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― ゆめ ―
あ いるまにさそわれて
かあ いりえにいった
いかあ どう あ して
いか あの か こがいないのか
ち い けら い れた
ぎ ひどいや どうして
れ あ さむい あ いるまは
た た どこ か へ?
た さむ い たくさんいる
か き
い し え いたい
あの手は る いるま?
何もかも――……
― 調査記録 ―
イルマとマティアスが連れだって、入江にいった。
(目撃情報あり)
イルマはすぐに帰ると両親に告げて出かけていった。
マティアスは同居する祖父には特に何も言っていない。
マティアスは入江から村への道で発見される。
顔面、後頭部、背中、脇腹、腰、ふくろはぎより出血。
傷はぐちゃぐちゃで何によってつけられたものなのかもはっきりしない。
マティアスは事件なのか事故なのか、ある程度意識混濁から回復した後もイルマの行方についても口を開かず、当事者以外は何があったのか把握できていない
――ことにした。
― 真夜中 居間 ―
[夢から覚めた。深夜だ。いつの夜だ。わからない]
[誰かが、戸を閉めている。
釘を打ち付けている音。
それを頼りに、這うように床に転がり、玄関へと
何度か壁にぶつかって、頭や腕に青あざができた]
― 真夜中 玄関 ―
[釘が打ちつけられた後に、男が古語で何かいっていた]
[まるでそれは祈りの言葉のように聞こえ]
ちょう、ろう?
[――玄関の向こうの気配が動揺する]
じいちゃんの、こと
たのん ます
[返事はない
逆に足早に何人かが立ち去る音が聞こえた]
― 翌朝 玄関 ―
[絨毯にくるまって寝ている姿が見つかった。
その傍には、昨日までなかったマティアスの私物と思わしき荷物があった]
[おきあがる、すぐそばに人の気配を感じ]
くれす、と?
[手に感じる、ゆっくりとした筆跡。
誰かなんて、すぐにわかる]
あり、がとう。
[――見えない彼の背に向けるのは、数日ぶりに浮かべる安堵の表情だった。
何もかも変わってしまったと思ったのに、変わらないものもあったことを]
[しかしそれもすぐに曇る。このことが、クレストにとって悪いことにならなければいい]
ごめん、おれは、もう……
[だめだ。その言葉は*飲み込んだ*]
えっと……
うえ、 お……
[じゅうたんから這い出そうとして、毛布とぐっちゃぐっちゃになって、よくわからず途方にくれている男。
子猫が毛糸で絡まるのとは、残念ながらスケールがいささか違いすぎた]
[足音がすると、とぱたりと無駄なあがきをやめる。何とかしたかったが何ともならなかった。
その頃には、自分ではよくは見えないが、玄関ホールにあったじゅうたんが巻き取られて、大きな大人がその中で転がっていた]
もう、迎えに、きた……?
[じゅうたんの筒の先からのぞく銀髪。伺い見てもまるで意味をなさない、目隠しのような包帯。
注意深く、耳をすませる]
―― いるま、じゃ、ない。
[イルマ。村の中でも同年代の少年少女に慕われる活発な娘の名前である。よくいって面倒見がいい、悪く言えば大きなお世話。そんな娘だ]
ごめ、…、えと、だ……
い、いや。 おれ、マティアス。
さかなとってる
あ、い、の。アイノ、うん、おぼえた。
ゲルダの……娘さん。うん、わか、った
[ゲルダは知っている。戻ってきたことも知っているし、娘がいることもしっていたが――何度か村の中ですれ違ったこともあろうが、まるでどんな娘なのか像が結びつかない。わかっているようで、わかっていない言い回し]
せんせ、もい。
[そしてやってきた足音が誰か推測し、挨拶した]
せんせ、アイノ、つれてきて、くれた?
クレスト、ありがとう…
[人が来たことにほっとする。
自分では今どうにもこうにもできそうにないからだ]
いま、どうなっているんだ?
うごけば、うごくほど……
何か、からまる うごけない
やぶって、いいの、か?
[じゅうたんやら毛布巻きになっている現状からの脱出は困難だった]
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