―― 薄暗い酒場 ――
こらー! マスター出てこーい!
[集会場から帰ってからずっと、バロンの浅漬けをつまみに葡萄酒をちみちみ飲んでいた]
人のことバケモノ扱いする前にツケ払えっての。
[突然現れた男の姿に驚く様子も見せず、半目を向ける]
訊かれる前に言っておくけど、私は何もしてないから。
旅人にも、マスターにも。
ああ、なんだ、よかった……
[マスターの一先ずの行方がわかり、ホッとした表情でカウンターに突っ伏す。
そのまま額をつけてしばらく黙っていたが、少しだけ顔を横に向けた]
15年も待ったんだ。
絶対、始末する。
[呂律はいつもの夜よりも*怪しい*]
酒場の看板娘 ローズマリーは、ここまで読んだ。[栞]
バロンだけじゃ味気ないだろう。
マスターには秘密ということでヨロシク。
[奥の部屋から持って来たのは、未開封の醸造酒と、グラス*2つ*]
[バロネスという響きがすぐには理解できず、小さな笑い声が零れるまでには幾らかの時間がかかった]
バロンと一緒に煮込まれないように祈るしかないな。
[グラス越しに男を見やる。
集会場で顔を見た容疑者達のことを順繰りに思い出し――]
若い女は好きじゃない。
なんて、ただの嫉妬みたいなことしか今は出てこない。
[ブラウスの胸ポケットから取り出した鍵を指先でつまむと、チャリと音がした。
腕を伸ばして、男の方へ近づける]
ここの合鍵だ。
私に何かあったら、自由に使え。
酒場の看板娘 ローズマリーは、ここまで読んだ。[栞]
―― 翌朝・集会場 ――
神様すまん、もう酒なんて一滴も飲まない。
[渡された投票用紙を握り締めた手で、二日酔いの頭を押さえる。
遠く聞こえてくるのは、アーヴァインが無残な姿で発見されただとか、処刑者を決めろだとか、自警団員による*一方的な話*]
ありがとう。
メイドというのは気がきくんだな。
[水をちみちみ飲んで、目を瞑る]
ヴィンセントはダメだ。
いつも胡散臭く笑って「風邪ですね」としか言わない。
あいつは私のことを嫌っている。
アーヴァインが普段どういうルートで見回っていたのか、知っているか?
[半分ほどになったコップをテーブルに戻した。
空中に指を伸ばして、思い描いた地図をなぞっていく]
酒場に留まるのは20分ほど、まずは牧場の方へ歩いて行く。
30分後には戻ってきて、今度は寄宿舎へ続く道に向かう。
家々をぐるっと回り、また酒場の前を通過するのが1時間後、と言ったところだ。
だが昨日は違った。
私は一人寂しく酒を飲みながら外を見て、マスターが帰るのを今か今かと待っていた。
しかしやって来たのはアーヴァインで、奴はいつもの道順で寄宿舎の方へ行ったが最後、戻ってくることはなかった。
昨日の夜、あの男はどこで何をしていたのだろうな。
[身体の前で腕をさする。
黙り込むと、少し小首を*傾げた*]
酒場の看板娘 ローズマリーは、ここまで読んだ。[栞]
[思春期の娘が父親を見るような視線をノーマン(>>19)へ向ける]
いかがわしい話なら、子どものいないところでやってくれ。
[学生の方をちらちらと落ち着きなく見やった]
いいか、ラッセル。
私はどんなに酔っ払っていても、アーヴァインの足音だけは聞き間違えない。
[自信ありげに言った勢いのまま、マスターに『意外と几帳面な字』と言われたことのある右肩上がりの文字を、用紙へ*記入した*]