ええ、見たわよ。変な兎よね。
[ちょっとためいき]
ねえ...キクちゃん、私ね...
[さっき聞こえた声を思い出して、少し躊躇って]
鍵とか螺子とか...探さない方がいいかもって、思うの。
だって、怖いでしょう?何が起きるか判らないし。
[理屈になっているようでなっていない...けど]
[明らかに自身へと語りかけられる、優しい声に耳を傾けて]
お姉ちゃんも、そう思う?
…あのね、探さないでって…誰かが言ってるの…
[何処まで理解されるのか、判らないけれど]
うん、なんとなく、ね。
[妹みたいに思ってる子の、どこか不安そうな声を、宥めるように答える]
あれね、藤の木だと思うの。
[どの木かは、まだ判らないけれど]
咲くのが怖い、枯れるのが怖いって...
かわいそうよ、ね。
[ほんとに可哀想なのは、だあれ?**]
咲くのが怖い、枯れるのが怖い…
そっか、藤の花が……
うん、そうかもしれない、ね。
[信頼できる声に納得して。
藤の花に抱くのは、親近感?]
うん、なんとなく判るから...助けてあげたいなって。
[助けてあげたい?ううん、助けて、ほし、い?]
そういえばキクちゃんは、いま...
[どこ?と聞こうとした時に苦しそうな人を見つけた]
[やっぱりお姉ちゃんは優しい…。]
…そう、だね。
でも…どうすればいいのか…。
[藤の花を、助ける?
見まわすまでもなく視界を埋め尽くす花を、ぼんやりと見つめ。
続けられた言葉は、途切れた?]
…?
なんだか苦しそうな男の子拾っちゃった。
[この言い方じゃ、まるで小さな迷子を拾ったみたいだけど]
人がいなくなれば、きっと誰も探さないって...思うの。
さっき、そう思ったら...誰か外に出たみたいだし。
[空間から零れ落ちただけで、元の場所に帰ったわけじゃないから、根本的な解決にはならない...そんなことには、気付かぬ振りで]
二人でなら、また出来るかも。キクちゃんはどこにいるの?
[途切れた問いを、もう一度]
[苦しそうな男の子?]
随分…色んな人が居る、みたい?
人が居なくなれば……。
そっか…だからさっき。
[恐らく泉の方向に感じた何か、その推測が僅かばかり立った気がする。]
二人で… ぇ?じゃあさっきのは…お姉ちゃん、が?
う、うん。今、藤代さんと結城さんっていう人達に会った所。
[作為的に、誰かを此処から追い出し、た?そんな事が可能なのだろうかと、悩むと共に少し怖さも芽生える。
けれど、この声の主の存在は、それ以上に信頼できるもので。]
そっちに二人、こっちには三人...ちょっといっぺんには無理ねえ...
[何を基準に無理と思うのか、それはひどく曖昧で、でも確信している]
(でも…本当にいいの、かな。)
そんなに…人が。
[先程まで自分が一緒に居た二人を思い出せば、人数はどんどん増えていく。
心の奥深い所で僅かに生まれる葛藤は、悟られないように。]
(いっぺんに…。って追い出すって事、だよ、ね?)