でもないカ?
あの宗教団体の情報ダガ。
一人しか食べてない?すぐにお腹が空くよ。
[お腹はいっぱい、でも機嫌は悪い。
でもそもういどうでも良くなり、周りが見えなくなる。]
そうだ、お家に帰らないと…、お家。
[マティアスの事を忘れたかのように、外套を引きずって、ゆっくり歩き出す。マティアスがついてくるか、否か、それは感知せず、だらだら歩く。]
[大量の消化を基本とした人体構造はしていなかった。]
これ、から……。
[軽業師レーメフトとの接触で活性化された意識は既に曖昧となり、楽園を探す、といった事が薄っすらと意識の表層に浮かび上がってくる。「喰べる」と「狩る」「両方」という音も浮かび上がるが、]
待って。
[移動の音が聞こえて、声をかけた。]
楽園にかえる?
[既に歩き出したベルンハードは止まらないだろう。]
ん、案外大したことなかたヨ。
報酬出たら一杯くらい奢ってやるデス。
[血に塗れた布袋を持ち上げてニヤリ。
彼から渡された紙に目を通すが、さして
興味はないといった様子で]
仕事終わたシ、もう興味ないネ。
誰かが賞金かけてくれたら別だけド。
……あ、コイツとは逢たヨ。
色々がなて煩かたから、目玉割てやたネ。
[一枚の紙を取り出し、開祖と思しき男が
載った写真をヒラヒラさせてそう告げた]
[にやりとした笑みには同じような笑みを返す。
ピュウ、と小さく口笛を鳴らし]
流石ネーさん。有り難く奢っテ貰うカナ。
[渡した数枚の紙切れ、彼女がどう活用するかは彼女次第。
燃やされようが捨てられようが、あの宗教団体にもう価値はないのだから。
ひらり、見せられる一枚に、へえ、と一つ相槌を返し]
しっかし、俺モ遠巻きニは見ていたガ。
すごい人が集まってイタな?
それに……変ナのも居たようダ。
[仕事の対象でない者の情報など無価値であるが
特につっ返すことはせず、適当にたたみポケットへ。
カウコの言う『変なの』とは何のことか
一寸思い起こした後、頭に浮かんだのは]
変なの……有翼人カ?
それとも豚の化け物カ?人食い妖怪カ?
[印象に残ったのはこの3者か]
―ビル街 屋上庭園―
[無我夢中で飛び続ける。
最初は混乱で、次には憤怒で傷の痛みは忘れていた。
それでも疲労が限界に近付けば、何処かに足を下ろすしかない]
――っく……。
[崩れ掛けたビルの上層、庭園の如き場所に、たたらを踏みながら舞い降りた。>>68
下層から至るには危険なその場所は、何処か有翼人の住まう天空の園を思わせる。
そこに先客があることなど、今は思い至らない]
あの野郎……。
[矢を、或いは硝子や鉄の破片を引き抜き、衣服の裾を千切って止血する。
改めて見れば致命傷となるようなものではないが、問題はそこではなかった]
よくも、あたしの翼を……!
[しばらく黙って歩いている。
マティアスが言う楽園とは何か?どうも、お家の事らしいのだが、何故知っているのだろう?僕とにいさまだけの家の筈なのに。]
楽園…、ああそうかもね。
[ぽつりと呟く。]
鳥の血の匂いがする、ような…。
ああ、あの鳥は許さないよ。マティアスが食べたいならあげるけど。
あいつの羽根をちぎってやる。
[屋上庭園の近くを歩いている、ような。もちろん、自分がどこを歩いているかは分からない。]
[翼を汚され傷付けられることは、有翼人にとって最大の不名誉である。
もし仮に空を飛ぶ力を失ったなら、それは永遠に天上へ帰れず、地上を這いずり生きる事を意味した。
堕ちた有翼人は、地上人以上の蔑みを受けることになるのだ]
許さない……。
殺してやる……絶対、殺してやる……!
[呼吸も荒く庭園を彷徨い、身を落ち着ける場所を探した。
自身に囁く声を聞いたのはその時か]
――だれ、ですって?
[思いも掛けぬ人の声にはっと息を呑むも、一瞬。
鋭く問い返す声に、普段の甲高さは鳴りをひそめていた。
左手に弓を握る。まだ構えはしないが、いつでもそうする用意で]
悪いけど、あんたのお相手する気はないわ。
あたしちょっと、虫の居所が悪いの。
[庭木に身を隠しつつ、声のした方を伺う]
あれは元々此処の住人カ?
人喰らうヤツら、滅多に見たことないネ。
一度カニバリズムのど変態殺たことあるけど
あれはただの性癖ですダヨ。
異形であんな露骨なの、ナイネ。
[あんな大っぴらに異形が暴れる場面など珍しく
カウコなら立場上何か知らないか尋ねてみる]
まぁ、害あるならひそり過ごして欲しいネ。
ワタシに実害ナイなら好きにすればイイヨ。
[我関せず、と言った態度で。
尤も金がかかっているなら別だろうが。
あそこまで露骨に暴走する異形も珍しく
進んで関わりたいものではない]
― 屋上庭園 ―
[声を聞いてみれば、ぎこちない羽ばたきの音も
足音も先立って聞こえた――ような気がした。]
…ああ…
[割りと助かる。相手をする気はないと言われて
そんなことを考え、額から緩慢に腕を下ろした。]
そうらしいね、
…祭壇じゃご機嫌そうだったのに
[翼持つ其の人の声の調子にか、
尨毛の幹から僅か後頭部を浮かせる。]
[実験体の実験結果を反映した「完成品」は楽園に居る>>1:73と、きいた事があるだけ。]
[柔らかな果実に齧り付くように心臓を齧りながら、ベルンハードの匂いを辿って歩む。]
とても甘い、……。
[有翼人の事はそう称して。
生贄の少女を喰べたので、有翼人を喰べれるとは思いきれなかった。まだ祭壇上の床部分に転がっている者に後ろ髪を引かれる思いを飲み込むように、心臓を平らげた。]
…
「目をつけられたんじゃないか」って
言った気がするんだけど、俺
[ストップモーション中の其の人にかける声は]
羽根、どうした?
[まだ脂汗も拭えぬ己の有体を横へ置いたもの*]
この辺ジャ見なイ奴らサ。
隠れ住んでいたノかも知れネェガ、少なくトモ、話題ンなるようナ場所ニハ出てきて無かった。
セーヘキなんテ一言デ片付けられリャ良いガ。
あいつらガ出てキタのは、恐らくだが理由ガ……いや、まだ予測ノ範囲ダガ。
[言いかけて、口を噤む。
その先を聞くか?と視線だけを向けて。]
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