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[――――漁師は網を手繰るが、
『邪悪なドラウグ』はひとの脚を手繰る。
掴む藁もない水の中。浮かぼうと藻掻き、
蹴りつけようとする身悶えが何になろう。
けれど陸のいきものは本能で知っている。
掴む手の主が、懇願や哀願を容れる等
決して、決して、ありはしないことを。]
ヒト オモテ
[人間の面はいつでも水面を向いていて、
足引く者は、断末魔浮かべる彼らの表情を
死すまでよくよく眺める機会があまりない。
だから、
足首を離して 錆びた鎖を引いてみたのは
またひとつ浮かんだ気泡めく悪意の故――]
… 知らせると
気の毒かと考えたのだがね。
["音"を伝える術のない深み。]
[――――耳奥で、音は割れる]
貴方に恩赦は出ないそうだ、
赤心の告発者殿。
[ボディルの眉根が寄るのを、
その深さを、 眺めて、]
代わりにこの数字が、
[彼の枷に刻まれた、
西の街の地下牢のしるしと数字を辿る。]
永劫に貴方のものになった と。
[目前で無念に凍え溺れる赤毛の男。
掴み引く魔は、浅く首を傾ける。
手に入ったものがあって僥倖だとばかりに。
記憶の断片は、死後のたましいが
切れ切れに浮かべることもあろう*]
[――魔性討たれて、その日は変わり。
陽のささぬ夜明けの海に、
赤毛の青年が逆さに浮いていた。
信仰に眩んだ瞳の僧が糸で切り刻む間も
ヘイノを押さえつけていた彼の枷の鎖は、
引かれた様に水底へ垂れてとぐろを巻く。]
まだ死ぬ訳にはいかない、と
言っていたのだったか。
[皆も気付き出す頃、浜辺から眺め――*]
[とむらいの在りよう占めて譲らぬ僧へ
口出しする者は、今のところいなかった。
他の生き残りは仮面外さぬ物狂いの軽業師に、
虚空の死人へ話しかける重石つきの学者――
堅物の執行人が話しかけるのは、
いきおい、無気力そうな男になる。]
"彼"のああした姿は、
よほど魔物じみていると思うが…
[彷徨う僧を示し見遣って首を動かすと、
フェルト帽の四ツ房が重たげに揺れる。]
さし当たって、
"食糧"の分配が滞るほうが問題だな。
[端的に、本音と建前を並べて提示した。]
… 助勢を頼めるか?
[揺れるエリッキの返答待たぬ侭に、さくり。
霜柱を踏んで、弔いする僧へ徐に歩を向ける。
斧の頭はやがて、不意打ちに風切る音を立て*]
[不意打ちを避けもせず、僧は足を止めただけ。
――――彼の右肩へ、斧は半ばまで喰い込む。
静かに振り返る相手の挙動に合わせて
ぐと斧を抜き取ると…飛沫くいろが霧めいた。]
守るもの ではないね。
死のことわりと言うならば、
…そういう名を負ってきたので。
[ほんの数日前だった禊の水の、
赤黒さを…彼の脚衣に見つけられない。]
禊は、もうやめてしまったのかね?
[反撃や逃亡を織り込んだ斬撃は、
失血に長く長く痛苦の微睡みを伴う致命傷。
無い指の付根が蠢くのを見詰め、]
…… 生き肝をくれ。
[誰の声にも応えることなく
エリッキへ"助勢"を*頼んだ*]
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