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てがみ?
[同じように地面に座る少女の足元には、口の開いた封筒が落ちていた。
娘がそれを指差すが、瞬く間に少女は逃げるように走り去っていく]
だぁれ?
[問いに答えたのはカナメ。去って行った少女はアンという名だと言った。
落し物を拾って、汚れを払い落とす]
ああ、びっくりした。
ごきげんよう、ルリちゃん。
[ルリの視線が胸元に揺れているカメラにあるのに気付き]
カメラ。
写真──瞬間を取っておける機械よ。
[右手でカメラを掲げて見せる]
―泉―
[水の音は、どうやらここからしていたようで。ゆっくりと歩いて、水に触れてみる。ずきり、頭に痛みが走った。]
………水、触ると頭が痛いのか。
[凍った頭が溶けていくような、そんな感覚がする。]
あぁそうだ、俺はここで………
[ずきり、ずきり。]
ミナツはこの世界が好き…そうか…
[その言葉に、微笑んだ。泣きながら、微笑んだ。
目覚めてからまだ一度も浮かべたことがないほどの微笑みを。]
ミナツの描いた世界。俺も好きだ。
[そしてミナツがぽつりと呟いた言葉に]
…あると、いいな。この絵の場所。
行けると、いいな。
もし思い出したのなら、大切にするといい。
こんなにも心が震える世界なのだからね…。
[そうして、やっとその頬の涙を拭った。]
[びっくりしたペケレを、ふふふと笑い。
窓際へ足を進めて、下のミナツたちとペケレの胸元を交互にみた]
瞬間を取っておける?いつまでも?
とっておいた瞬間は、このなかですか?
[そっと手を伸べて、カメラへ触れてみた]
せか、い。
せかい…
世界……。
ミナツの見た世界。描いた世界。
繋がってる。結びついている。
もっと……もっと見たい。
世界をもっと見たい。
ミナツが、生命の息吹に溢れる世界と、再び結びつきを持てる事を。
……願い。
いや―――祈る。
俺は、祈る。世界との結びつきを。
[体に馴染む事務椅子に座り、両の手をじっと見る。]
なぁ、カナメ…だったか?
ここ…
[救護室だという返答以外、詳しい答えは返らない。]
なんかさ、引っかかってるんだ。
…大事なもの。
[デスクの上に転がったままだったペンを手に取り、胸ポケットへ収めると立ち上がる。]
[ミナツと涙するレンとへカメラを向けるペケレの傍に、
僅か歪んだ空間がある。彼女へルリが声をかけると…
空間は揺れて、墨色に透ける亡霊の姿が大気へ滲み出す。]
――…、と…
[零れ落ちるカメラを、咄嗟に支えようと差し伸べる手は
やはり透ける。ペケレの胸元へとぶら下がるカメラ――
亡霊は、諦観の滲む笑みを漏らしルリへ肩を竦めて見せる。]
とっておいた瞬間は…其方の「写真」のようですよ。
[ふたりの会話を補佐する態で、少女へと告げた。]
世界。
ミナツの世界。
獏の世界。
俺の、世界。
世界と結びつきを…。
「ほんとう」が、見つかるように……願う。
俺は、還ることで再び結びつくのも構わないと思っていたけれど。でも……
…もう一度、世界との結びつきを。
みんなで見よう。ミナツと獏、どっちが欠けても嫌だ。
世界を、見よう。一緒に…。
>>219
散歩。
[肩に羽織る上着をぎゅっと手繰り、数秒間口を開いたままバクの顔を見ていた]
テンマ。
[それ以上言葉は続かず、ゆっくり口を閉じた]
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