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303号室
...何か、だるい。
[先程迄は気丈に振舞っていたのだが、何となく体調が良くない気がして。
...は取り敢えず自分の部屋に帰って来た。
そうこうしているうちに段々眩暈がして来て。]
うっ...ちょっと待てよ...
[自分の中の何かに引きずりこまれるように意識を失った。
最後に、何とかナースコールを押して。
その体勢のまま。]
翌日昼・303号室
...っ。
[目が覚める。
...周りをみると変わっておらず、何だ大丈夫か、なんて最初は思っていたけれど。
壁に掛けてあったカレンダーの日付が変わっていることに気がついて、驚きを隠せない。
状態は確実に悪くなっていっている。
第一、この症状が顕現し始めてからここまで生きていることが奇跡と言っても過言ではないらしい。
それを知っているからこそ。
そしてついに自分もそれに直面しようとしているからこそ。
...怖いと感じた。
口角を吊り上げようとしてみるも、全くできそうにない。]
...さて、時間が...なさそうだな。
[自分の体は自分が一番分かっているだなんて。
そんなことを言うつもりは無いのだけど。
自分に時間がなさそうなことは、何となく感じていた。]
...見守っていたかった。
あの子には、元気になってもらえれば。
あの人には、元気になってもらえれば。
...其の為だと言うのなら。
僕の命など、どうでもいいのだけど。
[思い出したのは昨日のひと時。
たわいの無い話をしていたような気がするが...どうしてだろう。
何となく自分の、いや二人の表情が思い出せない。
話した内容は...何となくは覚えているのだけど。]
[父は死んだ。
母はその後を追って自殺した。
残された僕と弟は、親戚の人に引き取られたのだけど。
3つ下の弟も、去年亡くなった。
父も弟も、今の自分と変わらない感じだったように思う。
心電図がどうやら異常をきたしているみたいだが、結局良くわからないままだった。
脈が乱れるからなのか。
突然意識を失ったり。
そのまま、死んでしまったり。
そんなことしか分からないままだった。]
...やはり暇だ。
[今の状態は...もう注射を打たれていてしまって、ベットから離れることはできそうにないから。
そして。
先程からは色んなことが思い出されてきて。
何か、切なくなってきたのもある。]
死んでしまったら、どうなるのかな...。
[自分が持っている少なすぎる知識では、わかる筈もなく。
ただ、魂が恒久的に残ってしまうのならば溢れかえってしまうだろうから、それはないのだろうけど。
することもないので、何となく文字をつれづれなるままに書いていた。
何かを残したいという、ありふれている思いもあったのだろうか。]
[他の患者はどうなのだろうかと、先ほどからはそればかりが気になってしまって。
自分が動き回れないことが、此れほどまでに疎ましいことは無かった。]
…ううっ。
[頭が割れるかの様な頭痛が…を襲う。
痛いこと以外には、何も考えられなくなるような。
そして自分の奥深くから。
自分を強く引っ張りこむような力を感じた。]
[意識を失うのだろうな、ということは理解できた。
もう一度目が覚めるかどうかには、確証が、持てなかったのだけれど。
そして。
…が意識を失う前。
最後に見たのは、口角が少し吊り上がった表情をしている、今までの知っている人たちの顔であった。
どこか不完全なような感じがする上に、自分の語彙では表現することは出来ないのであったが。
何故だか、…を。
どことなく安心させるような感じがした。
そのまま、頭痛も殆ど感じずに。
まるで眠るかのように、…は意識を失った。
ベットの横には最後の手記が。]
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