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それもですけど、聞いた通りなら闇夜じゃなきゃ見えないんじゃ。
[太陽の昇る今、見てもだめなんじゃ、と、首を捻る。
渡されたそれをかざしてみたりながめたりしてから、ユノラフへと返した]
ありがとうございます。
普通のみたい、でも、もし本当なら不思議です。
ためしに、誰か見てみるんですか? 夜。
いえ、必要tという訳ではありませんわ。
ただその…
…人に害成す存在な訳ですから
不思議に思ってしまいました。
[釘打ちつけられてこうして閉じ込められる程。
目覚めてすぐにそれを考えて、
あまりに酷ければ自殺でも考え兼ねない、
それほどのものだと思うのに――
レイヨの言葉は甘く優しく、ひどく嬉しい]
わたくしが、怖くはないのですか?
[自分はまだ今 じぶんが、怖い]
[遊牧民として放浪しているのは、人狼の血が流れているからだ。
普段は眠っている。
めざめる事はなく、ただ人として在れる。
けれど、不意に目覚めるときがあるから、一箇所に定住するのをよしとしない一族だった。
前回、この村で目覚めてしまった者が居たから、すこし距離を置いた時期があったのだ。
けれどここ数十年、目覚めるものはなく。
大丈夫かもしれないと。
年老いたものから、ためしに定住し始めてみたが――]
[こうして、星読みに見破られ。
そして若き狼もまた、目覚めたのを知って。
年老いた狼もまた、ゆっくりと目を覚ましていた。
目覚めたばかりの狼と人の子の話は、聞かずとも聞こえていた。
そして、朝日が昇ったあと、笑い声に反応した二人からの問いをきく]
――さてさて、無防備な、子らだ。
[問いには答えぬまま。
見破れる者だと、居間で交わされるやり取りを見ながら、小さく呟く]
お母様の…。
――それは
長老様はご存じだったのでしょうか。
[知って居て、閉じ込めたのだろうかと。
ユノラフの言葉を聞きながら視線は石へ
一族だけが使い得るのであろうそれを見遣る。
レイヨの問いにユノラフへと視線を戻した]
[レイヨから返されながら聞かれれば]
そうさなあ…。
ぶっちゃけ俺は信じて無いんだが。
この際だから誰かを夜見てみても構わんよ。
と言っても、ここの屋敷に何人集まっているんだ?
まずそっから確認だよな。
んで、誰か見ろってリクエストあるんなら受け付けるけど。
[集まってる人物をその場に居る者に聞き、誰かを見ろと要望があれば聞き入れようとする。]
…ヴァルテリ、様……?
[聞こえた小さな呟きに思わず視線を向けた。
そうだ。思いだした。
懺悔にきた男は確か
遊牧の隊が来た少し後にきたのだと]
ヴァルテリ様も、でございますか?
[声帯震わさず コエを想う]
[首飾りを眺めながら、応える。
かざしてみるときに、ちらりと彼女の方も見たのは、偶然ではない]
怖くないよ。
[甘い言葉を、選ぶ。もとより本心ではある]
そういう生き物なんだから、仕方ない。
そうでしょう?
[問いかけはもう一人に対しても向ける。
無防備、なんていうのに、確かにと首飾りを見つめて思う]
大丈夫、怖くないよ。
生きるためには仕方ないことなんだから、怖がるなんてしない。
君がもし僕を食べようとしても、僕は君を怖がらないからね。
おお、イェンニ。
[呼びかけに、ようやく応える。
視線が合えば、ゆるりと笑みを浮かべ]
……狼としてあるのが、強いかい。
[穏やかな問いは、コエとして響く。
レイヨの言葉に、小さな笑い声]
そうさな。
しかたのない、ことだ。
[イェンニと視線が合えば、ゆるりと笑みを返す。
見破れる者だというのに無防備なユノラフに、はてさて、と首をかしげてあごひげを撫でる]
あちこちがたはきておるが、だからといって助けが必要なほどではないぞ。
マティアスやウルスラのほうが、よほど手を必要としておるだろうて。
[親切な申し出にはわらいながらかえした。]
ヴァルテリ様。
狼として――はい、わたくしは。
まだ…その、初めてのことで。
喉が渇いてしまいます。
[とても年上の彼の落ち着きが頼もしい。
想う声には、高い声に低い音が同時重なった]
別に誰を見ても……とは思うけど。
僕を見ても良いですよ。
[軽くそう言って、首を傾げる]
ためしに、なら。
人間見たらどうなるとか、ユノラフさんは、聞いていますか?
[問いかけつつ、集まった人数についてはかぞえていないからわからないと首を振った。
ヴァルテリに世話を焼く様子に、なんとなく微笑ましいと小さく笑う]
ヴァルテリ、も、なんだね。
何かあるなら手伝うよ。
[そっと伝える言葉。小さく笑って]
こうやって、視線をそらさせたりとか。
他にも出来る事は、あるかもしれないし。
生きるために仕方ないのだから、手はあったほうが、良いでしょう?
─ 夜 ─
[イェンニと暫く添い、妹と共にあるという彼女に頷いて、
彼女らとすぐ隣の空室に部屋を定めた。
眠ることなど出来ないと、そう思われたのに、]
(… ここは…、)
[闇にふわりと意識が浮遊する。
ああ、いつもの夢だ。
夢の中の女は、不自由なく歩くことが出来る。
けれどもこの夢はどこか、いつも哀しい。
それはこの夢が───…]
( ああ、見たくないのに )
[夢は途切れ、意識は再び闇に沈んだ]
[女が部屋から出たのは、イェンニよりも遅く。
目覚めても少しの間、動く気になれなかった。
荷物の中から、祭り用の飾り布を取り出してみる。
祭りの華やかさを纏いつつある飾り布。
刺繍の続きをしようと手にとって───諦めた。
息を落とすと、杖を手に階下へ赴く。
今の扉を開けば、ちょうどニルスの語る声が聞こえた>>49
話の邪魔にならぬよう極力静かに、居間へ滑り込む]
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