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『次は蛍に生まれよう』
『数多の光からおまえを見つけ』
『そして二人で星になろう』
[――…それは遠い昔]
[二人は固く手を握り合い…――]
いってきまーす!
[そう、元気よく声かけて、垣根ごしに家を振り返る。
祖母と、その手のなかで目を細める猫に手を振った。
既に雨は止んだ。夏の日差しはじきに庭土を乾かすだろう。
笑みの形に弧を描いた目が、庭の隅に押しやられた犬小屋を見つける。]
ネギヤさん、帰って来たかな……。
[呟いて、少しだけ怯えた顔で、祖母と子猫に手を振った。]
お姉さ〜ん!
子猫、うちで飼えるようになったよー!
[ごうごうと鳴る川に遮られ、声は届かないかもしれない。
それでも可能な限り声を張り上げ手を振った。
そう言えば、彼女の名前を聞いていない。
そう気づいて、もう一度声を上げた。]
今度、遊びに連れてくから、お姉さんの名前教えてねー!
[そう言って、学校に遅れないよう駆け出す。]
[駆け出したあと、思い出したように振り返って少しだけ戻る。]
あたしは依真里。
萩原のおばあちゃんとこの依真里って言えば、みんな知ってるから、猫に会いたくなったら来てね!
[怒涛の勢いで、それだけ行ってまた駆け*出した*。]
[川の轟音で遮られる声も、道へと上がってゆけば聞き取れて]
よかったぁ。楽しみにしてるねー!
いってらっしゃーい!
[それはまた、彼女のお願いへの了承でもあり]
[駆け出す彼女に向けて、笑顔で大きく手を振った]
[彼女が急に立ち止まったのを見て、目をぱちりとさせて]
[その表情はすぐに満面の笑みへと変わる]
ありがとー、いまりちゃーん!
[目を細め、彼女の姿が見えなくなるまで大きく手を振っていた]
利権争いなら荒事は珍しくないけど…この村だと賛成派の方が優勢みたいだけど。
それに、賛成派が神隠しなんて騒ぎ立てて、何か利益があるのかしら。
やめましょ。考えても答えは出ないわ。
駐在さんも集会場に行ってくれたし、ネギヤさんの冗談なら、大事になる前に出てくるでしょう。
[頭を振って思考を終えると、その日は自宅に戻った]
─翌朝・自宅─
[夢も見ずよく眠り、快適な目覚めを迎える。
いつもの習慣で窓際に水を置き、挨拶をした。
身繕いの後、押入の天袋から大きな行李をおろして思案]
大きなつづらと小さなつづら。どちらがいいかしら。
[中から袱紗にくるまれた細長いものをとり出し、黒い鞄に仕舞い。そうして学校へ向かう]
─校庭─
7月22日 8時42分 気温24度 湿度0%
今日も暑くなりそうね。
[百葉箱を開き、気温と湿度を書き込み、昨日の記録に目を止めた]
7月21日 15時28分 気温28.5度。湿度──0%
雨が降ったのは16時頃だったわよね。
でも、集会場はここから10分も掛からないのに。
[思い出してみれば、昨日集会場に行く前に覗いたときも、湿度は0を指していた]
おはようございます。
[気を取り直し、職員室に入ったザクロの耳に入ったのは、まだネギヤは戻らず、神隠しの噂は村中に広まっているという事だった]
祟り、神隠し…─。昔から、いわれがあるんですか。
[職員室の静かなざわめきの中*机の上のノートを開く*]
行ってきまーす。
[家族にそう告げて向かった先は、ニュータウン予定地として切り崩される予定となっている山の麓。
目印は、小さな沼のそばにあるお稲荷様]
……懐かしいな。
[小さい頃は仲のよい友人たちと秘密基地代わりにして遊んでいた場所だった。
しかし、少しづつ過疎化が進み友人たちも少しずついなくなり
そのうち、秘密基地からも足が遠のくようになっていた]
……ここも、なくなっちゃうんだよね。
[友人たちとの思い出はなくならなくても、場所は消えてしまう。
『在る』のと『無い』の差は果てしない]
[と、何か思いついたのかお稲荷様に向けて柏手を打ち、そのまま目を閉じる]
……。
[神社の茂みから、一人、また一人と真っ白な狐面を被った男衆が現れます。周囲からじわじわと輪を狭めるように近づいてくる彼らに]
なあ、お前ら。知ってるか?
神様なんていねえんだってよ。
[喉の奥でくぐもった笑い]
そうだよなあ。気に入らねえ人を、かっ攫っちまうなんて、善良な神さんのすることじゃねえよなあ。
……来いよ。
[ふーっと息を吐いて、木刀を*構えました*]
[雨も上がった翌日]
なあ、おやじ昨日の…ネギヤの失踪の件
えぇっ 子供は関係ないって何だよ!
人が一人行方不明なんだろ?大事じゃないか!首を突っ込むなって?
変だよ おやじ達
[大きな声で親子で言い争う]
まったく…!頭くる
[大声で怒鳴ると家を飛び出した]
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