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―2階・和服売り場―
おい、
ニンゲンの子供、ここにいるのか?
[頭の中を流れていたルールは、一応は記憶にとどまっている。9thはあの子供だ。鼻をわずかにひくつかせ、気配を探れどどうもピンとこない]
……感覚まで鈍っているみたいだ。
[きらびやかな衣装を纏ったマネキンと、似たような色合いの布の並び、とりあえず手には取ってみた。なるべく地味な色を選んだが]
……いや、無理だろ。
どう見ても動きにくい。
[手に取った服とも布ともいいがたいそれと、マネキンを見比べそして捨てた]
[手帳に記されるのはあくまでもマシロが書く予定の未来。
マシロが勘違いしていることも、そのまま書かれる。
だから、見かけたのがほんとうに9thだったかどうかは、わからない。
それらしい人を見かけただけなのだから]
― 2F ―
[男は扇子を開き、書かれた文字を見る。
予想されることは、本意ではないがそれが最善ならば、無理に逆らうこともない。]
――……少年と会う、か……。
[それが、誰のことなのかまでは記されていない。]
[ニンゲンたちの視線が刺さるのは、異なる存在への嫌悪や憎悪ではなくて単純なる奇異の目であることは、わかる]
ここはニンゲンだけの世界なのか……、
[マネキンの振袖の影に身を沈めて少しだけ人の流れを隠れ見やる。ニンゲンだけしかいない世界だから、彼らはあんなマネキンそっくりの呑気な顔で笑っていられるのだろうか。]
………、
[世界を変えることが出来る。
あの誰でも無いような声の言葉が蘇る]
『 8thはため息を着く 』
[身を潜めていたところで、唐突に例の機械が喋った。ついでにばっちりそのタイミングでため息をついていた]
っ、だから黙れよ。
[音を押さえ込むようにレコーダ―を両手で握る]
『 8thは7thと4thに見つかる 』
[それでも駄目押し、とばかりに機械が喋った]
[不意に。
簡素な棒人間がふたつ、絵日記の上に現れた。
片方は先程のオトナ専用服――もとい和服を着ているようにも、見える。
続いて幾つも出てきた吹き出しが、
二人の“鬼”の存在を―――告げた]
のわっ。 なんか、増えたっ。動いたっ!
すげーーー!
[嗤うカボチャのような悪意はなく、
何処か戸惑いを含んだかのような
赤い台詞の吹き出したち。
なんだか、玩具みたいで。
無邪気な歓声がひとつ零れた]
[手持ちの絵日記をぱらりと開いてみる。
すると、なにやら棒人間と文字の羅列が]
『10thは、かっちょいいコートとかばんを手にいれた』
10th? うーんと…だれだ??
[首を捻る。自分が9thだから、隣にいた大人だろうか。
気難しいオーラを放っていたような気がする]
てゆーか、えーっ。なんか人のばっかって、ずるくね?
オレ様の日記なのに、なんでひとの。
オレ様のはーっ?
[無駄な対抗意識を燃やして、ぺらりと絵日記をめくる。
すると、]
[声をかける前に先にいってしまった。
手帳に視線を落せば「7thをみかけた」に文字が変化していた]
……確定していない、と。
[なるほど、と納得した。
声を掛けにいってもいいが、殺しあう相手を深く知るのもなあ、という躇いもあり。
階下へいこうと、階段に向かった]
カノウヨシアキ。長いな。
俺の名はソラ。
胸糞悪ィ数字は11らしい。
レコハボッカ村の…と、これは意味無ぇな。
[長杖の先で、コツと相手の肩を叩いた。]
えっ、あっ、えっ…!
[なんだか必要以上にあたふたしてしまった。
よく分からない事態にぽんと放り込まれて、
まだ気持ちも、判断も、
いろいろなものが置いてきぼりにされている]
わああっ、えええーーっと、まーーーだだよ!
[ふろしきマントをかぶって、
売り場のカウンターの裏に隠れた]
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