[1] [2] [3] [4] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ
― 森の中 ―
[そこに入り込んだのは偶然だった。
『仕事』の途中、想定外のトラブルに見舞われ、納期に間に合うかが怪しくなり。
ならば、と地図上での最短ルートを取った。
それが、今いる森を突っ切るルートだった……のだが]
…………いや、さすがにここまでとは思わんかった。
[入り込んだ森は思いの外深く。
進む道は曖昧、戻る道も既にわからない。
この状況をどうするか、と。
思い悩む時間はあまり残されてはいないようだった]
……ぉ?
[ぽつり、ぽつりと落ちてくるしずく。
それが何を意味するか察した瞬間に取った行動は]
やべ、荷が濡れる……!
[運んでいたものを雨から守るため、雨宿りできる場所を探して走り出す事。**]
[とりあえず走れる所を前へ前へと駆けて行くと、鮮やかな色が視界を掠める。
それは、段々とその数を増やして]
……リコリス……だっけ?
[小さく呟き、木立の間を抜けて。
開けた空間に出た瞬間に飛び込んできた光景に、思わず足を止めた]
……なんだ、これ。
[口を突いたのは、こんな呟き。
目に入ったのは、一面の緋色。
咲き乱れる緋色の華の間には道らしきものが一筋見え、その先には森の中にはいささかどころかかなり不釣り合いな屋敷が見えた]
…………ぁー…………いや、背に腹は代えられんわ。
[このままずぶ濡れになるのはいただけない、と割り切って。
緋色の中を駆け抜け、重たい雰囲気の扉の前に立った]
あー……すみません、何方かいらっしゃいますかー?
[どんどん、と叩きながら呼びかけると、応ずるように扉は開いた。
扉の向こうはやや広めのエントランスホール。
その奥の階段の前には、黒いドレスを纏った小柄な人影が佇んていた]
突然申し訳ない……見ての通りの旅の者なのですが。
雨が止むまで、軒先をお貸し願えませんか?
[呼吸整え向けた問いかけ。
それに返るのは感情の感じられない淡々とした声。>>#3]
え? あーと……。
[言われた意味を把握し損ねていると、いつの間に現れたのかメイドと思しき女性がタオルを差し出してきた。
二階に客室が用意してあるから、自由に使って休んでいい、との言葉は予想外で]
あー……ありがとうございます。
[一瞬、疑うという概念が綺麗にすっ飛んでいた。**]
[借りたタオルで滴を拭いつつ、視線が向くのは佇む娘。
最初の出迎えの後は全く口を開く気配もない]
…………。
[ふと、思い返すのは雨の中を駆けた時に聞こえた声。>>#0
走る事に集中していたから、そちらに意識を割かれる事はなかったのだが]
(……似てたよなー)
[先の呼びかけと、その声と。
それらはどこか、似ていたような気がしていた。*]
っは。
[荒い息を吐いて木に背中を預ける。
既に何人か俯せて動かなくなっていた。
一か八かで森に駆け込んだ背後では悲鳴が響いていた。
楽観できる要素はどこにもない。
雨と何かに濡れた顔を俯けた]
ー 玄関前 ー
すみません。
どなたかいらっしゃいますか。
[辿り着いた屋敷の扉を叩くと、黒衣の娘が出てきてくれた。
淡々とした歓迎の言葉に戸惑いながら頭を下げる]
はい。雨の間だけでも置いていただけたらありがたいです。
大した持ち合わせはありませんが。
[時が至るまで、という言葉はそう自己解釈して滞在させてもらうことにした。
対価は不要と言われれば、安堵と不安が半々になる]
……お。
[水滴を拭いつつ、荷の状態も確かめないとなー、なんて考えていた所に増える気配>>10]
雨宿りのお仲間さん……ってとこかね。
[小声でぽつり、呟いた後。
新たな来訪者がこちらに気づけば、どーも、と軽い調子で手を振った。**]
[1] [2] [3] [4] [メモ/メモ履歴] / 絞り込み / 発言欄へ