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見つかってしまったなぁ……
まあよい。
イェンニが殺される前に、食ってしまえばよい事だ。
[そう呟き。
それでも、その夜狙うのは、女のほう]
[灰色の狼に変じて、ウルスラの部屋へと向かう。
夢を見るために眠りについている女をみやり]
食事にしよう。
[刃物を向けられたから食うわけではない。
女の肉を食らうのはひさしぶりだから、だ。
そして始めた食事は部屋を赤く染める。
柔らかい部位ばかりが食いちぎられて]
イェンニも、お食べ。
[桔梗色の狼にも声をかける]
[そして、食事が終れば毛づくろいをし]
――明日は、ユノラフがニルスを食べるべきだのう……
[そんな呟きを残して、ウルスラの部屋をあとにした]
…そう、ですわね。
どうせもう、他に食べやすい女の肉はないのですから、
じゃまなところを…
ユノラフ様の力は…面倒ですわ。
ヴァルテリ様がみつかるまえに、
処分しておいたほうが良いかと。
[夜のうち
仲間たる男の声には頷いて―――
側から、おずおずとウルスラの肉を喰らう]
…わたくしたちも、生きたいだけですのに。
人間を食らうがために――
相容れないのですわね。
だから、レイヨさんも。
ひとでありながら、殺されてしまった。
ああ……ユノラフは、ほんとうに見極める者だったようだしな……
[厄介なのはニルスかもしれないとは思うが。
どちらが先でもかわりはしない]
人は、人を食らう存在を排除したがるからの……
目覚めなければ、我らもまた人と変わりはせぬ。
[生きるため。
お互い、それだけで動いているのだから。
きちんとした食事に、身の裡に力がもどる。
栄養をとったことが如実に反映されるのもまた、狼へと変ずる不思議の一つだろう]
ねぇ、ヴァルテリ様。
ニルス様は、親しいから信じる、と。
そう、おっしゃっていました。
わたくしは親しいと思っておりましたユノラフ様も――あの、視線でございました。
[目覚めたばかりの若い狼の声は、
寂しげにも、響く]
…―――レイヨさんは、人だと言われて。
それでも、殺されてしまった。
…えぇ。
目覚めなければ変わりはしないのに。
[ウルスラの肉を食みながら
桔梗色の狼はほろりと 涙を零す]
…すみません。
少し、まだ、人の気持ちにより過ぎているようです。
ただ、わたくしは。
人狼として目覚めた事を、
悲しいとは思いません。
誇りに思います。
[目覚めた事を後悔はしていない]
親しいから、信じるのではないよ。
危害を加えないと思っているから、信じていると言う表現になるのだ。
[人とはそう云うものだ、と割り切った老狼は呟く]
泣くのを、こらえることはない。
レイヨもまた彼らにとって害だと判断されたのだ。
[謝る若い狼にゆるりと頭を振った。
その桔梗色の毛並みを、一舐めして慰める]
一度目覚めたからといって、抑えられないわけでもない。
逃げ切れたら、練習すればよい……
でも!
レイヨさんは、人間、なのに。
…人狼は、人狼を殺したり、しないのに…!
[灰色の狼のひと舐めに顔をあげ。
毛並みを震わせて掠れた声で叫んだ]
…何と言えば助けられたのかは。
今だに…わかりません。
イェンニは、やさしいの……
あの場で、助けるのなら。
ニルスを食らうしか手はなかろうて。
説得を、聞く状態ではなかったからの……
[叫ぶ子を宥めるように、静かに返す]
だが、まあ……レイヨの死を悼むのなら。
壊してやれば、良い。
ニルスも、ユノラフも、クレストも。
[狂った人の子の、声を思い返しながら。
きっとそれが手向けになると思った]
壊す…
レイヨさんの、望むように。
…彼が、していたように、
[ウルスラの無残な姿を見下ろして呟く
思い出すのは彼が、彼女に言っていた事]
…わたくしは、彼のように賢くないので
うまく出来るか分かりませんが…
せめて、やってみたいと思いますわ。
わたくしたちを、護ると。
そう、言って下さったレイヨさんに。
そう、それが、よいだろうて。
[どこまでできるかなどわからない。
なによりも、生き残らなければ意味がない]
まあ、無理はせぬようにの。
はい。
ヴァルテリ様も、…ご無理、なさらず…
[力は満ちている。
ドロテアと、マティアスとウルスラ。
3人分の血肉を、無駄にするつもりはない]
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