-牢屋-
[処刑は行われたのだろうか。
魔女を問われ、他者を処刑台へ向けて背を押した。
その事実を、見据える。]
…………。
[煙草に火を付けた。
揺れる煙を、見やる。]
[右目を閉じ、それを手で覆う。]
……なんだ、これ?
[覚えた違和感に呟く。
魔女を探せるかと試した事は、確かに、何かを捉えたのだ。]
……。
[しばし考え、顔から手を離す。
立ち上がり、牢から出ると法廷へと向かった。]**
[牢屋を覗き、法廷も覗く。誰もいないのを確認すると更に足を進め――庭へと。
そこで二人の姿を見つけた。
声を掛けず、ゆっくりと近付く。
クレストが手に持った髪飾り>>1を見る。
ユノラフの言葉>>7は聞こえただろうか。]
[昔から人より少し勘が良かった。
店の客の失せものを探り当てたのも。
病を隠していた父の嘘を見抜いたのも。
店に悪意を持って近付くものが何となく分かるのも。
すべて勘がいいだけだと思っていた。
それを違うと言い、隠すようにと言ったのは母だった。]
[此処に魔女がいるのなら、“これ”で探し当てられるかと期待した。
が。
捉えたものは、言葉にはなりきらない違和感だけ。
その違和感が何か分からず、ただ、視線を向けた。]
クレスト。
[なぁに、と問われ。>>15]
何か――隠している事はないよな。
[失くしものの指輪のように。
身体を蝕む病のように。
他者を傷つける悪意のように。]
……ないよな?
[再度確認する声は、幾分、弱かった。]
さぁ、分からん。
[魔女、と言った、クレスト>>18に首を振る。]
俺に分かるのは、お前に何かあるって事だけだ。
これが魔女の証拠だとしても、俺は誰にも証明出来ん。
…勘、だからな。
ユノラフ、すまんな。
魔女裁判、呼ばれた心当たり、俺はひとつだけある。
俺、昔から妙に勘が良かった。失せモノの場所を言い当てたり、とかな。
――人の考えている事が分かったり、も、した。
俺が此処に呼ばれたのは、多分、それが理由だ。
あぁ、魔女が見つかれば此処を出られるかもな、クレスト。
お前が何か隠しているように俺は思えている。
それが魔女の正体かもしれんが…。
裁判官から見たら、俺こそ魔女なのかもしれんな。
――どっちが処刑されたら、裁判官は満足すると思う、ユノラフ?
…エリッキも探ったんだ。
何も分からなかった。
此処に魔女はいない。もしくは俺では魔女など見つけられない。そう思ったんだが――
……なんで、クレストで、違和感覚えるんだ?
………くそ。
[呻く。]
…自分が魔女だって認める事は処刑される事だぞ、クレスト。
逃げ道、用意したろ。
俺が妙な事出来るって、ユノラフにもお前にも伝えたろう。
――なんで、自分が魔女だって、言うんだ…。