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[カツカツとヒールの音が路地に響く。
どこまでいっても路地裏。
薄暗く湿った匂いのする、腐った道。
表通りなんて見えやしない。
いくら角を曲がっても、路地、路地、ああ何処が裏だったっけ?]
……いやぁね
[血を吸って重くなった帽子をくるりと回した]
[かつん、かつん。ゆっくりと歩く]
だぁれもいないから
[かつん]
殺してもいいよ、って言いたいのかしら
[響く声。頭上を飛び去る影。羽音はほとんどしなかった。
幾つ目かの曲がり角。抜けた先に人影を見る]
ねえ、おにいさん
[眼鏡をかけた優男はどうやら手持ちがないらしい。名前をいくつも持っている子犬ちゃんはどうだろう。背の低いおじさんは嫌いじゃないけれど、今は気分じゃない。どうせならやっぱり、男らしい血の気の多い人がいい]
……どう、思う?
[この街を。この夜を。
そんなことより、この肉感溢れた肢体を。
何を、とは言わずに首を傾げ]
[こつりこつり。かつんかつん。
響く足音。通りの向こうに見える人影]
あらぁ…
あのお店だけが、世界なのかしら
あのお店と あの、なんだったかしら
[あの、鳥。
道の向こうでこちらをじぃ、と見ていたあの。
ああ、あの軒下もなくなっていた。
ひとつずつ、なくなっていった]
[小脇に抱えた小さなバッグ。
ハンカチと化粧道具と]
どうしよう、かしら
[ナイフひとつ分軽くなったバッグ。
同じくらい重くなった帽子]
[路地裏の世界は永遠に見えて、きっとひたすら閉じている。
角を曲がれば、さっき背中を向けたあの道に出る。あの道?いいや、もうこの道だ]
ねえ
[傍には、声の届く場所に誰かいるだろうか。
見ていない。気にしていない]
みぃんないなくなったら
……元に、戻れるかしらぁ?
[ゆったりとした口調。
聞こえないはずの羽音が、耳の傍を通り過ぎた気がした]
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